dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例35・肉離れ
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症例35・肉離れ
鍼灸による筋疲労の回復が治癒を早める
肉離れは器質的疾患
去年(2007年)の暮れ、中学生のバスケ部の男の子が二人、肉離れの治療にやってきました。
厳密に言えば、ふたりとも肉離れではありませんでした。
というのは、1回の治療ですっかり治ってしまったからでした。

肉離れは、筋断裂、つまり、筋肉を構成している、筋膜や筋繊維の一部が切れたりほつれたりすることです。
器質的疾患なので、どんなに鍼の腕がよくても、損傷した筋肉が元通りになって治癒するには、相応の時間がかかるからです。

肉離れも、捻挫などの他の運動器疾患と同じく、私の治療方針は、「筋力を落とさないこと」です。
治療をしながら、練習は休まずに続けてもらいます。
肉離れとは?
運動中にブチッと音がして、筋繊維が断裂します。
静かな場所だと、まわりの人に聞こえることもあります。
アキレス腱などの腱断裂と同じ現象が、筋肉で部分的に起こったもの、とお考えください。
音と同時に激しい痛みが走ります。

私は、高校時代、バスケの合宿の最終日に、はじめての肉離れを経験しました。
14年後、バドミントンの練習試合で、まったく同じところに肉離れをおこしました。

腿の前面にある大腿四頭筋という筋肉です。
ハンカチで太腿を縛って、なんとか最後までがんばりました。

じっとしていると痛くないのですが、(肉離れした筋肉を使って)動こうとすると激しく痛み、痛みで足が前に出ない、歩いている途中で立ちすくんでしまう、という具合でした。

3週間をすぎてやっと治ったあと、筋肉がすっかり落ちてしまっていて、フォームは崩れるし、捻挫はくり返すしで、ボロボロになりました。

骨は、骨折しても、完全に組織が元通りになります。
でも、筋肉は、いったん損傷を受けると、修復に時間がかかり、「瘢痕治癒」といって、傷跡を残してしまいます。
同じところを何度も断裂してしまうのはそのせいです。
極限まで疲労した筋肉が原因
打撲などの外因性の肉離れ、つまり、外部から大きな力がかかって筋繊維が断裂した場合は、わりと早く治ります。
筋肉がふつうに健康だからです。

でも、激しいスポーツや重労働のくり返しが原因で、肉離れを起こす場合は、なかなか治りません。
過労によって筋肉そのものが疲れきり、自らほつれてしまう、という状態だからです。

疲労を回復し、筋肉が健康を取り戻すまでは、なかなか修復作業にとりかかれないので、治っていくのに日にちがかかるのです。

完治まで3週間といわれている肉離れですが、鍼灸治療をすると、1・2週間で治ります。
鍼灸が肉離れの治療に有効なのは、筋疲労を回復させる効果が高いからです。
断裂の部位が触ってわかる
1998年5月に来院した、T君(当時21歳の大学3年生)は、ラグビーの練習中に、太ももの裏の筋肉に肉離れをおこしました。
整形に行って、筋膜の断裂だろうと言われたそうです。

試合を控えているので、少しでも早く治したいと、翌日やってきました。
歩くのもやっとの状況でした。

若い子の運動器疾患だと、経絡治療をしなくてもいい場合があります。
T君も、初回は、肉ばなれの部位だけを治療しました。

炎症を起こしているところを囲むようにして糸状灸をならべ、まず、腫れを取り除きました。
肉離れを起こして間もない時は、筋肉の断裂しているところがペコンとへこんでいるのを、皮膚の上から触診することができます。

右の大腿二頭筋にパルスをかけ、そのあとで、もう一度、糸状灸をし、損傷部位に皮内鍼(現在では金粒を使用)をしました。
筋力を維持して、フォームは崩さない
T君には翌日も来てもらいました。
初診時は、痛めた右だけを治療したのですが、右をかばって無理をした左足にも反応が出ていたので、両方の腿の裏にパルスをかけました。

2回目なので、灸点紙の上に透熱灸をしました。
痛めた直後で炎症が強いときには、糸状灸で冷やし、そのあとは、透熱灸で深部まで温める、というのが早く治すコツです。

次の日、「目いっぱいは無理だけど、軽くなら走れる」ようになったそうです。
練習を休んで安静にしてしまうと筋力が落ちてしまいます。
そうすると、バランスが崩れて、練習再開時に、また別のところを痛めたりする危険があります。

筋力のバランスの悪い状態で無理をすると、フォームを崩す心配があります。
本格的な練習は避けて、小走りで走る、などの用心してもらいました。
スムーズに完全復活
肉離れから4日後にラグビーの試合があったのですが、T君も参加し、8割の力で走れたそうです。

試合中に、相手チームの選手に首にぶつかられ、右の首と肩を痛めてしまいました。
その日から、経絡治療も加え、全身治療に切り替えました。

2週目から、週に2回の治療です。
右の大腿二頭筋は、「つっぱるけれど、かなりよくなった」そうです。
筋肉が盛り上がって、皮膚の上から触診できなくなりましたが、皮内鍼やお灸のあとが痛々しく残っているので、それが目印になりました。

6回目(18日目)の来院時に、ダッシュもできるようになったと報告を受けました。
肉離れは、約2週間で完治です。
筋力を維持したままだったので、何の支障もなく、そのままラグビー生活をつづけることができました。
中身が治ると、皮膚もきれいになる
T君の治療中に気づいたことです。
肉離れが完治する直前、右腿を見てビックリ! 
お灸の痕がすっかり消えて、目印がなくなっていたのです。

目の前に広がる、まっさらなきれいな皮膚に、一瞬、「ここはどこ?私は誰?」状態。
治療の目印がなくなって、迷子になったときのような気分を味わいました。

皮膚はある意味、体内を映す鏡でもあります。
内部の障害や病気が治ると、(私がするぐらいの、痕を残さないように用心した場合の)ハリや灸の痕跡が消失し、皮膚がすっかりきれいになってしまうのです。

運動器疾患だけでなく、内臓の病気の場合などにも見られる現象です。

<肉離れの症例参照ねんざ(足首)・3「短腓骨筋」 ねんざ・4「第三腓骨筋」ふくらはぎ(後脛骨筋)
Updated: 2008/5/28