dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(FAQ よくある質問
Q27 50代からの鍼灸治療
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Q27 50代からの鍼灸治療
年齢と治療効果はほぼ比例する
駆け出しのころは鍼灸は万能と信じ、「1回で治す」ことにのめりこんでいたのですが、「そうもいかない」こともあるという現実を知ることになりました。
発症からの時間経過、病の深さなどによっては、完治まで数ヶ月を要する場合もあります。
とくに年齢による差は歴然です。同じ症状なら、30代・40代で1回で治るものは、50代になると3回、60代になると3ヶ月、70代なら3年?と、あらかじめ予告するほど、年齢と治り方はほぼ比例します。

でも運動をしている人は10歳は若い。バドミントン時代の先輩やテニスクラブの人たちが、10歳分早く治ることに驚かされました。ストレッチをして身体が柔軟な人たちは、気の通りが良くて10歳分早く治ります。
鍼灸治療でメンテナンスすると10歳は若返るので、全部やったら30歳・・・というのはちょっと大げさかもしれませんが、そのぐらい、日頃の努力とライフスタイルで身体年齢に差が出るのです。
老化は「下りエスカレーター」
老化は誰にでもやって来ます。誕生したあと、上りエスカレーターに乗って、どんどん成長していきます。思春期を過ぎるとやや平行線、そしていつの間にかエスカレーターが「下り」になっていたことに気づきはじめます。
身体の老化を心底実感するのは50代からです。下りエスカレーターを歩いて昇っているようなもので、歩いても歩いてもだんだん下って行くのです。

そこであきらめて、「年だから」と守りに入り、周囲の助けを借りる人生を選ぶ人もいます。でも私のようにあきらめきれない人、「年に負けずに」いつまでもアクティブに暮らしたいとがんばる人もいます。

年齢が進むにつれて老化のスピードは速くなっていきますが、下らないようなスピードで歩ければ「今を維持する」ことができます。より速く歩ければ「向上する」ことができます。それを助けるのが鍼灸治療です。
経年劣化で付着部が脆くなる
筋肉は骨と骨をつなぎ、縮むことで関節を動かします。筋肉の付着部は「腱」になって骨に張りついています。筋肉が収縮するたびに、支えている腱に負荷がかかるのです。
筋肉が柔軟で弾力があれば、腱への負荷が少なくてすみますが、硬直していると棒のようになって腱を強く引っぱります。筋肉が縮んでしまうと、常時圧がかかることになります。

腱の付着部にピンポイントで痛みを感じたら、腱に障害が及んでいるというサインです。治療に時間がかかることを覚悟しなければなりません。
<腱の障害が出やすい部位>
腱板(棘上筋)
烏口突起周辺
骨盤 上前腸骨棘
骨盤上方、股関節
坐骨結節
鼠径部(股関節前方)
膝関節
足首 外果、内果、アキレス腱
脊柱 頸椎、胸椎、腰椎、仙骨
つながる筋肉の硬直をほぐして治療をします。腱には血管がないので再生しにくい組織ですが、筋肉には血管が通っているのでほぐすのは簡単です。

若い人でも筋肉の硬直が激しいとアキレス腱や腱板の断裂を起こしたりしますが、加齢とともに腱が経年劣化していくのは避けられません。
新しいゴムには伸縮性がありますが、古くなると硬くなっていき、そして脆くなっていきます。

筋肉を柔軟に保てば、付着部への圧を減らすことができ、劣化の進行を遅らせることができるはず・・・と信じてがんばっています。
鍛えれば鍛えるほど付着部は骨とともに盛り上がり、頑丈になっていきます。痛みがあれば「変形」と言われますが、痛みがなければ「発達」です。
自分の目的に見合う身体をつくり、なんとか維持したいと願っている私です。
50代は治療した分しか治らない
若い人は「気」が大河のように流れ、エネルギーがあふれています。筋肉も組織も柔軟です。患部を治すのは「血」です。気の流れが血流を促すので、ちょっとした治療でも不具合を一掃してくれます。

年を取れば取るほど、「気」の量が減っていき、チョロチョロ流れる小川のようになっていきます。劣化してゆく腱を支えようと筋肉が緊張して硬直していきます。一気に治そうとしても、思うように治癒に向かっていってくれません。

鍼灸は「どうやったら治るか」を身体に教えるコーチです。40代までは覚えが速くて、ある程度治すと、残りは自然治癒力で自力で治っていきます。

でも50代になると、治療した分しか治りません。
ある程度良くなって、「このまま治るかな?」と様子を見ていてもダメなのです。不具合を残したままだと、共同運動をしている筋肉たちに過負荷がかかり、そこからまたあらたな障害へと波及していきます。
患部の違和感がなくなるまで治療するほうが結果的に早道なのです。
「老化」をひしひしと実感する
私は50歳になってすぐに「五十肩」に見舞われました。
「五十肩」は「老化現象を伴う肩関節周囲炎」につけられたニックネームのようなものです。49歳だとすぐに治るのに、50歳だと手こずってしまうという、まさにドンピシャな命名です。
老化のため組織の変性を起こしやすくなり、治りが遅いため、ひとつの不具合が肩関節全体に波及してこじらせてしまう可能性が大なのです。

五十肩をひきずりながら、次から次へといろんな筋肉や関節が日替わりで悲鳴を上げました。
ガングリオンができたり、テニス肘手首痛になったり、古傷の捻挫が痛んだり、走りすぎて太ももを壊したりと、とにかく50代になってから「どこも悪くない日は1日もない」という状態になりました。

50代からメンテナンスに通うようになる患者さんはたくさんいます。頚椎症で来院した患者さんが、そのあと首肩こり腰痛などに順繰りに悩まされ、「まるでモグラ叩きゲームのようだね」と言ったのですが、言い得て妙です。
60代は老化が骨格を変えていく過渡期
それでも50代はまだ若い。ウェスト周りは別として、遠目で見れば若い人と区別がつきません。テニスクラブは高齢化しているので、50代はまるで若者のように見えますし、実際に若者とほとんど変わらずに動くことができます。

50代と70代の中間に位置するのが60代です。
たいていの70代は、遠目で見ても「お年寄り」です。骨格を形作っているのは筋肉です。筋肉によって「強さ」が異なるので、年齢とともにみなさんが似たような骨格になっていきます。

首も縮み、肩も縮んで固まります。背中が曲がって猫背になります。腰椎が縮んで仙骨が外側にでっぱり、お尻を突き出した形(=腰が曲がる)になります。
だんだんガニ股になっていきます。股関節が固まって可動域が狭くなり、足が前に出にくくなります。
上肢は屈筋優位なので肘が曲がっていきます。下肢は伸筋優位なので膝が曲がっていきます。
肋間筋が縮んで胸郭が狭くなり肺活量が減っていきます。
放っておけば身長もどんどん縮んでいきます。

つまり60代の10年間は、骨格や体形の変化が徐々に進行していき、老人体形に向かっていく過渡期なのです。
神経が鈍感になっていく
50代でメンテナンスをしていても、60代になると来なくなる患者さんがいます。
「あれだけ悩まされた首・肩こりがなくなった」とか、「腰の痛みがぜんぜんなくなった」と報告してくれるのですが・・・、実態は違います。
数年後に現れたときには、一気に老化が進んでいます。筋肉が縮んで硬直し、骨に張りついて癒着して、あちこちに歪みが出ています。

本人の自覚症状と身体の状態がかけ離れていくのには理由があります。
神経には「閾値」があって、一定レベル以下の刺激を受け付けないという性質があります。「痛み」が長引くと閾値が上がっていき、小さな痛みを拾えなくなるのです。
身体に不具合があると、故障部位を守るためにギプスのように固めてしまいます。固まると神経が眠ってしまい、「痛み」を感じ取れなくなります。
老化に向かって骨格が変化していく過程で、「痛み」で苦しまなくてすむように、神様が「心」を守ってくれるのだなと思います。
どこかしらが痛いことが「正常」の証
治療は閾値とのシーソーゲームになります。治っていくにつれ閾値が下がっていくと、それまでなかった「痛み」を感じるようになります。
神経がもとどおりに敏感になって、それでも「痛み」がなくなってやっと完治するのです。

60代になったら、どこかしらが「痛い」のが正常な状態で、神経が敏感さを保っているという健康体の証なのです。それは私が日々実感していることです。「どこも痛くない。今が絶好調」と喜んだ直後に、何度もぎっくり腰を経験しています。毎日どこかしらが痛いと、逆に安心するようになりました。

50代は「モグラたたきゲーム」ですが、60代になると「輪唱」になります。ひとつの不具合が治りきらないうちに、次の不具合がはじまります。
痛みが起こる前に治療するのがベストですが、あっちやこっちの痛みを追いかけて消火作業をするしかない・・・というのが現実かもしれません。
身体がだんだん「木」になっていく
50代から毎週治療していた患者さんがいました。首肩こり腰痛などのメインの治療以外に(手の甲など)いろんな部位に不具合が起こりましたが、ついでの治療でその場で治ってくれました。
ところが60代になったら、小さな不具合が長引くようになってしまいました。

私は55歳からストレッチをはじめたのですが、50代のときは30分ぐらいですみました。時間のないときは5分とか10分とかで簡単に終わらせることもできました。
でも60代になったら1時間はかかるようになりました。一気に曲げていくと体のあちこちがバキッと壊れそうになるのです。なるほど、だんだん身体が「木」に近づいているのだな・・・と実感しました。

晩年のお釈迦様が自分の身体のことを「壊れた荷車を縄で結わいてやっと動かしているようなもの」と言ったという話を聞いたことがあります。
身体が硬直していき、筋肉が「肉」から「木」に変化していきます。筋肉や関節の痛みだけでなく、「つり」やすくなったら要治療のサインです。
努力と身体年齢は比例する
手こずるとはいえ、それでも60代はまだなんとか「完治」が望めます。
どこまで治したいか?患者さんと話し合うのですが、無理なくゆっくり治していきたい人もいます。
「完治」を目指す人には深い痛みを掘り起こして治療をします。それには本人の努力が不可欠です。

開業してすぐから、60代前半と後半のご夫婦のメンテナンスをするようになりました。1年、3年、10年と治療をつづけていくにつれ、二人ともちょっとずつちょっとずつ若返っていきました。
(お二人を治療して、自分もずっと鍼灸治療をしてもらおうと固く決心したのでした)

二人共若い頃から鍼やマッサージを受けていました。おまけにちっともじっとしていません。毎日複数の場所に出かけていって、さまざまな活動にいそしんでいました。ヨガの先生である娘さんの生徒でもあったので、身体も驚くほど柔軟で、70代になっても50代の身体を維持できました。

60代になると(とくに後半になればなるほど)、努力している人しか元気でいられません。日々の努力と身体年齢は比例します。毎日の小さな努力が積み重なって、10年後20年後にとても大きな差になるのです。
70代は「70歳」までしか治せない
70代になると下りエスカレーターのスピードがどんどん速くなっていきます。身体は「木」から「鉱物」へと硬度を増していき、自然治癒力も低下していきます。

治療歴のない70代はほんとうに治りにくいのですが、「70歳」の頃の身体まではなんとか到達できます。「70歳」をいかにいい身体で迎えられるかが天下の分け目です。

本人の努力もいっそう重要になります。「動くように」「ストレッチをするように」「せめてラジオ体操をしてほしい」とお願いするのですが、残念ながら、今のところ70代で生活スタイルを変えた患者さんはひとりもいません。
動いていた人はちょっと良くなると調子に乗ってどんどん動きます。ストレッチをしていた人はストレッチをつづけます。でも、やっていない人は絶対にやらないのです。
治療する側としてはジリジリするのですが、鍼灸だけでもなんとか維持はできているようです。
「定量」以上の治療はしない
治療年数を重ねた患者さんだと、若い人とほとんど同じ治療ができます。それでも70代に突入したら、「定量」を越える治療はしません。

私の「定量」とは、浅い鍼と深い鍼を組み合わせての置鍼と、脊柱にそって筋肉の硬直を取り除く単刺です。とにかく治りが遅いので、ドーゼ(刺激量)が多すぎると深いところの不具合が現れてしまうのです。とくに透熱灸は深部まで治療できる優れものですが、効きすぎてしまうので要注意です。

はじめての患者さんだと、効果と副反応の程度を確かめながらちょっとずつドーゼを上げていきます。身体が頑丈な人、現役の人、元気いっぱいの人は「定量」の治療ができるようになります。
でも追加の治療は軽くしかやりません。鍼灸治療の基本は背骨の矯正です。メインの治療をきっちりやれば、小さな不具合は数ヶ月で消えていってくれます。
落ちるときは超特急、昇るときは各駅停車
私が責任を持てる治療の頻度は「治りたいときは週に1回」が基本です。痛みが落ち着いて、「これ以上良くならなくてもいいから、今を維持したい」となったら隔週で治療をしています。
でも70代になると、落ちてゆくスピードに追いつくのが大変になります。若い頃から治療をしてきた人でも、隔週から毎週へと頻度を上げないと、向上するのが難しくなっていくのです。

治療の間が空いていったん落ちてしまうと、そこから上がるのは至難の業です。鍼灸治療は「貯金」ができます。しばらくたつと貯金を使い果たしていて、いつの間にか「借金」に変わっていた・・・という結果になります。

治る速度は若ければ若いほど速く、20歳が超特急とすると、50代ならまだ快速ぐらい、70代は各駅停車です。

落ちる速度は逆になります。70代になると落ちる速度は超特急ですが、上がるときは各駅停車で一駅ずつしか進めません。治療しなかった期間を取り戻すのに、だいたい2倍の日数を要します。
「いい状態をつづける」か「悪くなっては取り戻す」かで、かかるお金は同じくらいなのです。
「寝た子を起こさない」治療
昔はお年寄りの治療が苦手でした。「痛い」と言われると気の毒になって、ついたくさん治療をしてしまい、「次の日ぐったり疲れて、一日中寝ていました」ということになってしまいました。
お年寄りの治療はマンツーマンで、置鍼は9分以内、深い鍼は最小限、糸状灸とカマヤミニ以上はやらないなど、自分に言い聞かせながら治療をしました。
(最後の失敗は2013年で、「脊柱管狭窄症2」の中の「70代の治療はドーゼの調節が難しい」で紹介してあります)

見た目も暮らしぶりも「お年寄り」の患者さんには「寝た子を起こさない」治療をしています。神経の閾値も上がっているので、愁訴もたいていひとつです。全体のバランスを見ながら、たったひとつの愁訴だけを取り除くのです。
深いところにある不具合を目覚めさせずに、表面にある「起きている子」だけを治療するだけでみなさん元気に帰って行ってくれます。
「無理」をするのが向上の秘訣
患者さんの治療をしながら「おばあさんは二種類しかいない」と気づいたのが50歳の頃です。「うちのお婆ちゃん、ちっともじっとしていないのよね」というものすごく元気なおばあさんか、ヨボヨボのおばあさんです。
若い人だとものすごくエネルギッシュな人、病気の人以外は8割が普通の人です。でもおばあさんには「普通」の人はいないのです。そこから私のアクティブ人生がはじまりました。

年齢が進めば進むほど、身体年齢の個人差がものすごく広がっていきます。
「お年寄りには無理は禁物」と世の中では言われているようですが、安全策をとって持てる力の8割しか使わずにいると、いつの間にかそれが10割になります。そうやって身体能力がだんだん低下していくのです。
身体能力を向上させるためには「ちょっと無理をする」のがコツです。10の力があるとしたら「11」とか「12」とか限界を越えてがんばるのです。
「11」の力で生きれば、いつの間にかそれが「10」になり、その「11」で生きていればそれがまた「10」になっていくのです。
メンテナンスで老化に抵抗する
私は33歳で鍼灸学校に入ったのですが、自分で自分の治療をする以外にずっと友人に隔週で鍼を打ってもらっていました。
だんだん猫背が治っていったのですが、55歳でストレッチをはじめてから一気に矯正効果が加速して、背筋が伸ばせるようになりました。

思うようにテニスができるようになったのは56歳からです。筋肉ゼロからいきなりハードなテニスをやるようになって、ありとあらゆる筋肉を次から次へと痛めることになりました。
テニスのあとはまずお灸、それからビールという日々がつづきました。定期的な治療も欠かせませんでした。

現在は67歳です。老化をひしひしと感じながら、故障のたびに「もう年なのかな」というあきらめと葛藤しています。でも今のところ可動域も徐々に広がり、筋力もアップしています。年々足が速くなり、身のこなしも良くなって、ジャンプ力も上がっているんですよ。

痛いときだけ治療にくる患者さんもいますが、鍼灸の真の醍醐味はメンテナンスにあります。治療をはじめて1年ぐらいすると身体のあちこちの不具合がリセットされます。そこから3年、5年、10年とつづけるうちにちょっとずつ若返っていくことも可能です。目的に見合う身体づくりを一緒にがんばりましょう!
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Updated: 2022/12/8