doseiみづ鍼灸室 by 未津良子(ヴェルの思い出) 
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- 出会いから編  -
ヴェルの思い出
2010 ・ 1
1月6日 車がいいよ~
ヴェルは車が大好き。車で出かけた翌日は、100%の確率で、駐車場へまっしぐら。

バイクのところから、「ヴェル、おいで!」と呼んでも、こっちをジーッと見るだけで、自分から来ようとはしない。

そりゃ、車のほうが快適だよね。
最近は、ヴェルをバッグに入れて、バックごと、リヤのかごの中に入れている。夜なんか、寒さでガタガタ震えてる。

寒さ対策を考えなきゃなあ・・・
1月19日 ヴェルの失踪事件
先週の話だけど、ものすごい寒い夜に、私はこの世の「地獄」を見た。

夜中の12時頃、ゴミを出しにヴェルと外にでた。大掃除ででた大量のゴミと、空き缶をかかえてた。
暗闇の中で、「どっちが缶かな?」などと、ちょっと手間取ったそのすきに、ヴェルの姿が見えなくなった。

「どうせ、野川だろう」と、走っていったが、いない。「道路側かな?」とそっちにも走ったが、いない。
行ったり来たりしてみたけど、どこにもいない。

サンダル履きで、パジャマの上からダウンを羽織ってただけだったので、家に戻ってジーパンとスニーカーにはきかえた。
メガネもかけて、テニススクールのビンゴで当たったラッキーアイテム、ナイキの時計もはめ、本格的な捜索に出た。
時間がどんどんたって、遠くへ行かれてしまったら、探すのはますます困難になる。

シーンと静まり返った夜中の団地。まるで、かき消されたように、ヴェルの姿は見えない。いつも、クンクン嗅ぎまわっているあたりを中心に、死に物狂いで探しまわった。白いから遠目でも見つけやすいはずなのに、まるで、はじめから存在しなかったみたい。不思議な感覚に襲われた。

そんな夜中でも、ときどき、犬の散歩やジョギングの人に出会う。すれ違うたびに声をかけた。無駄と思いながらも、わらにもすがる思い。
「チワワ、見ませんでした?」「いや~、見ませんでしたね」と、判で押したように、同じ答えが返ってくる。

野川のサイクリングロードを中心に、いつもヴェルが行きたがるところ、アンズが昔住んでた柴崎のアパートや、KさんやSさんの家の方へも行ってみた。

5匹ぐらいの猫と目が合った。「ヴェルかな?」と思うと、猫なのだ。野良猫はすごい。あの寒さの中、冷たい道路にお座りしているのだから。

「もしかして、もう家に帰っているかも?」と、何度も3階まで駆け上がった。自力で入れるように、玄関のドアにサンダルをはさんでおいた。ホットカーペットとエアコンをつけて、部屋を暖かくしておいた。

模様替えに夢中な私。どんなに素敵で暖かく、快適な部屋になったとしても、そこにヴェルがいなかったら、すべてが無意味になってしまう。

1時間が過ぎて、急に足の重さを感じた。テニスで鍛えた足で、ほとんどずっと走り回っていたのだ。ちっとも寒さを感じていなかったけど、凍えるような寒い夜であることにも気がついた。
『海中に投げ出された人は、こんなふうに力尽きて、溺れ死んでしまうんだろうな・・・』とか、いろんなことが頭をよぎる。

また家に戻って、ちょっと一息。よーく考えてみた。発想の転換が必要だ。
怖がりの犬なのだから、そんなに遠くに行っているはずがない。団地の周辺に絞って、くまなく探す決心をした。
30分間、葉っぱの裏まで探したけど、ヴェルはどこにもいない。

もう一度、発想の転換をするしかない、と思った。
知らない道に迷い込んで、迷子になっているのかもしれない。もしかしたら、車に轢かれてしまったのかもしれない。凍死しているかもしれない。
バイクに乗って、あるとあらゆる道を探し回ることにした。死体でもいいから、家に連れて帰ろう。とにかく、力尽きるまで探そう。そう決心した。

バイクで走っているとき、また男の子がひとり、歩いていた。声をかけると、「いや~、見ませんでしたね」と、いつもの答え。
そのあとも、団地を基点に、ぐるぐる走り回っていたら、誰かが道路に立っているのが見えた。

そっちへ向かって走っていくと、さっきの青年が、
「これですか?うちのところにいたんで。声をかけたらこっちに来たんで・・・」と、大事そうに抱きかかえているものを私に見せた。

ヴェルだ!これです!ありがとう!」

また、ふたたびヴェルを抱っこできるなんて、信じられない思い。ヴェルは間違えて、となりの階段を上がって行ったらしい。その青年は、となりのとなりの家の住人だったのだ。

まさに、奇蹟が起こった。失踪から2時間たっていた。あきらめないで探しつづけて、本当に良かった。 (^0^)~~
朝まで待ったら、フランダースの犬になっていたかもしれない。

プルプル、ガタガタ、小刻みに震えているヴェル。しょんぼり、しょぼくれている。チワワは寒さに弱い。
ストーブの前において、暖かいものを食べさせてあげたら、やっと震えがとまった。
「ヴェルたんは、迷子になっちゃって、もう逃げ出しはだめだよ」と、何度も話しかけた。

ヴェルは耳をピンと立てて、ジーッと私を見つめ、一生懸命に話を聞いていた。
1月27日 喉もと過ぎれば・・・
失踪事件のあとは、外に出るとオドオドしていた。特に、夜中は、バイクからおろすと、いそいそと家に帰った。
ゴミ捨てのときも、シッポをプリプリさせて必死であとをついてきた。

ヤッホ~、楽チンだ~!と喜べたのも、3日間だけだった。

4日目には、階段の途中で何度も立ち止まり、後ろを振り返りながら、逃げ出そうか迷っていた。

5日目には、すっかり元通り。綱引き合戦の再開だ。小さな身体でふんばって、自分の行きたい方へ行こうとがんばる。
不思議なのは、あの時、なんで階段を間違ったのか?ということ。
人間の子どもが迷子になったのなら、あらゆる階段を昇ってみただろう。団地は迷いやすい。

だけど、犬には帰巣本能があるはず。自分ちの階段には、匂いがついてる。毎回、毎回、出口におしっこを引っ掛けて、「ここは俺んちだ」と、マーキングしているはずなのに。

ヴェルは、7歳までは、ほとんど外に出たことがなかった。
子ども時代に外に出ないと、犬としての本能が育たないのかもしれない。自分の家を中心に匂いをつける。あちこちの匂いを嗅いで、家に帰る道すじを頭に刻み込む。方向感覚を研ぎ澄まし、経験を蓄積していく。

でも、ヴェルは「箱入り息子」だったのだ。

風船に割り箸を刺したような体型で、ちょっと歩くと、「もう疲れた、抱っこ」。寒いとすぐに帰りたがる。家の近所は喜んでも、遠くへは行きたがらなかった。
それを、毎日毎日、日に何度となく外に連れ出して、外の世界に馴らした。抱っこで遠いところまで行くと、帰りは必死で歩く。ちょっとずつ、ちょっとずつ、鍛えていった。
半年後には、高尾山も平気で登れるようになった。(犬の体力に合わせて、自分もお散歩がんばらねばならない。私の体力も向上した。(^-^; )

最初の半年は、階段は抱っこだったが、私のぎっくり腰をきっかけに、自力で階段を上らせた。1年半たったら、階段の下りもできるようになった。毎日、最低2回は、3階までの階段を昇り降りしている。

体力と脚力がついていくにつれ、冒険心が育っていった。
リードをつけなくても、チョコチョコ後をついてくる犬から、スキあらば逃げ出そうとする「犬らしい」犬になってしまった。チワワには珍しい、筋肉ムキムキの、まさに「犬らしい」体型にもなった。

冒険心は、体力と気力にともなって、どんどん発達していくということが分かった。
でも、子どもの頃に小さな冒険をくり返さないと、方向感覚や帰巣本能は、発達しないのかもしれない。

これからは、ますます用心しなくちゃな。あんな思いは2度とごめんだ~。
2月7日 防寒対策
今年の寒さは非常にきびしい。
帰りが夜中になると、ヴェルはバイクのかごの中で、プルプル、ガタガタ震えつづけてた。

なんといっても、一番暖かいのは、ダウンだよな、と思いついた。
捨てようと思っていたダウンジャケットを、ゴミの袋から引っぱり出し、バッグに改造することにした。

袖を切り取って、下を縫い合わせた。実は、今度は伸筋を痛め、まだテニスを休んでいる状況。でも、ヴェルが病気になったら、もっと心配。

縫い物は肘にくる。特にダウンは布地が硬く、ハリを刺すのも一苦労。抜くときには、ものすごい力がいる。
(おかげで、テニス肘はまた悪化した・・・)
チャックを上げれば、ほら、この通り。昼間は顔を出し、夜中はスッポリ中にもぐりこんでいる。
2月14日 雨の日は困ったな
外は雨。いつもなら、まずヴェルのお散歩なんだけど、とりあえず、自分にお灸をすることにした。

小さいから、雨の日に外を歩くと、お腹まで泥だらけになってしまう。ヴェルも雨は好きじゃないし、お散歩には気合がいるのだ。
ヴェルは、私とストーブの間に坐りこみ、『お散歩はナシかなあ?』と、じっと私を見つめてる。
2月23日 お出かけのサイン
お灸が終わって、腕時計をはめた。ヴェルはいきなり立ち上がって、小躍りした。
外出するときしか時計をしないので、腕時計はヴェルにとって、一番確実な「お出かけのサイン」なのである。

くっつきたがりの犬は、人間の次の行動を予測することに、相当なエネルギーをつぎ込んでいる。
3月9日 割り込み
待合室にはイスが2つしかない。
患者さんが1人のときは、ヴェルもイスの上に坐れるけど、2人のときは下におろされてしまう。

高校時代の友人がだんなさんと2人で治療に来た。
治療が終わって、おしゃべりしていたら、ヴェルがイスのまわりを歩き回り、2人の足を手で何度も引っかき、「のせてくれ」とアピールをつづけた。
友人がヴェルを抱っこしてくれた。
2人ともかなりの太めなので、ヴェルは坐り心地が悪そうに、ひざの上をモソモソと動き回った。

『ここだ!」とばかりに、2人の間に無理やり入り込み、すき間にスッポリおさまった。
『おろされまいぞ!』の決意の表情である。

ほんとにヴェルは甘えん坊。
3月20日 バッグで「待て」
雨の日は、リヤのカゴだと雨に濡れてしまうかも。心配なので、バッグに入れて、前にぶら下げて走る。

家の外に出てからだと、足が汚れてやっかいなので、家の中でバッグに入れる。そのあとグズグズ仕度に手間取ると、ヴェルはさっさか抜け出してしまう。
「待てだよ~」「待てだよ~」と、バッグの中のヴェルに、何度も声をかける。

分かってんのかな~?
4月2日 ハウスでスヤスヤ
お散歩が終わって、ご飯を食べ終わると、ヴェルは日向ぼっこ。
一応、ここが、現在のヴェルの「ハウス」である。
自分のぬいぐるみを運び込んでいるので、本人もそう思っている様子である。

さて、バイクで通勤の時間だ!
「ヴェル、おいで!」「おいで!」と呼ぶ。何度呼んでも、来ない。
ヴェルは、気持ちよさそうに、スヤスヤ。

車でお出かけのときは、私のあとを追いかけまわすのにな・・・
4月13日 いい匂い
「ヴェルは犬臭くないね~」と、みんなに言われる。
臭くならないし、汚れにくくなったしで、お風呂に入れる回数が、どんどん減ってきた。

白い毛だから汚れが目立つんだけど、(リンスをやめたら?)いつも真っ白で、輝くようにつややかだ。
健康な毛は、汚れをはじく力があるのかもしれない。マルセル石けんのおかげもあるかも。

前の飼い主に、「ヴェル、いい匂い。昨日、お風呂に入ったの?」と聞かれた。
「1ヶ月くらい入ってないよ~」と答えたら、すごく驚かれた。

いい匂いになったのは、食べ物のせいかもしれない。
ドッグフードをやめて、すべて手作りにして以来、食べ物はほとんど野菜と穀類で、肉系はダシ程度にしか食べていない。
食べものと体臭には、大いに関係がありそう。

ヴェルは野菜が大好き。写真は、大喜びでブロッコリーに飛びついているところ。
健康で、手間要らずで、しかもいい匂いなのだから、一石三鳥だ。
○ ○ 追記 ○ ○
追記・10 ヴェルの失踪事件のこと
ヴェルが夜中に失踪したのは、うちに来てから丸3年たったときのことだったんだね~。
バイクから吹き飛ばされて以来、2回目の、ヴェルの「命の危機」事件だった。

真っ暗闇の夜中の12時。あの年の1月は「極寒」と言ってもいいぐらいの寒さだった。シ~ンと寝静まった団地の中で、大声を出すのがはばかられて、無言でヴェルを探し回った。

探しはじめてすぐのとき、うちのとなりの駐車スペースに車が停まって、カップルが降りてきた。ガヤガヤおしゃべりしながら、隣の階段を上って行った。
たぶん、そのときに、ヴェルもあとを追いかけて、階段を上って行ったんだろうなと思う。

あのとき大声で、「ヴェル~!」と叫びながら探していたら、うしろについて来た小さな生き物に気づいてくれたかもしれない・・・

私の辞書には「あきらめる」という言葉はない。
野川の遊歩道は、バイクが禁止である。自転車を持っていなかったので、1時間以上も自分の足で走りに走った。

遊歩道に立って、『まさか・・・』と思いながら、河川敷を何度も何度ものぞきこんだ。
照明のない河川敷は真っ暗闇で、シーンと静まり返っていた。目を凝らして見ても、動物の気配はない。
もしかしたら、川に流されたかもしれない?
いやいや、川に近づいたことは一度もないし、こんな暗闇の中、ヴェルひとりで河川敷に下りるはずがない・・・

怖がりの犬なんだから、たぶん、すぐ近くにいるに違いない・・・
そう思って、半径20メートルの範囲内を、草の根分けて探し回った。30分ぐらい探してみたが、どこにもいなかった。

disaster... catastrophe... 単語たちが頭の中をぐるぐると駆け巡った。
大災害、崩壊、すべてが破壊される・・・
激しい喪失感が私を襲う。

自宅は模様替えが進行中だった。
1日中部屋の片付けをし、さあ終わったと大満足。お風呂も沸いていて、出たらゆっくりビールで乾杯するつもりだった。
その前に、ゴミ捨てついでに、ヴェルにおしっこをさせようと、一緒に外に出たのだった。

幸せ色に染まった暖かい部屋も、お風呂もご馳走もビールも、一瞬にして、意味を失う。
愛するものを失ったら、もう2度と幸せはやってこない・・・

真冬の捜索は時間との闘いだ。放っといたら凍死してしまう。
ふらふらと道路に出て、さんざん歩いてから、寒さで動けなくなったのかもしれない?
もうとっくに車に轢かれてしまったかもしれない?
とにかく、死体でもいいから連れて帰ろうと思い、バイクに乗って、あらゆる道を探しはじめた。

真夜中の2時、偶然、団地の外で出会った青年。私にとっては「Rさんちの男の子」で、大人になった彼の姿を知らなかった。でも、向こうは私のことを知っていたみたいだね。

あの寒さの中、夜中だというのに、ヴェルを抱っこして、団地の入り口に立って、私を待っていてくれた。あんずに聞いたら、「あのお兄ちゃん、すごく優しいんだよね」と言っていた。本当だね。

数日後、ヴェルの散歩中にRさんにばったり会って、「この間は、ほんとうにありがとうございました」とお礼を言ったら、「えっ?」と驚いて、足元のヴェルを見て、「ああ」と言って会釈をし、急ぎ足で立ち去った。

そんなに「犬好き」というわけでもなかったらしい。どれほど大きな幸せを私にくれたのか、自分で気づいていなかったのかもね。
いまだに彼を見かけると、天使に見える。心の中で頭を下げる。

あきらめないで探しつづけて、本当によかった。道でRさんに会ったのは、天の配剤、一生に数回しか起こらない巡り合わせだとおもう。ほんとうにラッキーな偶然だった。
神様が守ってくれていると思える瞬間だった。

愛するものを喪失したときの2時間の生き地獄。無事に生還したときの、大きな安堵と幸福は、今でも忘れられない。

いつか来るであろうヴェルの死に、想像の中で怯えつづけた私。
結局、ヴェルは死んでしまったのだけど、老衰で、家の中で穏やかに逝ってくれたから、たくさんの思い出に幸せを感じられるのかもしれないね・・・
<寒さにめっぽう弱いヴェルだった>
updated: 2015/2/15
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