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みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集) |
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症例53・ふくらはぎ2(神経麻痺による萎縮)
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症例53・ふくらはぎ2(神経麻痺による萎縮) |
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半年で5割、1年で7・8割が限界だけど・・・ |
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ジャンプができない自分を発見 |
Nさん(当時66歳、男性)の来院のきっかけはラジオ体操です。
久しぶりにやってみたら、ジャンプが全くできないことに気がつき、あわてて病院に行ったそうです。
脊柱管狭窄症と診断され、ホームページを見て、うちの治療室に直行しました。
2010年3月のことでした。長く歩くと、左のお尻とハムストリングスが固まって、痛みと痺れが起こるそうです。
両方の足全体に軽い痺れがありました。
右ひざは変形性膝関節症と診断されていて、前立腺肥大もありました。
ゴルフにハイキングに畑仕事が趣味という、とても活動的な男性だったのですが、あちこちに不具合を抱えていました。 |
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両方のふくらはぎが萎縮していた |
うつ伏せになってもらってビックリ。ふくらはぎが両方とも細くて、まるで義足、カカシの足のようでした。
ジャンプができなかっただけでなく、爪先立ちが難しく、右足での爪先立ちはグラグラと不安定で、左足のほうはかかとをピクリとも上げられませんでした。
脊柱管狭窄症も坐骨神経痛も、神経の病気なので、はじめは週に2回の治療を行いました。
2回の治療後、左のももの裏の固さが出なくなったそうです。
右の坐骨神経痛のほうは、症状も軽くて、梨状筋症候群だったようです。4回の治療後には、症状が消えました。
全身治療の他、ふくらはぎにはパルス(筋肉に深く鍼を刺し、電極につないで他動的に動かす)と、時に応じて、透熱灸などを加えました。
背骨のゆがみを矯正するために、磁石治療も行いました。 |
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廃用性萎縮は使えばすぐに回復できる |
右のふくらはぎは、右の坐骨神経痛と右ひざ痛によって起こった、廃用性萎縮でした。
使わないでいたために萎縮したからで、筋トレを重ねるうち、みるみる筋力が戻っていきました。 |
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左のふくらはぎの萎縮は、脊柱管狭窄症のためと思われます。
神経麻痺による神経性萎縮なので、そう簡単には筋力が戻りません。 |
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神経性萎縮は時間がかかるし限界もあるけど・・・ |
神経線維は長い間、圧迫、侵害されると変性を起こしてしまいます。そうなると、もう完全にはもとに戻りません。
「半年かかって5割、1年かかって7・8割ぐらいまでが限界ですが、その程度には治ると思います」とNさんに話しました。
筋肉に深い鍼を刺して、パルス治療をしました。はじめは電気を通してもピクとも反応しなかったのですが、数回やるうちにちょっとずつ動くようになります。
「動け」と命令しても、まったく動かない筋肉にはお手上げですが、ちょっとでも動けば、筋トレは可能です。
長い間ふくらはぎを使わないで暮らしてきたので、そういう動きが「クセ」になっています。
その上、神経が麻痺していると、左ふくらはぎは本人とって「ない」ものと認識されています。左ふくらはぎを意識して使うことが重要です。
< FAQ24:「正しい」歩き方とは?リカちゃんウォーク を参照してください> |
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本人のものすごいがんばりで・・・ |
1ヶ月後、8回目からは週に1回の治療に切り替えました。治療が終わるたびに、踵上げをやってもらい、ふくらはぎの筋力を確認しました。
Nさんのがんばりは相当なものでした。
毎朝の畑仕事に加え、プールでの歩行訓練、爪先立ちを含めた筋トレをがんばり、ゴルフの練習にも行きました。
ちょうど、ノルディック・ウォーキングが流行った時代でした。両手に杖を持つと大股で歩けたそうで、ハイキングに出かけては何時間も歩きました。
3ヵ月後、奥さんに「歩き方が良くなった」とほめられたそうで、5ヵ月後には、自分でも左のふくらはぎが使えるようになった感じがしはじめたそうです。
1年後、両足同時なら、左の踵も上げられるようになりました。 |
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68歳でテニスをはじめた |
長い間使わないでいた筋肉を使うようになると、全身の筋肉バランスが変化していきます。
がんばりにがんばっていたので、腰痛になったり、肩を痛めたり、次から次へといろんな筋肉に不具合が起こりました。カルテには苦労の痕跡が満載です。
来院から2年後、Nさんはテニスをはじめました。68歳のときです。テニスは、走ったりジャンプしたりと、ふくらはぎの筋肉を鍛えるには絶好のスポーツです。
現在は治療には来ていませんが、70歳を過ぎても、テニスにゴルフに畑仕事と、活動的な老後を楽しんでいるそうです。 |
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Updated: 2019/5/11 |
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