doseiみづ鍼灸室 by 未津良子(ヴェルの思い出) 
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- 出会いから編  -
ヴェルの思い出
2013 ・ 4
7月24日 耳の下の腫れが、引きはじめる
ご心配をおかけした耳の下の腫れの、経過報告で~す。これは、当日、夜の写真。
抗生物質の注射が効いたみたい。だんだん腫れが小さくなっている。やっぱり感染症だったんだね。獣医さんに連れて行ってよかった。

下は今日の写真。
明け方から、めっちゃ元気だった。ひとりで家中を、カチャカチャ走り回っていた。治療室では、久しぶりに、患者さんのお出迎え。
治療のあと、おしゃべりをしていたら、お菓子をねだったりして、動きまくっていた。

このところ、ずっと元気がなく、お出迎えもしなければ、愛想もなく、眠ってばかりいたのだった。
もしかしたら、耳の下がずっと痛かったのかもしれないね。「年のせい」じゃなかったみたいだよ~。

今までの分を取り返そうと思ってるのかな?ものすご~く、活動的になっちゃったよ!
7月26日 久しぶりに、お散歩1時間
『ヴェルも、めっきり年を取った・・・』 『もう、そんなに長くはないかも・・・』、な~んて思い込んでいた私。
この数週間、患者さんに挨拶もしなくなって、寝てばかりだった。
おととし、愛犬を亡くした人に、「うちの犬も、最後はこんなふうに、ず~っと寝ていたわよ」と言われ、心配と不安で、かなり動揺していた。

お散歩で野川に下りても、10分ぐらいで、自分から階段を上がっていった。家のほうへヨタヨタと歩いていき、「もう帰ろうよ」と私を見上げてた。

でも、ヴェルの元気のなさは、感染症のせいだったらしい。
ずっと具合が悪かったんだね。老衰じゃなく、体調不良だった。顔は毛で覆われているし、「痛い」とか言わないし、狸顔になるまで全然気がつかなかった。

抗生物質を投与されてからというもの、寝込んでいた分を取り戻そうとするかのように、ヴェルはすっかり元気印である。

今日のお散歩。
いつものように、10分位で自分から上にあがった。でも、そのあとは、リードをぐいぐい引っぱって、家とは反対方向に歩いていった。

桜並木が途切れると、直射日光が当たるので、『これ以上はまずいよな』と、どうしようかと思案していた。

ちょうど、そのタイミングで、向こうから、シェルティのメルちゃんがやってきた。
ヴェルは振り返って、メルちゃんをじっと見た。そのあと、メルちゃんの後を追って、なんと、また、河川敷に戻ったのである。
メルちゃんは、もう見えなくなってしまったが、ヴェルは、ずんずん歩いていく。この頃は、絶対に遠くへ行こうとしなかったのに・・・

おいおい、そっから先は、日陰がないよ~。
日向へ、どんどん歩いていき・・・
さすがに暑いぞと、Uターン。
まだまだ帰る気配はない。木陰を堪能している。たっぷり1時間、お散歩を楽しんだ。久しぶりである。

元気になって、良かったね~。まだまだ、長生きできそうである。
7月31日 象とねんこ
暑いときは床の上。エアコンが肌寒く感じるときは、タオルケットの上。動物はかしこいよね。

右上にあるのは、非常用トイレ。部屋を閉め切ってエアコンをかけるとき、これがあると安心でしょ。1回しか使ったことないけど。

今日はタオルケットの上でねんこ。なぜか象をつれている。
理由はわからないけどね~
私の服の上で寝るのが、一番好きみたい。匂いがついているからかな。お留守番のときは、パジャマとか、わざと部屋にちらばせておくんだよ。
8月10日 ただいま~
私が旅行中、あんずの家に預けられていたヴェル。いつものことながら、若い者と遊んでくると、ぐったり疲れるらしい。
患者さんのお迎えにも出ず、眠ってばかりだった。丸一日、ご飯を食べなかった。

よくあるパターンである。
夜は、いつものお布団でぐー、ぐー、ぐー。気持ちよさそう・・・
なんだか幸せそうに見える・・・
気のせいかな?
カシャ、カシャ、カシャ・・・、シャッターの音で、起こしちゃったね~

「ヴェルたん、おうちに帰ってきて、うれしい?」などと、無意味に聞く、飼い主バカである。
8月18日 パスタ料理が大好き
ヴェルが一番喜ぶ料理はパスタである。私のお得意は、ペパロンチーノをベースにした、明太子パスタ。
バージンオイルに、にんにくのみじん切りを入れ、焦がさないように、低温でじっくり、にんにくのエキスを油に溶かしだすことからはじまる。

その瞬間に、ヴェルは、「あ、パスタだな!」と気づくらしい。いそいそと台所にやってきて、私の足元で待つ。

日本酒で洗ったエビも入れ、低温でじっくりと、エビのエキスを溶かし出し、ついでに生トマトも溶かす。
パスタをゆでながら、パスタソースに、シメジ、ナス、ピーマンなどの野菜を加える。フランスパンで食べても美味しいよ。

茹で上がったパスタを入れ、ソースと混ぜる。火を止めてから、明太子を混ぜ、お皿に載せて、刻んだ海苔をかけて、さあ、出来上がり。
ここですぐに食べられないのが、犬を持つ身の悲しさである。

小なべに、少量のお水と、無塩バター、野菜などを入れ、ヴェルのパスタを作る。この日は、人参、キャベツ、アボガドなどが入っている。

鶏肉と野菜のスープ煮とかがあるときは、もっと簡単にできるんだけどね。
料理の途中で、ヴェルを蹴とばした。足元でお坐りして待っていたのだ。邪魔だし、危険だよね。

「ヴェルは、そっち」と言いながら、足でヴェルを押した。
お部屋にのぞきに行ったら、ばっちり、期待のまなざし。お耳がピーン。目は爛々。

もうすぐ出来上がるよ~
8月25日 粘りに負けた
野川の河川敷は、うっそうと草が生い茂っている。
おまけに、先週の豪雨で川が増水し、草がなぎ倒されて、泥水をかぶってしまった。草には、乾いた泥がくっついたままである。

もう、人が入れるような状態じゃない。河川敷を歩く人を、誰も見かけなくなった。人が踏まなくなったので、小道も消えてしまった。
小さなヴェルが野川に下りて、泥だらけの草の中を歩けば、全身、泥まみれになること必須。

下に降りずに、サイクリング道路だけを歩かそうとしている私。でも、どうしても、いつもの場所で遊びたいヴェル。
毎日がバトルになった。階段を通り過ぎると、急ブレーキをかけたみたいに、立ち止まる。
全体重をかけて、ヴェルはふんばる。道路に座り込む。腹ばいになる。

なんとしても、下に降りたいらしい。
ついに、根負けした私。
リードをはずすと、ヴェルは喜び勇んで、階段を駆け下りていった。

私は上で、戻ってくるのを待つことになった。ストレッチをしながら、蚊に食われながら。
「まだかな~?」 秋口の小さい蚊は、すごいしつこいんだよね。
8月30日 お散歩を期待して・・・
前日、シャワーをしたので、真っ白でしょ。毛もまだフワフワしてる。

大好きな女の子が来た。ときどき、お散歩に連れて行ってもらったのを、ヴェルはちゃんと覚えている。治療も終わり、おしゃべりも終わり。

『そろそろかな・・・?』と、ヴェルはいそいそと、玄関に先回り。
でも、残念だね~
彼女は足を骨折して、片足にギブスを巻かれている。左だけ大きい靴が見えるでしょ。

治ったらお願いしようね~~
9月4日 夏はものぐさ
暑い日と、そうでもない日では、ヴェルの行動力が、全然違う。数日、涼しい日がつづいたときは、違っていた気がするが・・・

朝のお散歩のあとは、ぐったり疲れてしまうらしい。朝ごはんを食べるのが夕方になる日も多い。
治療室でも・・・毎日、夏の居場所にもぐりこんで、眠りこけている。
患者さんのお出迎えにも、出てこない。「ヴェルちゃ~ん」と呼ばれても、起きない。

ぐー、ぐー、ぐー
みなさんが帰ったあと・・・、「あれ、起きたの~?」

もう、遊んでくれる人、誰もいないよ~。早く、涼しくなってくれないかな~
ね、ヴェルもそう思うでしょ?
9月11日 あれ? 元気じゃん?
患者さんが帰って、誰もいなくなったら。。。
ねぐらから、とことこ、出てきたんだよ。

あれ、期待のまなざし? ピョンピョン跳ねて、ジャンプ、ジャンプ。『ワン! ワン!』と、さわぐ。そこら中を、駆け回る。

尻尾をパタパタ振って、お散歩を催促してる?
「行かないよ~」と、ヴェルに言う。「お散歩、あ・と・で、ね~」

元気いっぱいが、急に失速。しょんぼりモード。

みんな、ヴェルと遊びたがっているのに、ずっと、愛想なしだったね。
君は副院長なんだからね!
患者さんに、ちゃんとご挨拶してくれなくちゃ!
9月17日 水を飲むヴェル
ヴェルの後姿だよ。
エアコンをかける夏の間は、お水は、部屋の中に置いてある。1日数回、お水を飲みに行く。
長い舌で、ピチャピチャ。

尻尾の根元の毛が黒いでしょ。くるくるカールしているんだよ。黒い毛は縮れ毛で、白い毛はストレート。
これがヴェルの特徴である。
○ ○ 追記 ○ ○
追記・27
犬語②  オオカミのDNA・・・
 声色を変えておしゃべりする
最近、オオカミの本にこっている。ヴェルを思い出して、ちょっぴり幸せな気分になれるからなのであるが・・・

日本では、オオカミはとっくに絶滅している。
アメリカでは、オオカミを復活させようという試みがはじまり、カナダのオオカミをイエローストーン公園に移住させ、いくつかの群れが観察されるようになったそうだ。

オオカミに関しては、後日、ブログで詳しく書くつもりだけど、ここでは簡単に紹介する。

まだ研究がすすんでいない時代に、デイヴィッド・ミッチが、オオカミの集団は支配と服従で形成されている、と推測した。
交尾できるのはボスのカップル、「アルファー雄」と「アルファー雌」だけ。他のメンバーは、ボスの命令に絶対服従で、序列に従って行動する、強固な縦社会であるとした。

研究がすすむにつれ、あらたな事実がわかってきた。
オオカミの群れは「家族」なのだそうだ。交尾するのは、お父さんとお母さんだけ。毎年生まれる子どもたちは、兄弟姉妹。だから、年長者の言うことを聞く。同一家族内では交尾をしない。

経験豊富な両親の指導のもと、協力し合って狩をして、食べ物を分け合い寄り添って暮らす。ひとつの巣穴の中でくっついて眠る。遊んだり、お喋りしたり、じゃれたり、助け合ったり、ケンカをしたりもする。
生まれ育った群れから離れて、一匹オオカミになったオスとメスが出会うと、またあらたな群れ=家族ができる。

ミッチも今では、「アルファー雄」「アルファー雌」という呼称をやめて、「繁殖オス」「繁殖メス」という言葉を使っているのだそうだ。
研究がすすんで、かつての間違いや思い込みが訂正されつつあるのだ。

犬の生態もオオカミに倣って語られてきた。
犬もオオカミと同じ遺伝子を受け継いでいる。あんまり甘やかすと、自分をボスと思い込み、手に負えない犬になる。それを「アルファー・シンドローム」という。そう本には書かれてあった。

でも、ヴェルと暮らし、ヴェルを観察して、私なりの考えを持った。
ヴェルが、唸る、噛む、自己主張をする。でも、自分がボスと思い込んでいるのとは違う、と思うようになった。
「家族」の中の「子ども」がするような、普通の自己主張に似ていた。

親に反抗もするし、ケンカもする。
「買って、買って!」とおねだりをして、スーパーの中で寝転んで、足をバタバタさせる。「うっせぇ、ババア」と親にいばる。ときにはすねたり、わざと悪いことをして気を引いたり。泣いたり、怒ったり、甘えたりして、自分の思いを通そうとする。

でも、基本的なところでは、しっかり家族のルールを守る。最終的にはボスの言いつけに従う。雷や大きな物音、私の「キャー!」に反応して、家族を守るために外敵に立ち向かおうとする。
病人がいるときは、みんなの輪に加わらず、ヴェルひとりで、おふとんの横で待機していた。自分の役割と思っていたんだね。

厳しい環境の中では、家族の結束が強まり、家長の命令は絶対となる。平和で安楽な時代には、結びつきが弱まって、親の権威は失墜する。
私の思ったとおり、ヴェルの自己主張は、今どきの家族の中での、今風の「子ども」たちと同じだったのだ。

何冊か読んだ中、ギャリー・マーヴィンの「オオカミー迫害から復権へ」(白水社)に、興味深い一説があった。

「オオカミは、聴覚、嗅覚、視覚による合図が混じりあったものでコミュニケーションをとることにより複雑な社会生活を営んでいる。
幼い仔オオカミの声は、キャー、キー(金切り声)、キャンキャン(鳴き声)、そしてワフ(吠え声)という音で表現される。
彼らが若いオオカミに育つと、ウー(呻き)、クーン(鼻を鳴らす声)、グルルル(怒って唸る声)、ワフ(吠える声)という音に変わり、やがて成獣のウーフ(低い唸り)、キー(叫び声)、そして遠吠えの声となる」

オオカミは、家族の中で、声の音、トーンで言葉を使い分け、身振りや表情をまじえて、お互い同士コミュニケーションを取り合っているのだそうだ。

ヴェルと同じだね。やっぱり、オオカミの血は争えない。

なんとかして気持ちを伝えようと一生懸命だった。
旅行バッグやジャンバーの上にお坐りして、「お留守番はいやだよ」と伝える。家の中を行ったり来たりして、お散歩を期待する。尻尾をパタパタ、ときにはグルングルン振り回す、あるいは、パタリと尻尾を垂らす。

表情やパントマイムを駆使するだけじゃなく、声色を変え、言葉でも自己表現をしようとしていた。

食べ物をおねだりするときに、大きな声で言う「ワン、ワン!」、文句を言うときの「ワン、ワン!」、会話に参加するときの「ワン、ワン!」は、似てはいても、微妙に異なっていた。

「お散歩に行けるの?」と聞くときの、遠慮がちに喉の奥で鳴らす声。
治療室のイスの上に坐っているとき、「水が飲みたいから、下におろして」と言うときの、ちょっとくぐもった言い方。
寒いときに(私の着ている)洋服を欲しがるときは、私の背中を手で掻いて、「カッ、カッ」と言う。

ガルルルはもちろんのこと、いろいろな声色を使い分けるヴェルと、聞いてあげて、人間語に翻訳してあげる私。
ヴェルは、自分も言葉で語ろうとしていた。会話する楽しさを知ったのだ。

言葉や身振りでコミュニケーションが取れると、悪さや無駄吠えをしなくなる。それは当然である。

うちの患者さんの妹の犬は、「おやつちょうだい」と言えたそうだ。
うちに来たのは7歳のとき。もっと早くから言葉を仕込めれば、天才犬になっていたかもね。

犬語を育てるには、伝える犬と聞き取る飼い主の、絶妙なコンビネーションが必要なのである。

ヴェルが亡くなった日の朝のことである。
一晩中、エアコンの風のあたる畳の上で寝ていたヴェル。按摩をしてあげようと、私のおふとんに連れて行った。
もう足腰が立たなくなっていた。私の手から逃げ、這うように移動していったヴェルが、「いや~ん」「いいよ~」「やだよ~」と言ったのである。
野生の本能で死期を悟り、静かにこの世を去りたかったんだと思う。

ついに人間語をマスターしたヴェル。私への、最後のプレゼントだったのかもしれないね・・・
<一生懸命、聞き耳をたてるヴェル>
updated: 2016/10/19
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