ストレッチに目覚めたきっかけ |
若い頃は準備体操がキライで有名だった私。
「ストレッチをしても治らなかった」という患者さんがたくさんいますし、ヨガや体操など、静的な運動には、ずっと興味が持てませんでした。
そんな私が、ストレッチに注目するようになったのは、数年前から、Hさん(現在84歳、男性)の治療をするようになってからです。
隔週で治療をしているのですが、2週間たつと、あちこちの筋肉が硬くなります。でも、鍼灸をするとすぐにほぐれます。
気の通りがよくて、治療効果がすぐに出るのです。
70代になると、患者さんはほんとうに治りにくくなるのに、「80代なのに、すごい!」「並みの50代よりも身体が若い」と感心しました。 |
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体操と鍼灸の組み合わせ |
Hさんは、学徒動員で士官学校に入学が決まった矢先、15歳のときに腰痛を経験し、以来、ずっと鍼灸治療を受けてきました。
39歳の誕生日に、「今日から毎日体操をしよう」と決心し、実行してきたそうです。Hさんの体操は、「真向法」といいます。
いったん家を出たら、何時に帰れるか分らないほどの忙しさだったそうです。
体操ができるのは朝しかなく、「目が覚めたら、まず体操」と、出張先でもホテルの床でやったそうです。
前屈をすると、いまだにおでこが床にペタリとつくそうです。
長年鍼灸治療をやってきて、どれだけいい状態で70歳を迎えるかが、どこまで治るかの「鍵」になると痛感している私ですが、Hさんは優等生です。
Hさんを見習って、4年半前から毎朝、「360度リョコちゃんストレッチ」をするようになりました。ハシゴや家具を利用した自分で工夫したストレッチです。 |
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ストレッチで身体の異変をキャッチできる |
患者さんに、「ストレッチをすると、かえって痛くなるんです。やらないほうがいいんでしょうか?」と質問されることがあります。
痛みを感じるタイミングは人それぞれですが、ストレッチは正直です。
筋肉は縮むことで働きます。不具合が起こると、まず縮みはじめ、放っておくとそのまま固まっていきます。
そのまま、痛みが眠ってしまうこともあります。
ストレッチをすることで、各部の筋肉の状態を早めに知り、「ここが危ないぞ」と、すぐに気づくことができます。
「伸びにくい」と発見したら黄信号、「痛み」が出たら赤信号です。
もうストレッチだけで治る領域ではなくなったというサインなので、きちんと治療を受けましょう。 |
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ストレッチが最後の一手になることもある |
私の両ひざは、高校時代にバスケで酷使した後遺症で、ときどき不具合がでます。
テニスの壁打ちは、ボールがすぐに返ってきます。
コンクリートの床の上で、膝を屈伸させての反復運動をつづけたために、右ひざの内側痛がぶり返してしまったことがあります。
最後の決め手はストレッチでした。
左足1本で立ち、右足をハシゴにのせ、上体を360度、あらゆる方向に傾けます。
右ひざが思いっきり伸ばされて、ジーンと痛みが出たのですが、数日で右ひざ痛がなくなりました。
母の指圧で左の母指を痛めてしまったときは、ちゃんと治療をする時間がとれず、なかなか治りませんでした。
ある日、指が曲がらなくなっているのに気がつきました。
かばっていた間に、関節が固まってしまったのです。
「これはマズイ」と思って、思いっきり指を曲げました。
かなりの痛みで泣きそうでしたが、そのまますっきり治ってしまいました。
「ひざ痛・2」に登場したMさんも、痛いのを我慢して、毎日ひざを曲げ、正座の訓練をつづけたそうです。
すっきり治ったのは、そのおかげもあったようです。 |
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反射神経に見合う身体をつくる |
遅咲きのテニス愛好家の私です。
上手な先輩たちに「追いつけ」「追い越せ」で、必死に練習をつづけています。
テニスをやって気づいたのが、「反射神経は、年をとってもあまり変わらない」ということです。
瞬間的に身体が動き、ボールに飛びついたり、危険なときによけたりできます。
年をとって衰えるのは、「身のこなし」です。
特に、飛びつくときよりも、着地のときに怪我をする危険が高いのです。
思わぬ無理な体勢を強いられたときは、各関節の可動域が大きいほうが有利です。
ストレッチで柔軟な身体をつくることで、大怪我を回避できます。
スポーツをしない人でも、ぶつかる、つまづく、転ぶなど、思わぬアクシデントに見舞われることがあります。
日頃からの心構えが、危険なときに身を助けるのです。 |
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何歳からでも、遅くはない |
バレエをやっている患者さんに聞いた話ですが、ある先生のクラスに、65歳からバレエをはじめた男性がいたそうです。
身体がカチンカチンだったのですが、数年で、上体が床にペタンとつくようになったそうです。
「だから、皆さんも、あきらめずにがんばってください、と言われました」と、私を励ましてくれました。
私はもともと体が硬く、学生の頃ですら、立位の前屈で、指先が床につきませんでした。
「硬いからストレッチが嫌いになる」「ストレッチをしないから、ますます身体が硬くなる」の悪循環だったのでした。
360度リョコちゃんストレッチをはじめて数ヶ月で、前屈のとき、手首まで床につくようになりました。
前屈はそれ以上は、あまり進歩していませんが、足、腰、上半身も含めて、各関節の柔軟性は格段に進歩しました。
歩くときにかかとを引きずるクセも消失し、足が腰から出るようになりました。
若い頃から悩んでいた「猫背も」も、すっかり、といっていいほど治り、背筋をシャンと伸ばせるようになりました。 |
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元気な暮らしのために |
関節可動域を広げて、柔軟な身体をつくる(もしくは、維持する)のが、ストレッチの目的ですが、腰痛など、さまざまな病気を予防することができます。
少々の異変なら、ストレッチで治すことも可能です。
年齢とともに、人間はあまり動かなくなります。
若い人は、痛みが取れれば、仕事をしたり、遊びに出かけたりと、どんどん動きます。
鍼灸治療は万能ではなく、「よく治るのはよく動く人だけ」です。
鍼灸は、痛みを取るだけでなく、身体に「どうやったら治せるか」を教えてあげる治療法です。
疲労を回復させ、身体の掃除をする効果があり、身体の切れが良くなります。
「鍼灸」「運動」「ストレッチ」は、完治のための、三種の神器です。いつまでも若々しく、元気に好きなことを楽しめる自分でいたいものです。
Q22:「360度リョコちゃんストレッチ」を参照してください。 |
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