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患者さんの身体なら、見て、触って、筋肉の状態を確かめながら治療をする。
自分でやるときは、筋肉の地図をもとに鍼を打つので、マニュアル治療になってしまう。その落とし穴にハマっていたのだった。
2年前のシングルスの試合のあとでは、太ももの両サイドの筋肉(■)がガチンガチンに硬直した。 |
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ダブルスと違って、右へ、左へ、コートの端から端まで走るので、サイドの筋肉に過負荷がかかる。
右の内転筋がとくに激しく硬直して、付着部である鵞足(■)を引っぱって壊してしまった。
<詳細は→症例33「ひざ痛 new1」にあるよ>
今回は両サイドの筋肉(■)はきっちりほぐしてあったので、そこには何の問題も起こらなかった。
ラウンドロビンの1ゲーム目に右膝裏(■)に不安感があったので、両サイドにテーピングをした。
(ぎっくり腰のあと、1カ月ぶりにテニスを再開した日にやったテーピングと同じ部位である) |
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シングルス5試合、ダブルス1試合、そのまま猛ダッシュでテニスをして、その日は持ちこたえてくれた。
右膝全体がパンパンに腫れて、痛みが出たのは翌朝だった。
ぎっくり腰の間、足にそうとうな過負荷がかかっていた。必死で治療をしたんだけど、足の裏側には手が届きにくい。 |
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耳なし芳一の「耳」を発見したのは、左足に鍼を打っているときだった。 左膝裏のちょっと上、真ん中あたり(■)を押したら妙な不安感があって、鍼を打ったらズシンと響いた。 |
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『あれあれ、何筋だろう?』と不思議に思いながら、右足の裏を探ったら、太い筋肉の裏側に、ちんまり無言の筋肉を発見した。
ハムストリングスの中央から、膝下のふくらはぎの中央、そのライン(●)が盲点だったのだ。
大腿後面の筋肉を紹介しよう。膝の内側で鵞足をつくる筋肉は、縫工筋(■)、薄筋(■)、半腱様筋(■)である。
半腱様筋(■)は、半膜様筋(■)と大腿二頭筋(■)とともにハムストリングスを形成している。 |
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大腿後面の筋肉 |
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鵞足を作る内転筋
ハムストリングス
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筋肉の図を参考に、大きな筋肉だけを治療していたので、半膜様筋(■)だけが忘れ去られていたのだった。 |
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■半膜様筋 |
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ふくらはぎも、筋肉の図を参考に鍼を打った。
2年前に足指につながる深層の筋肉にてこずったので、徹底的に鍼を打った・・・つもりだった。 |
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下腿後面の筋肉 |
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■腓腹筋 |
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膝上の筋肉と交差している腓腹筋(■)の内側頭と外側頭に注目していたので、中央のラインの治療を取り残してしまった。
もうひとつ、見逃していた筋肉があった。 |
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大腿前面の筋肉 |
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大腿四頭筋
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外側広筋 |
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大腿直筋 |
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中間広筋 |
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内側広筋 |
鵞足の筋
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縫工筋(■)は鵞足を形成する筋肉のひとつである。昔の仕立て屋さんが膝の上で縫物をしたのが名前の由来の、長~い筋肉である。
大腿四頭筋は太ももを上げて走るときに使う。大腿直筋(■)は中央にある最も強力な筋肉である。 |
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■縫工筋 |
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■大腿直筋 |
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横向きになって自分で鍼を打つときに、骨盤の付着部(○)がよくつりそうになった。
てっきり大腿直筋(■)と思い込んでいたのだけど、縫工筋(■)の付け根もその近辺なのである。
リョコちゃんストレッチで一番辛かったのが割座(#23)だった。とても痛くて窮屈なのが不思議でならなかった。
今回の膝内側の圧痛点は膝蓋骨寄りにあった。もうひとつの盲点は縫工筋(■)だったのである。 |
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■縫工筋 |
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半膜様筋(■)と縫工筋(■)を中心に治療をつづけていたら、日に日にマシになっていって、1週間で右膝の腫れが引いた。
まだ鵞足には軽い痛み、膝裏には冷えがあるけどね。。。
来週はシングルスの公式戦なので、とりあえずテニスを休んで、治療室の掃除に取り組んでいる。
マニュアル治療はほんとうに恐ろしい。
患者さんにお灸をすすめると、「ツボに印をつけてほしい」と言われるのだけど、絶対に教えないできた。その方針を貫いて来てほんとうに良かった。
マークがあると幻惑されてしまう。自分の目と触覚で、誰でもツボを取れるようになる。うちには「ツボ取り名人」の患者さんがたくさんいるんだよ。 |
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