dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例22・五十肩 2 (2003)
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症例22・五十肩 2 (2003)
老化現象をともなう肩関節周囲炎
五十肩の症状
五十肩といっても症状はさまざまです。
最初は「腕を上げるとき、なんかの拍子に肩が痛い」から始まります。
この段階では、ある角度で、ある位置で、腕を上げた場合にのみ痛みが起こり、痛みも軽度で腕も上げられます。

痛みで夜眠れない、あるいは明け方痛みで目が覚めてしまうという夜間痛が起こったり、起きているときでも断続的に痛みが続くようになると、患者さんの苦痛も相当なものになります。

関節可動域も極端に制限され、ちょっとでも腕を動かすと痛い、腕の重みでジンジン痛い状態になります。

もっとひどくなると、筋肉が石灰化して滑液包内に沈着し、激痛を起こすこともあります。

他の症状で治療に来ている人が、たまたま「肩も」という場合は、その段階で治療できるので悪化するのは避けられますが、五十肩を主訴で来院する人の場合は、治療する方もされる方もかなりのストレスに耐えなければなりません。
「五十肩」はニックネーム
肩関節はほとんど360度の可動域を持ちます。
小さなスペースに大小様々の筋肉が付着し、関節の中では最も複雑な動きができます。
しかも重いものを持ったり、自分の体重を支えることもでき、精巧で繊細、かつ力強い関節なのです。

その肩関節が、老化現象に伴う退行変性によって、痛みと可動域制限が起こる症状を「五十肩」と呼びます。
器質的疾患なので、完治には時間がかかります。

外傷などがきっかけとなり退行性変性が始まるのですが、原因は不明です。
女性に多いらしいです。
よく、患者さんが「四十肩」などと言いますが、正式な呼び名は「五十肩」です。
ニックネームのようなものです。

40代の五十肩はすぐ治るのですが、50代の五十肩はなかなか治りません。
それはまさに、加齢と密接な関係があることを言い表したドンピシャなニックネームだと感心したりします。
肩関節の複合的な障害
40代までは障害部位が単一の場合がほとんどです。
そこだけを治療すればいいので比較的簡単に治り、五十肩とはいえません。

五十肩というのは、さまざまの肩関節周囲炎、例えば「上腕二頭筋長頭腱炎」とか「腱板炎」とか「肩峰下滑液包炎」とか「三角筋下滑液包炎」とか「烏口突起炎」とか「石灰沈着性腱板炎」などが複合されたものなのです。

つまり、一ヶ所痛い場所があるとそこをかばって他の部分が無理をし、そこにも障害が起こってしまい、それをかばってまた他の場所も・・・という具合に、どんどん障害の部位が広がって、肩関節全体に波及します。

老化現象による組織の退行変性を伴っているので、肩関節の精巧さがあだになって他の部位に炎症が波及し、炎症を起こしては変性を起こし、の繰り返しになってしまうのです。

変形の全工程が終了し、不完全ながらある形に落ち着いて、炎症も痛みもなく動かせるようになると、一応「治った」という状態になります。

残念ながら、元通りのきれいな関節の形が戻ることはなく、変形したまま落ち着く、という状態です。
鍼灸治療
五十肩の治療は大変です。
あまりにつらそうな様子に気の毒になって、つい治療をやりすぎてしまうと、治る代わりに痛みが出てしまい逆効果になってしまいます。

昔はあせっていりいろやりすぎてしまい、患者さんに痛い思いをさせたのに、結局は時間がたたないと治らない事が分かったという失敗をしたことがあります。

深刺しやパルスは禁物。障害部位が多経絡にまたがっているので子午流注の反対側治療もできないし、テーピングだって貼り続けてはいられません。欲張らずに、浅い鍼とお灸だけで、ソフトな治療を貫くしかありません。

夜間痛は比較的簡単に2・3回の治療で治ります。
石灰沈着性
の痛みは手におえないかもしれません。
とにかく、1ヵ月後か半年後か1年後か、退行変性が落ち着くまでは完治はありません。

治るまでの間、肩が動かないまま固まってしまわないように、動かしつづけることが必要です。

鍼灸は夜間痛の軽減、肩の周りの筋肉の痛み、そこをかばって起こる身体のあちこちの痛み、全身の体調の改善には効果があります。
自分で毎日お灸をするなども効果的です。
せっかちでがんばり屋さんが多い?
本物の五十肩になる人は、とにかく我慢強すぎる人が多いようです。
我慢が美徳、と考えているのでは?右が治ったら今度は左、と両肩がなる人も多いですし。

五十肩になる人は腱鞘炎ともお友達の人も多いです。
厳密な意味での腱鞘炎(腱鞘の炎症)ではなく、一般的に言われている広い意味での腱鞘炎ですけど。

患者さんには、「五十肩のことはとりあえず忘れて、肩こりとか健康管理のために治療に来てると思ってください」とお願いしています。
五十肩にこだわると、それ自体が本人にとっても治療者にとってもストレスになってしまうからです。
治癒をあせらず気長に構えるしかありません。

五十肩の人はせっかちで、とにかく早く結果が欲しいという性格の人が多いようです。
大抵の人は、あちこちの治療を渡り歩き、いろいろな治療をやってみて、でもすぐにあきらめてしまう。結局じっと家で痛みに耐える、というパターンらしいです。
でも、経験者によれば、そのうち、いつか、突然に治るそうです。

「なんかの拍子にぎくっとくる」程度で治療する人は五十肩性格ではないと思います。
痛みの程度は軽く、悪化もしないのですが、症状が完全に取れるのには半年から1年くらいはかかるようです。
50代を過ぎたら「五十肩」の可能性を考える
Rさん(当時50歳、女性)は、2006年3月、テニスのサーブ練習のやりすぎで、右肩をいためました。
10年以上もずっと治療をしている人なので、「今度は肩か!」という調子で、いつも通り、筋肉にブスブス鍼を刺して、若者向けの運動障害の治療をしました。

すると、ズシ~ンと嫌~な痛みが走り、そのあとは、じっとしててもジンジン痛い、という状態になりました。
ハードな鍼で逆に痛みが出たのです。

彼女が50歳になったことは知っていたのですが、若々しく元気いっぱいの人なので、「もう五十肩になるトシである」ことに気がつかなかったのです。
それからは、五十肩向けの治療に切りかえ、浅い鍼とお灸で気長に治療をすることになりました。
筋肉障害か関節障害かの見極めは?
50歳以上だから、必ず五十肩、とは限りません。
筋肉障害の場合は、痛めた筋肉に深い鍼を刺すほうが即効性があります。

単なる筋肉の痛みなのか、関節を壊したのか、どっちなのかは、治療してみないとわかりません。
治療してみての治り具合で判断します。

とはいえ、60代をすぎると、いったん悪くなったら、治るのに2・3ヶ月かかる場合が多いので、微妙な判定になりますが。

リスクの話などして、「どうする?若者向けの治療を試してみる?」と聞きながら、治療の方針を決めます。

スポーツなどしている人はたいてい、痛みが出るリスクを覚悟で、深い鍼を打って、少しでも早く治したい。
やってみてだめそうなら、気長に五十肩の治療をする。そう望む人が多いです。
自分でもお灸をしてもらう
Rさんには、週に1回の来院のほか、自分で毎日カマヤミニをしてもらいました。

五十肩の一番つらい症状は、安静時痛と夜間痛です。
はじめのうちは、日に何度もお灸をしたそうです。
「痛いな」と思ったらすぐにお灸。夜寝る前にお灸して、目が覚めたらすぐお灸。
がんばったおかげで、1週間で安静時痛がなくなりました。

痛みが和らぐにつれ、お灸の回数も減っていきます。テニススクールは1回だけお休みました。
テニスの前と後のお灸は、数ヶ月つづけたそうです。

テニスのときは用心にキネシオでテーピングをしました。
三角筋の前方と後方に1本ずつが基本で、状況に応じて追加のテープを貼ります。
筋力を維持するために、テニスでもなんでも、やりながら治すのがおすすめです。
関節と筋肉の両方にお灸をする
「どこにお灸をしたらいいの?」と、患者さんに聞かれます。

「痛い格好をしてそこにお灸をする」というのが効果的なのですが、肩の場合は、腕を上げると三角筋が盛りあがってしまい、お灸の熱が届きません。
腕をおろした状態で、肩関節にお灸をするといいでしょう。

関節のどこかに不具合が出ると、筋肉たちはそこを守ろうとします。
そこにつながる筋肉が過緊張し、筋肉にも痛みが出ます。

無理をした筋肉は、硬くなって縮み、関節を引っぱります。
するとまた、関節が痛みます。そのせいで筋肉にまた痛みがでる、という悪循環がおこります。

悪いのが関節なのか筋肉なのか、分からなくなってしまい、混乱してしまう人が多いのですが、関節と筋肉の両方にお灸をしましょう。
筋肉をほぐすと、関節への圧が弱まり、痛みが和らぎます。
自己治療へのアドバイスは?
治療院に通って、プロの助けを借りながら治療をする場合は問題ないのですが、自分で治療する場合は、いくつかの注意すべきポイントがあります。

1番目のポイントは、可動域の制限をおこさないように気をつけることです。
ちゃんと可動域が保たれているか、1日に何回かでいいですので、肩を動かしてみましょう。
いい方の腕と比べ、同じように動くかを毎日確認しましょう。

2番目のポイントは、腕、首、肩、肩甲骨、胸、脇の下などについている、肩につながっている筋肉たちをフォローすることです。
障害のある部位をかばって、あちこちが硬くなっています。痛みが出ることがあるので、お灸やマッサージでほぐしましょう。

3番目のポイントは、痛めた肩とは無関係に思える、他のあらゆる筋肉にも、時に応じてお灸をすることです。
右をかばったために左腕が、ということもあります。体のあちこちに気を配ってあげましょう。
3ページ目へつづく
Updated: 2003/8/20~2010/12/6