dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例27・めまい 2改
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症例27・めまい 2改
鍼灸で変化すれば可能性あり
自律神経失調症とめまい
ここからは以前のバージョン(2004年7月20日に更新)の改訂版ですが、他の症例も追加してあります。

昔は精神疾患や神経症にとても興味を持っていました。
患者さんの悩みをカウンセリングで解決するのではなく、身体のツボに鍼灸治療を施すことで治せたらと思い、それを理論体系化させたいと願っていました。
描写が詳細なのはそのためです。

昔は自律神経失調症の治療が得意でした。心のアンバランスが身体にあらわれた病という持論があり、首・肩こりともめまいとも、おおきな関連性を感じました。

10年以上前からでしょうか、どうやら「自律神経失調症」は死語になったらしく、それを主訴で来院する患者さんはいなくなりました。
「うつ病」と診断され、向精神薬を処方される時代になったようです。

(付け加えると、向精神薬を飲んでいると鍼灸治療の効果が相殺されるので、薬か鍼灸か、どちらかを選んでくださるようお願いしています)
学校に行けなくなった大学生
1995年4月に来院したK君は当時20歳の大学生でした。
半年ほど前から自律神経失調症になり、めまい、手の震え、動悸、不眠、不安、倦怠感などを訴えていました。
ひどいめまいが突然起こる、いつ起こるか予想もつかないし、一旦めまいが起こると身動きもできない、口もきけない状態になるので、それが怖くて、学校にも行けなくなってしまったそうです。
パニック障害ですね。

首は熱を持ってパンパンで、手のひらと足の裏はいつも冷たく汗ばんでいます。
手掌と足底の発汗は精神的な発汗で、後頚部の熱と同様、自律神経の状態の目安にもなります。
労宮と湧泉に浅くハリを打ち、置鍼、それでもダメな場合は糸状灸もします。
魚のような状態から、さらさらに乾いて暖かくなり、人間らしくなります。
首の熱をとるには、首の治療だけでなく、手足に流して気の巡りを調整します。
自立心とめまい
K君とはいろいろな話をしました。私自身もつらい「うつ」を経験したあと、まだ治りきっていなかったので、心の問題に一生懸命でした。

「学校に行けなくなった」というのは「行きたいけど行けない」のか、それとも本当は「行きたくない」のか?などなど、生い立ちから友達関係から、不安の原因を一緒に探りました。
K君は潔癖症の気もあったのですが、本人は努力して、時には不潔でだらしなくしても平気でいられるようになりました。
(あまりいいアドバイスじゃなかったかしら?)

治療は週に1回のサイクルで定期的に行いました。
だんだん元気になっていき、半年後には自律神経の症状がほとんど消え、遊びまくれるようになりました。
8ヶ月間、全部で30回の鍼灸治療をし、その間、めまいは1度も起こりませんでした。
めまいに対する不安が消えたので、治療を終了しました。

K君は結局大学をやめて、元気に仕事をしています。
治療には来ていませんが、その後の8年間、めまいに襲われたのは2・3回で、じっと寝て治したそうです。
若い人の場合には、自分自身をしっかり把握できるようになる過程と、症状が治まっていく過程には、相関性があるようです。
10年以上もめまいに悩んだ73歳
Gさん(当時73歳の女性)は1999年8月に来院しました。
いろいろな病院であらゆる検査をしてもどこにも異常はないと診断されながら、10年以上もめまいに苦しんでいた人です。
めまいの他、頭重、静脈瘤、手足など全身あちこちに痛いところがあり、首もパンパン、肩も背中もバリバリの人でした。

Gさんのめまいは「船に乗ってひっくり返ったような」感じで、「グラグラする」タイプのめまいでした。
本人としては右目から来ているような感じがするそうで、右を上にしてしか眠れない、ということでした。
週に一回のサイクルで定期的に治療をすることになりました。

初回の治療は、70代という年齢を考慮してドーゼ(刺激量)を少なくするよう心がけたのですが、それでも、頭はグラグラ、腰、膝、あらゆるところに痛みがおこり、3日ぐらい続いたそうです。
Gさんはそれを瞑眩反応(メンケンハンノウ=激しい反応ののち、病気が快方に向かうこと)と確信し、じっと過ぎ去るのを待ちました。
痛みはあっても、食欲が増進し、元気になったそうです。
2ヶ月目、めまいが動いた
3回目の治療のあと、Gさんは実証タイプに変身しました。
もともとが暑がりでがっしりした体格の元気いっぱいの人だったそうなので、つまり、本来の体質に戻った、ということです。

息子さんの会社が倒産し、連帯保証人だったために家もアパートも取られ、半年間宿無しの生活を続けたそうです。
今は住む所も見つかって落ち着いたのですが、息子さんが難病になったりと波乱の晩年です。
実証タイプの人が、心労のせいで虚証状態になってしまっていたのです。<→ FAQ 7 虚証と実証について

ただ、旅館暮らしの半年間は、めまいとは無縁だったそうです。お金持ちの有閑マダムだったときからめまい持ちだったのに、です。

最初のうちGさんのめまいには頭痛も伴っていました。
2ヵ月後、7回目の治療のあと、4日間だけめまいも頭痛も消えたことがありました。

「めまいが動く」、つまり、めまいの質が変化したり、時には消失したりするということはいい兆候です。
鍼灸によって、めまいが動くということは、鍼灸でめまいが治る可能性があるということです。
1年半後、めまいが消えた
治療開始から3ヶ月目に、「グラグラ」が「クラッ」に変わりました。
四六時中グラグラしていためまいが、時々クラッとめまいがくる、状態に変化したのです。
そうなると、ストレスとの関連が明確になり、自分がどんな時にストレスを感じ、めまいを起こすかが把握しやすくなります。

治療開始から6ヶ月目にめまいが悪化。たまにからりと晴れる日があっても、ひどいめまいが2ヶ月ほど続きました。
そのあと、ずーっと重かった頭が少し軽くなりました。

まためまいが変化しました。今度は「まりに乗っているよう」なめまい。一日中ゆらゆらと緩やかなめまいがあって、つかまらないと歩けない日もあったそうです。
それが1ヶ月ほど続いた後、ゆらゆらが消え、めまいはかなり楽になりました。
結局、めまいがなくなったのは、治療開始から1年半後でした。
ムチウチが原因のめまい
2004年2月に来院したYさん(当時42歳、女性)は、長い髪にすらりと細身で、おっと人目をひく美人で、5ヶ月間もめまいに苦しんでいました。
一日中船に乗っているような、激しい縦揺れのめまいと、船酔いのような吐き気があったそうです。

最初に、だんなさんが「めまいは治ります?」と電話をかけてきました。何回か治療に来たことのある人です。
上述のGさんのことを話したら、「そうですか、治るんですね!」と、1年半かかったことにも、ひるみませんでした。
二人の幼い娘さん達までお母さんのめまいを心配し、めまいを中心に家庭生活が回ってしまうほど、めまいに翻弄される毎日だったようです。

でも、Yさん本人と電話で話してビックリ。5ヶ月前に自転車で電柱に激突し、頭を強打したのが原因だというのです。
もしも小脳性(バランスを調整する)などの脳の障害が原因だったら、鍼灸で治る可能性はほとんどありません。
そのこともお話して、とりあえず、治療を試してみることになりました。
不安神経症のせいにされたけど・・・
Yさんは病院でいろいろと検査を受けて、CTもMRIも異常なし。
内耳にリンパ液が溜まっている可能性があり、それが原因かもしれないからと、耳鼻科に通っていました。
原因不明のめまいのため、とうとう精神科に回されて、抗不安剤など、精神科の薬まで処方されていました。

Yさんは、めまいが不安でどこにも出かけられなくなってしまった、つまり「めまいがあるから、不安になった」はずなのに、お医者さんに、「自分では気づいてなくても、実はあなたは人生に問題を抱えていて、もともと不安神経症だったのです。そのせいでめまいが起こるのです」と言われたそうです。

そう言われるとそうなのかな?と思ってしまう。いろんなことに挑戦し、人生を謳歌していたはずだったのに?
ずっと、恵まれた人生を生きてきたと思っていたんだけど、実はそう思い込んでいただけで、本当は問題を抱えていたのだろうか?
と悩みに悩み、ますます不安が募ったそうです。

「こんなこと言うと、みんなに怒られちゃうんですけど、人生でつらいことといったらつわりぐらいしか思い出せないんです。それも大してひどくもなかったのに。どう考えても、めまいのせいで不安になっているとしか思えないんですよね」とYさんは言いました。
5回目、めまいが動いた
とにかく、鍼灸によってめまいが動けば、鍼灸で治せる可能性があります。
週に1回の治療を10回やってみれば、予後が予測できます。
主訴は「めまい、不安、耳鳴り、足がすくむ」と言うことでした。

Yさんの身体は年齢を感じさせない若々しさで、首が凝っている以外、特に悪いところは見当たりませんでした。
毎回、パターンを変え、いろんな治療を試してみました。でも、ひどいめまいはピクリとも変化しません。
若々しかった身体は、古いコリが出てきたのでしょう、治療のたびに老けていき、そしてまた若返り始めました。

最初の4回までは、めまいに変化なし。無理かもね、と言ってたのですが、Yさんは気分が軽くなって、めまいはしても、元気に動けるようになったとのことです。

そして、5回目の治療の直後、一旦外に出たYさんは、戻ってきてドアを開け、「今、この段差を降りるとき、めまいがしませんでした。今までなら、グラリときたのに!」と、すごくうれしそうに報告してくれました。
これで、治る可能性が出てきたので、私もホッとしました。ビジョンを持てずに治療するのはすごいストレスなのです。
あまりの美人が災いの元だった
よーく聞いてみると、実は、めまいは激突の直後に始まったものではなかったのです。
なんとも言えない頭重感があったので、近くの中国整体をやってくれる所へ行ったそうです。

「これはムチウチですね」と、院長先生が自ら、他の人の何倍もの時間、ものすごくていねいに、とても親切に治療してくれたそうです。
その日の夜から、激しい頭痛とめまいが始まったそうです。
たぶん、その先生は、彼女のあまりの美しさに目が眩んで、日頃のポリシーを忘れて、グギグギやり過ぎてしまったのでしょう。

「どのぐらい治ったかを確認するのに、院長先生と抱き合うのだけど、あまりにえんえんと続くので、おかしいな?などと思って、いけない、いけない、これでは逆セクハラだわ。私を治そうと一生懸命になってくれているのに、疑うのは失礼だわ、なーんて思ったんです」と、Yさんは言いました。

なるほど、2週目に診た人がムチウチと診断したのなら、それが原因かもしれないと思いました。とにかく、首以外はどこも悪くない人なのです。
以前から首肩こりがあったのか、それとも、めまいが起こってから首がこるようになったのかは、彼女にも私にも分かりません。
ムチウチの治療
ムチウチは、発症後すぐに鍼灸をすると、速やかに治ります。
整体や指圧などで物理的な圧力をかけると、ムチウチが悪化する可能性があるのでタブーです。

ハリや灸は、物理的に圧力をかけるのではなく、局所の歪みを、気の力を利用して取り除くことができるので、悪化させる心配がなく治療ができます。
(ただし、ツボを取るために首を押しすぎると、逆にムチウチを起こす元凶になってしまう危険があるので要注意です)

最初に鍼灸治療を受けていれば、めまいに襲われることもなく、簡単に治せたのにと残念です。
ムチウチの場合は、発症してすぐの「1日」は、1年後の「1ヶ月」、10年後の「1年」です。時間がたてばたつほど難物になります。

うちの長男がスノーボードでムチウチになったときも、うるさく言って治療に来させました。
首も動かせず、口をきくのも困難なほどのムチウチも、3回で治って、後遺症のかけらもありません。
スノボーでの転倒、バイクの事故など、他にも何十人も治療をしましたが、みなさん1回目でほぼOK、2、3回で完治しています。
<治療の詳細は→症例61「ムチウチ」をご覧ください>
気にならないぐらいになっためまい
Yさんの首のコリ、特に右の耳の下にある腫れたようなコリだけは、取っても取っても1週間たつと、また腫れた状態に戻ってしまいました。
深いハリも熱いお灸も怖がる人なのですが、そこだけには細いハリを深めに刺して、その後、透熱灸をしました。
他の場所より、少しだけ特別扱いにして、ドーゼを多くします。
そのバランスがポイントです。耳のつぼも使い、磁石で背骨の矯正をし、経絡の調整をしました。

8回目の治療後、3日間、治ったかと思うほど元気になりました。
気圧の急激な変化とともに、めまいが戻ってきてしまうこともありましたが、めまいは気にならないぐらいになりました。
その後は、元気に日常生活を送れるようになったとはいえ、多少のめまいはしばらく残ったそうです。
髄液が漏れて起こるめまいもある
Yさんの友人が、髄液が漏れて起こるめまいのことが新聞に出ていたと教えてくれたそうです。
それで私も、少しだけ調べて見ました。

ムチウチからも起こるそうです。治療法は大量の水分を取ること。最新の治療では、髄液の漏れている穴を手術で塞ぐのだそうです。

穴のあく原因の筆頭はなんと、髄液検査をするときに刺す注射のハリなのだそうです。
治療のためには、髄液を取って調べなければならないそうで、そのせいで、新たな穴があくことも考えられます。
症状(めまいの出方)はYさんとそっくりでした。

寝ているときにはめまいが起こらず、立ち上がると、重力の法則で髄液が下の方に降りる。髄液が不足しているので、本来、髄液の中にプカプカ浮いているべき脳みそが下に下がってしまう。
そのためにめまいが起こるのだそうです。

穴の場所は、脳の近くから腰椎の先っぽまでの間、どこにあるかは分かりません。
穴は自然に塞がるそうです。
鍼灸で自然治癒力が高まれば、穴も速く塞がるかもしれません。
Yさんは、手術は最後の手段にする、と言いました。
「いつもユラユラ」は治せなかった
2006年5月に来院したTさん(当時39歳)は、うなぎ屋さんで、趣味はサッカーとお酒という健全な男性で、自律神経失調症状はありませんでした。

13年前、26歳ではじめてめまいに襲われたとき、「あなたのめまいは不安から来ている」と医師に抗不安剤を処方されたそうです。
めまいのせいで不安になっているのに・・・と思いながら、薬を飲んでみたそうです。
飲んだらびっくり、不安がすーっと消えていったので、気味が悪くて薬は飲まないことにしたそうです。

激しいめまいは出なくなったのですが、いつも「ユラユラ」揺れているような感覚が10年以上つづいていました。
動作やストレスとの関連はなく、一日中でした。

Tさんは「もしかしたら肩こりと関係していつかもしれない」、そう思って来院したとのことでした。
首・肩こりなら治せるよ」と治療を開始しました。
でも、めまいの方は何をやっても、まったく変化がありませんでした。
軽くなるにしろ、悪化するにしろ、めまいが変化すれば治せる可能性があるのですが、お手上げでした。途中であきらめてしまいました。
10回治療して、首・肩こりが治ったところでいったん終了となりました。
ベンゾジアゼピン系抗不安剤でおこる運動失調
2003年8月、Sさん(当時72歳、女性)は、「頭がきつい」「首と肩がこる」という症状で来院しました。
孫悟空の頭の輪のように、ぐいぐいと頭が締め付けられるのだそうです。
医師に「頭皮収縮症」という病名をつけられ、「肩こりからきているのではないか」と言われての来院でした。

極度の心配性のSさんは、自律神経失調症もあり、緑内障もあり、あれこれ不定愁訴のデパートのようで、常時6種類以上の薬を飲んでいました。
週に1回の治療でしたが、良くなるというより「悪くならない」程度の効果しか出せず、いつも全身がバリバリにこっていました。

2005年10月にいきなりめまいが始まりました。
「じっとしているときは何ともなくて、気持ちがいいのに、動いたとたんにグラ~リとなる」のだそうです。

めまいで来院した患者さんを何人も治した私ですが、2年も治療をしているのにめまいが起こってしまうとは・・・と焦りまくって、あれこれやったのですが、めまいは治りませんでした。

数年後、うちの母を治療してはじめて、原因が判明しました。
2人ともデパス(ベンゾジアゼピン系の抗不安剤)を服用していたため、副作用として「運動失調」がおこったのです。
「頭がきつい」と「頭が岩になる」と、表現は違いますが、2人とも同じ副作用に悩んでいました。
デパスをやめてすぐに、母の「頭が岩」と運動失調は消えました。
<→「母のリハビリカルテ」で介護の詳細をお伝えます>
Updated: 2019/4/24 <初版 2004/7/20>