dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例8・骨盤から足への痛み
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症例8・骨盤から足への痛み
女性特有の病気?
足を引きずって歩くしかない痛み
患者Hさん(いぼモートン氏病に記載の人)が初めて来院したきっかけは、10年来の足の痛みのせいでした。
医者へ行っても原因不明、どこが悪いのか、なぜそんな痛みが起こるのかもわからない。
診断されていないので病名をつけることもできません。

とにかく、骨盤の中の奥の奥、鼠径靭帯からも、臀部からも、股関節からも一番遠い所に激しい痛みの元があるらしいのです。
鼠径靭帯もおしりも太腿の前も後も、痛くて痛くてずっと足を引きずって歩いていたそうです。

毎回痛む場所が動くので私も混乱して、彼女に病歴を書いてきてもらいました。
レポート用紙7枚にぎっしり書かれた病歴を見て、これは簡単には治らないから、そこを治すことはとりあえず忘れて、全身の体調をよくするつもりでいたら?ということで、1週間か10日に一度の割で鍼灸をしました。

半年後のある日、治療のあと、初めて車まで(200メートルほど)痛みなく歩けた、その日を境に痛みは消え、今では走リ回っています。
固まって冷えた筋肉が災いの元?
私の感じでは、骨盤の奥に硬くなった筋肉があって、その固まった筋肉の中に滞留した古い血液が冷たくなって、その「冷え」から冷気が足の方にまで伝わって痛みが起こっていたのかな?という気がします。

骨や関節や神経では説明のつかない場所なので、レントゲンでもMRIでも原因不明、なぜそんなに痛いのか分からない、ということになってしまうようです。

他にも50代の女性Tさんも、数年前まったく同じ症状で来院しました。
Tさんは引越しでぎっくり腰になって以来5年間、あちこちの病院で検査をしてもらったけれど、原因もわからず、神経ブロックまで試したけれど、痛みは軽減しなかったそうです。
冷えからくるぎっくり腰
Hさん達のような激しい症状ではなくても、私が勝手に「つながりぎっくり」と名づけているタイプの腰痛があります。
女の人特有で、片側のお腹と臀部から足(胆経)にかけてずーっとお灸をすると、動けるようになるのです

女性は、骨盤内で腹大動脈が足に向かって二股に分岐するその場所に、女性特有の臓器(何だったかは忘れてしまいました)があるために、動脈を圧迫して、骨盤や足の冷え性になりやすい、と習ったことがあります。

ただ、ひとり40代の男性で似たような症例があったので、それが原因かどうかははっきりわかりません。(ぎっくり腰
痛みの不思議
Tさんは残念ながら、20回の治療であきらめて来なくなったので、今どうしてるかは分かりません。
Hさんも、半年過ぎるまでは、痛みがあっちこっちに移動はしても、まったく軽減しなかったそうです。

Tさんを治療して3回目が終わった頃、痛みが完全に消失した時期がありました。
身体が軽くてスムーズに動けるのでうれしさに小躍りしたそうです。
それなのに、その後、痛みがぶり返し、どうやっても取れませんでした。

何故、いったん痛みが消え、そして、また舞い戻ったのでしょうか?
神経の閾値
神経というのはあるレベル以上にならないとインパルスを受けつけないという性質があります。
そのレベルを閾値といいます。

痛覚を感じる知覚神経も、閾値以下の痛みは無視します。
激しい痛みに苦しめられている人は、だんだん閾値が上がっていくことで、その痛みの感覚を和らげるような身体の仕組みになっているのです。

心だって、戦争などであまりに悲惨な状況におかれると、感覚が麻痺してきて人の死を悼む気持ちも鈍ってくるといいます。

ガンの激しい痛みですら、古方あんまをしたせいか、心が平穏になったせいか、痛みをまったく感じなくなった人の例があります。
ある意味、神様が守ってくれているのだな、とも思えます。
身体が敏感になった
Tさんの場合は、以前のレベルでは感じられなかった痛みが、治療によって閾値が下がったために、感じられるようになってしまった、ということなのだと思います。

痛みの度合いは変わってないようでも、実は、鈍感になっていた神経がどんどん研ぎ澄まされていって、それまで無視していた痛みを拾えるようになったのです。
表向き、治っていないようでも、着々と治癒に向かっていったのだと思うのです。

他にも、ジンジンくる肩こりを長年こらえていたAさんには、2・3回の治療で「まったく肩こらなくなったのに、なんでまたぶり返したんでしょう?」と驚かれたりしました。
気持ちよさだって感じたい!
Hさんは最初の頃、中国鍼をしようが、お灸バシバシしようが、ちっとも痛がりも熱がりもしなかったのに、痛みが消えていくにつれ、痛がり屋で熱がり屋になってしまいました。

Aさんは、私がどんなに押そうが叩こうが、「ごめんなさい、痛くもないけど、気持ちよくもない、何も感じません」と言っていたのですが、2年目にやっと「右側だけ、押されると気持ちいいのが分かるようになってきた」と言うようになりました。

坐骨神経痛の痛みをを何年もこらえていて、お灸の熱さも感じなかった人が、治るにつれ、実は敏感な人だと分かった例や、身体が鈍感になってしまっていて、つらさも気持ちよさも何も感じなくなっていたけど、アトピー性皮膚炎とか他の愁訴で来院した人、など、他にもそういう例がありました。

敏感な神経でも快適に暮らせるようになるといいと思うのです。
Updated: 2002/12/28