雑談・6
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タイタニック幻想
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少女漫画の世界
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女の人は、「自分を愛する男は、自分を守るために命を投げ出してくれるに違いない」という幻想を持っている。それを、映画「タイタニック」にちなんで、「タイタニック幻想」と名づけた。
どこかの男が、タイタニックを観たあと、「何で、女のために男が死ななくちゃならないんだよ!」と不満を言った、という話を聞いて以来、ずっとそのことが、疑問符と共に私の脳味噌に刺さっていた。
少女漫画は、タイタニック幻想で溢れている。恋愛ものは、すべてそれがベースになっていると言ってもいいくらい。漫画によっては、ものすごいカッコイイ男どもが、寄ってたかって「おまえを守る」と、フツーの女の子である主人公のために、命をかけてくれる。
うちの息子がその漫画を見た後、「はっきり言って、ここに出てくるような男は、現実には、ひとりも存在しないよな」と言ったことで、目が覚めた。
たしかに、かっこ良すぎるし、そう簡単に命を捨てれないだろう。そこら中に、フツーにいる男たちの顔を思い出して、なるほど、と思った。 |
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理性で生きようとする人ほど騙されやすい
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「命をかけてお前を守る」を実行できる男なんて、現実にはいない・・・?
頭ではそう思っても、自分が実際に騙されて、手痛い経験をして、とことん思い知るまで、納得はできないものだ。
それでも、「そいつは失敗だったにしろ、そうじゃないのもいるはず」なんて、やっぱりタイタニック幻想と、完全に縁を切るのは難しい。
頭のいい女ほど、変な男に騙されるのは、心理学の知識なんかで目を曇らされていて、現実を素直に受け止める能力に欠けているからなのだけど。
おめでたい女たちは、自分を守るために命をかけてくれる男がどこかにいるはず、と本気で信じているのだ。昔流行った「シンデレラ・コンプレックス」も似たようなものだ。いつか、白馬の王子様が自分を迎えにやってくる、という幻想を、女たちは頑固に持ち続けている。
だけど、「誰かのために命を投げ出す」のは、実は、女の人の中にあるものかもしれない。最近は、母性の神話も崩れてきていて、母性本能のない女もいるらしいが、わが子を守るために、瞬間的に身を投げ出せるのは、母性本能だと思う。
それを男に投影して、「彼は、いざとなったら、私のために命を投げ出してくれるはず」という幻想を持ってしまうのではないだろうか。 |
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いざというとき、できるだろうか?
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なぜ、「幻想」とネーミングしたかというと、絶対この男なら、愛する女のためにそうするだろう、と思われるような男たちが、その質問をすると、みんな下を向いて黙りこくったからだ。
ロマンチストの男は、「自分は、愛のために命をかけられる」と思い込んでいるかもしれない。敵をだますには、まず味方から、だ。自分がそう思い込んでいれば、相耳がそう信じてしまう確率は高まる。
私達姉弟が幼い頃の話だが、うちの父は、地震が来たとき、ひしと子供達を抱きしめる母と子を置いて、自分だけ逃げ出してから、いそいで戻ってきたそうだ。
正直な男たちは下を向いて、いざというときにできるかどうか?自問自答する。
心優しく、正義感と義侠心に満ちた男は、周囲の人から、そうするだろうと期待されているが、本当のところはどうなんだろう?いざというときに、そうできるのかどうかは、その時になってみなければ分からない。瞬間的に逃げてから、慌てて助けに戻ってくるかもしれない。 |
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犠牲的精神はビッグな男の証
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オリバー・ストーン監督の映画「エニィ・ギブン・サンデー」の中で、アメフトチームのコーチであるアル・パチーノが、若いクオーターバックに言う。たしか、こんな風なセリフだったと思う。
「Sacrifice! 自己犠牲だ。自分のことを考えず、みんなのことを考えろ。自分を犠牲にして、チームのためにすべてを捧げろ。そうすれば、チームのみんなは、おまえのために、喜んで首の骨だって折る」
ビッグな男は、自己犠牲的な男なのだ。自分を犠牲にして尽くすから、みんなに慕われ、信頼され、家族やチームのリーダーになれる。それは、その個人がもともと持っている資質、「人間の器」とおおきく関わりがありそうだ。
フツーの男をビッグにするのは教育なのかもしれない。男は強い。か弱い女や家族を守るべきと育てられる。
本や映画や漫画や、ありとあらゆるメディアで、男がとるべき崇高な行動は、自己犠牲だ。自分を犠牲にして、愛する人や国や大義を守る。メソメソ泣いたり、自分だけが助かりたいと思う男は軽蔑される。
(とはいえ、最近では、自分だけが得をしたい人間が、妙にもてはやされているような気がするが・・・) |
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幻想があるからがんばれる?
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とにかく、妻たちは信じている。自分の亭主が、いざという時、自分のために命を張ってくれると。客観的に見て、どうしようもない男でも、捨てられずに面倒を見てもらっているのは、彼の女が、彼にタイタニック幻想を投影しているからなのだ。
だから、男の健康管理に気を使い、毎日せっせと手料理なんか作って、男の面倒を見る。病気になったら看病し、死を看取ってあげようと思うのである。
もてる男は、女にタイタニック幻想を抱かせるのが上手なんだ。単なるプレイボーイなら、次々、相手を取り替えるしかない。相手に、嘘を信じさせつづけるのは相当な演技力が要るから。
「女を助けるために自分が死ぬなんてばかばかしい」と言うような男は、一生独身だろうな。そんな自己中のケツの穴の小さい男には、誰も惚れないもの。タイタニック幻想が持てないのだから。ちまちまと、自分の事だけ大事にして生きていけばいい。 |
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惚れた相手には全力を尽くそう
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「もし、惚れた女が現れたら、すべてを捧げなさい」と、男の子たちにはアドバイスしている。そうじゃないと、彼女はゲットできないよ。
金や労力を惜しむと、なぜか、惜しんだ所だけが目に付く。がんばって、90%を捧げても、10%の惜しんだ所だけが見える。
この女、と思ったら、ありったけのすべてを投入する。それって、相手を信じ、その女を信じる自分を信じなければならないけど。もし、それで振られたのなら、あきらめもつく。全力投球したのだから悔いはない。
自分には合わない女だったとあきらめて、次を探せばいい。傷つくことを怖れず、失敗を重ねていくうちに、女を選ぶ目もできてくるというものだ。 |
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「幻想」を現実にする努力
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ロマンチストの男とタイタニック幻想を持つ女。組み合わせとしては、ちょうどいいのかも。お互いに、相手の幻想を裏打ちする現実的行為の積み重ねができれば、あの世まで続くパートナーシップが形成できる。
「相手のために全力を尽くす」というのは、男女のカップリングに限らず、子育てにも通じる。いざという時、子供のために、自らも持てる力のすべてを投入する。子供は「自分は愛されている。誰かにとって、自分はかけがえのない存在だ」と信じることができ、たしかな心の絆をつくれるだろう。 |