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みづ鍼灸室 by 未津良子(FAQ よくある質問) |
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Q12 石灰化の対策と治療法
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ステロイド注射の効果は? |
現在アメリカ在住で、1999年のグァテマラ旅行中に、私が頚椎症の治療をしたAさんは、2004年、肩の筋肉にカルシウムの塊が見つかりました。
Aさんはコーチゾンショット(ステロイドホルモンの注射)を受けたそうです。
ただし、コーチゾンショットには、カルシウムの塊を消し去る効果はないそうです。
1年に1度しか受けられない劇薬で、続けると骨がボロボロになるそうです。
医師には、そのまま治る人もいれば、再発する人もいると言われたそうですが、そのときには効果がなく、痛みは居座ったままでした。
翌年、2度目のコーチゾンショットを受けました。
長年の痺れと痛みと不快感が消え、すごく楽になったそうですが、その効果は2ヶ月しかつづきませんでした。
Aさんはメールで、「頚椎が2ヶ所つぶれているのは確かだけれど、自分としては、肩の筋肉のカルシウムの塊が、長年の痺れや痛みや不快感の原因だったように思える」と知らせてくれました。
「仕事を減らして乗り切った」とのことでしたが、その後近くで鍼師を見つけたそうです。 |
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ステロイドが効く病には、鍼灸治療が効く |
ステロイド(副腎皮質)ホルモンには、炎症を抑える働きがあります。その作用は劇的ですが、激しい副作用があります。
アトピー性皮膚炎にステロイド軟膏を塗ったために、ステロイド性皮膚炎を発症した患者さんが何人もいますが、治せるのかどうか?現在も試行錯誤中です。
ホルモン治療で効果がある病気は、鍼灸治療で効果があります。
アトピー、関節リウマチ、子宮筋腫など、通常、ホルモン剤を処方される病気に鍼灸は効果的です。
効果はマイルドですが、副作用がありません。
多発性硬化症(MS)の患者さんの治療をしたことがあります。
発症の急性期にステロイドの点滴の大量療法を受けました。神経はいったん変性を起こしたら、もう2度ともとには戻りません。
点滴で大量投与すると、ぜんぶ体外に放出されるそうなので、錠剤と比べると、ほとんど副作用がないそうです。
再発予防には鍼灸治療を選びました。翌年、激しいストレスを浴びた後、レントゲンで視神経の異常が発見されました。
でも、鍼を打ってから再検査をしたら、異常がなくなっていて、お医者さんが首をかしげたそうです。
その後、10年以上経過しましたが、MSはいまだに再発はしていません。 |
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鍼灸治療で石灰化の予防はできる |
筋肉の石灰化の原因が血行不良であると仮定した場合、まず、予防策としての鍼灸治療の効果が期待できます。
筋肉は多かれ少なかれ、常に緊張を強いられています。
収縮すれば老廃物質が出て、硬くなって縮んでいきます。内部を通る血管が圧迫され、血液がうっ滞します。古い血が溜まると、新鮮な血液が入って来れなくなります。
筋肉が硬くなる→血が滞る→筋肉がますます硬くなる、そういう悪循環にはまってしまうのです。
鍼灸治療は硬直した筋肉をほぐせるので、つねにメンテナンスをしておけば、柔軟な筋肉を維持できます。
石灰化の心配はほぼゼロになると思います。 |
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動かすことも予防になる |
運動の効果も大きいです。
筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、血流が促されるという「筋ポンプ作用」があるので、動く人ほどよく治ります。
痛みで動かせなくなるということは、運動による血流改善が望めないということなので、状況はかなり悪化します。
ぎっくり腰などの機能的疾患が、痛み止めで治る場合があるのは、痛みがなくなることで動けるので、血の巡りが改善されて治癒に向かう、という効果です。
ただ、「痛い」というのは、「用心しろ」という身体のメッセージでもあるので、それを無視することで、悪化するという危険性もあります。
食事療法(肉食を減らし、野菜をたくさん食べるように患者さんに勧めています)も、精神的な安心感も、リラックスすることも効果的なようです。
温泉では「治療」はできませんが、その日の疲れを癒してくれる効果はあります。 |
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カルシウムの発見は難しい |
Aさんが、頚椎症の発症から6年目でカルシウムの塊が見つかったときは、あちこち角度を変えて、10枚以上のレントゲンを撮ったそうです。
患者さんの中には、「レントゲンを撮ったけど、カルシウムのことは言われなかった」と言う人がいます。
でも、骨もカルシウムなので、後に骨があったら見えません。
筋肉の塊のすべてが「骨」になっている例はわずかです。
鍼灸で筋肉のこりを治療するのですが、一気にすべてをほぐすことはできません。
長年にわたってこり固まった筋肉だと、「チーズケーキをフォークで掻き取る」ように、少しずつ少しずつしかほぐせないこともあります。
スミからスミまでほぐしきれないとき、あるいは、何ヶ月もかかってほぐし切ったと思ったら、そこを基点にまた筋肉が固まっていく・・・そんなときは、筋繊維の骨化を疑います。
筋繊維が1本でも骨化すると、共同で収縮をしている他の筋繊維が自由に動けません。なので、そこからまた固まっていってしまうのです。
骨化した筋繊維は、炭鉱に持ち込む「カナリア」です。そういう人は「一病息災」と割り切りって、日ごろのメンテナンスを心がけましょう。 |
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症状の改善は可能 |
筋肉や靭帯が石灰化してしまったら、どういう治療法があるでしょう。
まれには、自然に消えることもあるらしいですが、消えることはない、と思っていいでしょう。
「カルシウムの塊がある」のだから、器質的疾患に分類されるのでしょうか?
後縦靭帯骨化症や脊椎管狭窄症も、たとえ、鍼灸で、痛みや機能障害が改善されても、器質的に治るわけではないそうです。
また、手術によって、器質的障害を取り除いても、症状が消えずに苦しんでいる人もいます。
神経の圧迫や障害が短期間なら、完全回復もありえるのですが、長期間、病んだ状態にあった神経は、完全復活することはないかもしれません。
握力の低下や、複雑な動作ができない、などの機能障害が、半永久的に残る可能性もあります。
ただ、今までの私の鍼灸の臨床経験では、筋肉の石灰化でも、神経の障害でも、不具合のほとんどが改善されています。
100%は難しいですが、7・8割程度の改善は可能です。 |
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日ごろのメンテナンスが大切 |
うちの患者さんの来院パターンは2種類あります。
いい状態を維持することを目的に、定期的に身体のメンテナンスをしている人たちがいます。「患者」というより、普通の「元気な」人たちです。
気血の流れを促して、あちこちちょこちょこ不具合を調整して、体の隅々まで掃除をしています。
家の掃除だって、ため込むと大掃除になります。家だって車だって、ノーメンテで放っておけば、経年劣化して修復不可能になったりします。
具合の悪いときだけ治療に来る人もいます。
長年の患者さんは、自分なりの要治療のサインを見つけています。「指先に痺れが」とか「筋肉がつる」とかのタイミングです。
早ければ早いほど、早く治ると知っているからです。
いったんひどい症状がバクハツすると、治まるまでが大変です。
トラックの荷台の荷物が、崩れかかったときにロープをかけ直せば簡単だけど、崩れ落ちてしまったら、また積み直すのに時間がかかるのと同じ原理です。
我慢に我慢を重ねて病状が極まった人は、それなりの年月が必要と覚悟をしてください。
鍼灸治療は「神業」ではないのです。 |
筋肉の石灰化の原因は? 参照 |
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