dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例34・半腱様筋の痛み
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症例34・半腱様筋の痛み
半腱様筋は骨盤の安定にかかわっている
坐骨神経痛と診断されての来院
臀部から足への痛みに悩んでいる人がたくさんいます。来院者以外にも、全国の人からメールで相談をされ、同じ症状で苦しんでいる人がたくさんいることを知りました。
坐骨神経痛と診断された人もいるし、病名がつかず原因も不明と言われた人たちもいます。

坐骨神経痛で来院した女性NKさん(20歳)は、声も明るく元気いっぱいな大学生です。
彼女が言うには、年末あたりから、疲れたときやバドミントンのあとなどに時々腰痛があったけれど、だんだんひどくなり、最近は激痛と言えるほどになったということでした。

左側の腰から足にかけて痛みがあり、足を投げ出して座っていると、腿の裏がつっぱってずんずん痛くなると言うのです。

このホームページを見ての来院で、しかも他で坐骨神経痛と診断されたと言うので、たぶん梨状筋症候群だろうと思って治療を始めました。
ところが・・・
左の臀部から大腿の裏にかけての筋肉よりも、逆に右側のほうが盛り上がってつっぱっているのです。
左側には坐骨神経の経路に沿って筋肉に反応が出ているはずなのに、特にこれと言った変化が見られません。

「おかしいな?」と思いながらも、坐骨神経痛に関係するラインを中心に治療をしました。
若くて筋肉がしっかりしているので、パルスなどもかけて、これで完璧!のはず・・・

ところが、立ち上がって前屈をしようとしたNKさんは、「やっぱりダメです」と、ピクリとも身体を曲げられないのです。
曲げようとすると、左の腿の裏側に痛みが来るそうです。

ベッドから降りる動作はすばやくて、健康そのものなのに何故???
簡単に治るはずだったのに、と私は青ざめてしまいました。
実は半腱様筋の障害だった
もう一回ベッドにうつ伏せになってもらって、左の腿の裏側の筋肉を調べました。
さっきはよく発達した筋肉がパンパンに盛り上がっていたので見つけられなかったのですが、まわりの筋肉がほぐれたおかげで、奥の方で棒のように硬くなっている筋肉に、かすかに触れることができました。

その筋肉をめがけて深く鍼を刺してしばらくの間置鍼、そのあと透熱灸、それから立ち上がって前屈をしてもらうと、「さっきよりはちょっといい」感じで、少し身体を曲げられます。

硬い筋肉を探り出しては、鍼灸をし、前屈してもらう、を何回も繰り返しました。
その間に本を開き、この筋肉は何だろうと調べました。

大腿後面には大腿二頭筋、半腱様筋と半膜様筋があります。位置的にどうやら半腱様筋()らしいということが分かりました。

縫工筋()、薄筋()と半腱様筋()の三筋は、腱膜様に広がって、最後は膝の内側に癒合して終わります。
その停止腱は鵞足(=ガチョウの足)と呼ばれ、この三筋は骨盤の安定の微妙な調節に関っているらしいのです。
大腿後面
半腱様筋 坐骨結節 鵞足
大腿二頭筋 脛骨外側
鵞足(脛骨内側
骨盤からでる3つの筋肉の腱が融合して停止
大腿前面
縫工筋 上前腸骨棘 鵞足
薄筋 恥骨
あとから納得できた微妙な症状
NKさんは、半腱様筋の障害だったから、身のこなしは完璧なのに、骨盤の不安感のせいで前屈ができなかったのです。
その上、坐骨結節と膝関節を繋ぐ筋肉が硬くなって縮んでいたため、足を投げ出して座ることができなかったのです。

発症してから来院まで2ヶ月も経つと、最初に痛めた筋肉と、そこをかばったために起こる筋肉のつっぱりの、どちらがメインの患部なのかが見分けにくくなります。

痛いほうの左より右の腿の方がつっぱっていたのは、左をかばったせいでしょう。
左の腿の筋肉たちも、半腱様筋の分まで活躍したせいでパンパンに張っていたのです。

NKさんには最後に、耳のつぼの坐骨神経ポイントに銀粒を、右腕の陽谿にも銀粒を貼り、半腱様筋に沿ってキネシオでテーピングをしました。
骨盤にかなり安定感がでました。
突然、原因となった事件を思い出す
治療の途中にNKさんは、去年の暮れに、自転車で縁石にぶつかって左側に転びそうになり、慌てて左足で踏ん張ったことを思い出しました。
その数日後に左の後ろの腿が突っ張り、それから腰が痛くなり始めたということです。

たぶん、そのときに半腱様筋を痛めて、それがどんどん悪化してしまったのでしょう。
原因となった事件と、痛みが発生した時期にずれがあると、患者さんにとっては両方を結びつけるのが難しいことがよくあります。

NKさんの症例はとても勉強になりました。
たぶん、半腱様筋の障害で来院した患者さん第一号と思います。
鍼灸の場合は、反応の出ている場所めがけて治療するので、診断せずに治療して治った人がいるかもしれませんが。

坐骨神経痛と診断された」ときいて、痺れがあるかどうかを確認せずに治療をはじめたのですが、「痺れがない」のは筋肉の障害と推定できるでしょう。
Updated: 2004/3/18