dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例22・五十肩 3 (2010)
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症例22・五十肩 3 (2010)
可動域の維持が重要
『単純』五十肩
痛めてすぐから、きちんと治療をつづけたRさんは、テニスをやりながらも、「ほとんど治っている」状態がつづいています。
上腕二頭筋の付け根あたりを壊したらしいのですが、痛めたのは1ヶ所だけですみ、可動域制限もありませんでした。

その後、半年ぐらいは、ときたま「何かの拍子にギクッとくる」という状態がつづきました。
ギクッとくるだけで、痛みは伴いません。

現在も支障はありませんが、加齢に伴う器質的疾患なので、「完治」ということはないのかもしれないな、と思います。
関節の一部が壊れている、でも、使えるし痛みもない。
老化を受け入れ、順応し、「使える身体でいる」ことが肝心です。
『複雑』五十肩
英語では五十肩のことを frozen shorder (凍りついた肩)といいます。
肩を痛めてすぐに治療をしないで、我慢に我慢を重ねていると、痛めた箇所をかばおうとして、肩関節全体に障害が波及します。

「なんとか動かせるけど、ある動作ができない」うちはまだしも、「まったく動かせなくなる」という状態になってしまいます。

そうなると、もう『複雑』五十肩、つまり、フローズン・ショルダーになってしまうのです。
安静時痛、動作痛のほか、可動域も極端に制限されます。

『単純』五十肩のうちに治療をすれば、痛みもなく、普通に動かせます。
どっちにしても、治るのに半年以上はかかるのですが、本人の生活にはおおいに違いが出ます。
素早くきちんと治療をしましょう。
両肩の五十肩
『複雑』五十肩(frozen shorder=凍りついた肩)が主訴で来院した患者さんの症例をいくつか紹介します。

2007年8月に来院したUさん(当時75歳、女性)は、3年半前に右の五十肩になり、ついで左も五十肩になりました。

来院時の問診では、「買い物、包丁、ハサミ、着装、干し物、体操、歯磨き、方向転換などが困難」とので、安静時痛、夜間痛のほか、あらゆる動作に支障をきたしていました。

70代で治療をはじめた人はとても治りにくいので、私も困ってしまって、「治るのに半年ぐらいかかるかもしれませんよ」と、おそるおそる言いました。

Uさんは、「え、半年で治ったら嬉しいです。3年間、8ヶ所もの病院に通ったのに、どんどん悪くなっていったんですもの」と言ってくれ、ちょっとホッとしました。

五十肩の治療には根気がいるので、患者さんとの合意はとても重要です。
予想より早く治った
Uさんは、深い鍼が苦手なので、すべて浅い鍼。それにお灸とかるいマッサージで治療しました。
年齢もいっていましたし、長い患いだったので、はじめは、「痛みは少しマシ」と「少し揉み返し」が同時進行でした。

肩の周囲の筋肉をもみほぐすと、その場では楽になっても、翌日の揉み返しがつらいらしいのです。
ほんとうにソフトな治療しかできませんでした。自分でするのは怖いからと、自宅でのお灸はやりませんでした。

週に1・2回の治療で、7回目、約1ヶ月後に「肩、大分軽い」となり、10回目で、右肩がほとんど苦にならなくなりました。

Uさんは、痛みが軽くなるとどんどん動く人でした。
だんなさんの看病をしながら、あちこち出かけるようになりました。

「治療に来ている間は、痛みがでてもすぐに対応できるから、調子に乗ってどんどん動いてくださいね」と言うと、にっこり笑顔になりました。

3ヶ月後、15回目のときに、「両肩が動かせるようになった」と嬉しい報告をいただきました。
意外に治りが早くて驚きました。
逆に痛みが出た人
次の患者さん、2008年10月に来院したNさん(当時66歳、女性)も、両肩五十肩でした。
3・4ヶ月前に風邪をこじらせてスポーツジムをやめてから腰痛になり、そのあと、両肩が相次いで動かせなくなったそうです。

Nさんは独身で1人暮らし。
リタイアした後、週に3回の仕事のほかは、できないことはしなくともすむ環境でした。
腕は動かせないけれど、肩の痛みは全くなく、背中の痛みと肩こりがつらい、とのことでした。

Nさんも怖がりだったので、浅い鍼とお灸のみの治療でした。
自宅でのカマヤミニをすすめたのですが、ほとんどやらなかったそうです。

「可動域が広がるように、毎日腕を動かすように」とアドバイスしたところ、それまでなかった安静時痛と夜間痛がはじまり、かえって痛みが出てしまいました。

結局、五十肩が治ってから、肩こりの治療に来るという、妙なことになってしまいました。
またまた両肩五十肩
3人目の患者さん、Kさん(当時64歳、女性)は、両肩五十肩と、両ひざの痛み(変形性膝関節症)で来院しました。

「治せます?」と聞かれて、膝はともかく、五十肩に関しては、UさんとNさんの例をあげて、やってみないとわからないという話をしました。

右肩の五十肩は2年前からで、その頃、左も痛みだしたそうです。首・肩こりもそうとうひどく、全身カチカチでした。
五十肩以外のところには、深い鍼もバシバシ打ち、指圧も強め。
自宅でのカマヤミニをとても熱心にやりました。

初回の治療で、夜間痛が消え、1ヶ月後にはかなり動かせるようになりました。
でも、愛犬の入院、ついで、だんなさんの入院と、忙しい日がつづき、また少し動作痛がでるようになりました。

「なんかの拍子にギクッときて、(痛みが)ジーンとしばらくつづく」ようになったそうです。
治療にもたまにしか来れなくなりました。

痛みが全くなくなったのは、治療を開始してから、10ヶ月後でした。
その頃には、両膝の痛みもなくなっていたそうです。
じっと動かさずにいれば、いつかは治る?
治った人と治らなかった人との違いはなんでしょう?
とりあえず、ライフスタイルとは、おおいに関係がありそうですね。

Nさんは1人暮らしなので、痛ければ動かさずにすみました。
動かさなければ動作痛もおこらないし、安静時痛などもありませんでした。

ある患者さんの体験です。
「自分が五十肩になったときに、医者のアドバイスは一切聞かず、誰になんと言われようと、一切動かさないようにしていたのよね。そしたら、半年で治ったわよ。ある日突然、動かせるようになるのよね」

彼女は、ものすごく活動的なスーパー専業主婦です。
年齢が若かった(50代の頃)こと、片側だけですんだことなどが幸いしていたのでしょう。
「ある日、突然、治る」という巷の噂は本当のようですね。
使える身体を維持する
UさんとKさんは、専業主婦の鏡のような人たちで、そのうえ、だんなさんの介護もしていました。
痛くてもなんでも、どうしても動かさざるをえません。
二人とも、鍼灸をはじめてから快方に向かいだしたのですが、よく動いたから、よく治ったのだと思います。

鍼灸は、気を動かし、自然治癒力を促し、治る方向に導くことができますが、患者さん自身が、どんどん動いて血流をよくする必要があります。

「いつ、どの時点」を「治った」とするか?という問題もあります。
前述のRさんは、痛めてすぐから治療をはじめたので、テニスもつづけることができました。

「痛みもなく、使えていた」という意味では、1週間で治ったわけです。
「ギクッがなくなった時点」なら、半年後です。
でも、たぶん、関節の一部はほころびたままなので、「一生治らない」とも言えます。

私としては、使える身体を維持するお手伝いをするのが、鍼灸の仕事と思っています。
どういう風に病気や老化とつきあっていくか、みなさんそれぞれ、いろいろ考えてみてください。
Updated: 2010/12/8