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みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集) |
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症例52・ふくらはぎ1(腓腹筋とヒラメ筋)
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症例52・ふくらはぎ1(腓腹筋とヒラメ筋) |
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ふくらはぎを使って歩こう! |
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腓腹筋とヒラメ筋 |
ふくらはぎを形成している主な筋肉は、腓腹筋(■)とヒラメ筋(■)です。両方をあわせて「下腿三頭筋」といいます。ヒザの裏からはじまって、共にアキレス腱となって踵骨(かかと)にくっついています。
上にあって膨らみをつくっている腓腹筋(■)は、膝関節の上からはじまる二関節筋で、立位でのみ働きます。膝の屈曲(ヒザを曲げる)と足首の屈曲(底屈=爪先立ち)を同時に行います。
腓腹筋の下にある薄べったいヒラメ筋(■)は、膝関節の下からはじまっているので、座位ではヒラメ筋だけが動き、足首の屈曲(底屈=爪先立ち)を行います。
触診で、どっちの筋肉の障害か分かりにくいときは、立位と座位での筋肉の収縮具合、痛みの出方を比べてみるといいでしょう。 |
<右足のふくらはぎを後から見た図> |
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腓腹筋 |
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ヒラメ筋 |
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下腿三頭筋=腓腹筋+ヒラメ筋 |
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ふくらはぎを使って歩いてますか? |
2010年7月に、右足首のねんざで来院したHさん(当時64歳、女性)は、ねんざも左→右と両方やったそうで、5年前に脳梗塞の既往もあり、ずっと足を引きずっていたそうです。
ふくらはぎの筋力がなく、足首までボッテリしていました。歩いてもらったら、両足ともペタペタと、ふくらはぎを使わない歩き方をしていました。
Hさんのように、病気や怪我をきっかけに、いつの間にかふくらはぎを使わずにいた、という患者さんはたくさんいます。
ふくらはぎを使って歩くためには、「踵からついて、爪先で終わる」のがコツです。
二関節筋である腓腹筋を使うには、膝を曲げずに歩く必要があります。最後の爪先立ちで、すっと膝を伸ばして、しっかりと地面を蹴りましょう。
日常生活で、ふくらはぎを意識して歩くように気をつけることが、ふくらはぎの筋力アップにつながりなす。
毎日地道につづければ、「ふっくらとしたふくらはぎにキュッと締まった足首」という、見た目も美しい足になれるかも・・・
リカちゃんをモデルに「正しい歩き方」を紹介します。リカちゃんの右足に注目してください。 |
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③地面を蹴る |
膝を伸ばしたまま、爪先立ちで地面を蹴る |
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< FAQ24:リカちゃんウォーク に詳しい説明があります> |
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瞬発力を向上させる |
症例51:かかとの痛みで言及しましたが、剣道少年のE君は、2012年12月、左かかとと右アキレス腱の痛みで来院しました。
中一でまだ背が低かったE君は、「背の高い相手に勝てない」と悩んでいました。背が高いとリーチも長く、剣道では有利なのです。
「でも、小さいと動きが敏捷でしょ?」と言ったら、「自分は運動神経が鈍いんです」と言うのです。
E君のふくらはぎは、まるで「おばさん」、足首までボッテリとしていました。
お兄さんが「ペンギン歩き」と形容したように、小学生の頃から、ふくらはぎを使わずにペタペタと歩いていたのです。
ふくらはぎを使う歩き方を教えて、ついでに爪先立ちの筋トレをすすめました。
半年後に優勝したそうです。運動神経がないのではなく、鍛えられていなかっただけだったのでした。 |
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コンピューターは、ふくらはぎを硬くする |
H25年の夏は、ホームページの移行のために、1ヶ月半、毎日何時間もパソコンに向かって仕事をしました。
テニスは健康にいい程度しかしなかったのに、ふくらはぎがつるようになって、不思議でたまりませんでした。
ちょうどその頃、H24年から隔週でメンテをしているOさんが、「久しぶりにふくらはぎがつった」そうです。
毎日残業で、ずっとパソコン仕事をしていたのだそうです。
パソコンでの仕事は、書くのも、消すのも、ゴミを捨てるのも、書類を届けるのも、すべてディスプレイ上で行われます。
肘から先以外はほとんど動かしません。
つい熱中してしまうので、全身が緊張したまま長時間ジーッと坐っていることになり、身体が「ロボット化」します。
とくにふくらはぎの緊張が激しく、カチンカチンに固まってしまうのです。 |
< 追記:症例57「ふくらはぎ(地面をつかまえる筋肉)」で、パソコンとふくらはぎの硬直の関係の詳細を説明してあります。2022/10/23> |
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ストレッチで痛みが出たら赤信号 |
私のふくらはぎには、パソコン仕事が終わったあとも、棒状の固りがず~っと残っていました。
ふくらはぎは後ろにあるので、自分でハリを打つのはかなり大変なのです。でも、放っておくと肉離れ(筋繊維の断裂)やアキレス腱断裂を起こすかもしれません。
危機感にかられて、自分でふくらはぎに集中治療をすることにしました。
ハリとマッサージを交互にくり返すこと数日。まず、ストレッチのときのふくらはぎの痛みがなくなりました
FAQ21:「ストレッチの効果は?」に、各部の筋肉の状態を早めに知ることができる。「伸びにくい」と発見したら黄信号、「痛み」が出たら赤信号・・・と、自分で書いたのに、忘れていたのです。
ストレッチで痛みが出るのは、「鍼灸治療をしろ」というサインなのです。
< 私のブログ:2016/6/8「ふくらはぎがボワ~ン」に詳細あり> |
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ふくらはぎのこりを取って、腰が若返る |
ふくらはぎの集中治療は驚くほど効果てきめんでした。半年以上も悩まされていたぎっくり腰への不安から、いきなり解放されたのです。ずっと自分の腰が、「木」でできていると感じていました。
クラブに行ってコートに立って、いきなり動くと、バキッと行きそうな不安がありました。準備運動的にゆっくりはじめ、腰に「油」が回ったら、そこからやっと全力疾走できるようになるのです。
年のせいかと意気消沈していたのですが、原因はふくらはぎの「こり」だったのです。ふくらはぎの柔軟性を取り戻したら、腰の柔軟性も戻ってきました。
行っていきなり全力で動いてもまったくOKになり、用心しなくてもよくなったのです。
(朝30分のストレッチはやってますけどね~) |
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ふくらはぎは腰の煙突、(バイクの)マフラー |
煙突に煤がたまると、煙の逃げ道がないので、燃えが悪くなります。マフラーにカーボンが付着すると噴けが悪くなり、バイクが走らなくなります。
部屋に風を入れたいときには、入り口の窓だけ開けてもだめです。出口の窓を開けると、とたんに風がサ~ッと流れて行きます。
同じ原理が人体にも当てはまります。手と足は、「バイクのマフラーのようなもの」、もしくは「ストーブの煙突のようなもの」です。
手足をほぐさないと、溜まった邪気の逃げ道がつくれません。患部である首や腰をいくら治療しても治らないのです。
鍼灸治療の常識を、自分の身体であらためて痛感しました。 |
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つり、肉離れ&アキレス腱断裂 |
ふくらはぎの「つり」に悩んでいる人はたくさんいます。筋肉のこりを放置しておくと、どんどん重積していきます。入道雲のように突然の雷鳴が轟き渡る・・・
つまり、思いもよらぬときにバリバリッと放電が起こり、筋肉が過度に収縮する、それが「つり」です。
こった筋肉にハリを打ってパルスをかける、もしくはカマヤミニでこりをほぐすと、しばらくはつらなくなります。
< 症例45:(筋肉の)つり、参照>
ふくらはぎの肉離れ(筋繊維の断裂)も、筋疲労とこりの重積が原因です。肉離れは鍼灸治療で即効性があります。最悪はアキレス腱断裂になることもあります。
< 症例35:肉離れ、参照> |
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血圧とも関係しているらしい |
首がこると、内部を通る血管が圧迫されます。脳に大量の血液を送るために、心臓が無理をして、結果、血圧が上がることになります。
鍼灸治療で首のこりをほぐすと、だんだん血圧が下がっていきます。
ふくらはぎも「第二の心臓」とも言われているそうです。足の末端にまで血液を送り込まなければならないので、ふくらはぎがこっていると血圧が上がるのだそうです。
ふくらはぎが柔軟で弾力があると、内部の血流が良くなります。血流が良くなると、柔軟性が増します。好循環ですね。しっかりふくらはぎを使って歩くと、心臓の働きを助けることができます。
ふくらはぎはいろいろな面で人体の健康に関与しているのです。 |
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腓腹筋とヒラメ筋の治療の相違 |
腓腹筋は手で触れるので、こりを探すのは簡単です。なので治療も簡単です。上から垂直にハリを刺すことができます。
たいていは凝った部位にハリを深く刺して置鍼します。病が新しければ、切皮だけでも効果があります。それでもこりが残ったら、カマヤミニを追加します。
ヒラメ筋は横から触って、腓腹筋の下にもぐっている薄い板の両端を掴まえなければなりません。
治療も難しいです。横方向から、薄い板にそってハリを刺さなければならないからです。カマヤミニは板の端っこにすることになり、あまり効果は感じられません。
筋肉のこりが激しい場合は、パルス治療を行うこともあります。 |
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複数の筋肉が重なっているポイントを狙う |
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ヒラメ筋(■)への鍼は、横から水平にもぐりこませる |
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筋肉と関節は連動している |
ふくらはぎと関係が深いのはヒザの関節です。
筋肉は縮むことで働きます。疲労を回復しないまま酷使しつづけると、硬くなって縮んでいきます。膝関節の裏側の付着部を引っぱって、痛みが出ることがあります。
膝関節は周囲をたくさんの筋肉たちが取り囲み、共同作業をしています。前方や内側、外側など、ふくらはぎが直接関与していない場合でも、仲間のひとりとして働いています。
関節が先でも筋肉が先でも、同じ悪循環がおこります。障害守ろうとして筋肉たちが過緊張します。
無理を強いられた筋肉は、どんどん硬くなって縮んでいくので、関節への圧が増大して、障害が悪化します。
1ヵ所でも不具合があると、関節と、関節を支えている筋肉全体に波及していくのです。 |
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筋肉のギブス化は関節の変形につながる |
障害のある関節につながっている筋肉たちも、障害のある筋肉と共同作業をしている筋肉たちも、キズを守ろうと硬くなります。
障害部位を取り囲んでギブスのように固めるのです。
筋肉がギブス化すると、筋肉の収縮が制限されます。
可動域が狭まって、思うように動かせなくなります。
可動域が100%あって、はじめて正常な動きができるのです。
どこかの筋肉が休み、どこかの筋肉には過負荷・・・ということになると、どうしても歪んでいきます。
筋肉に歪みがあれば、関節も歪んでいきます。
歪みが固定されたら、関節が変形します。
全身のあらゆる関節は互いに連動しています。
放っておけば、障害のある関節だけでなく、他の関節まで変形がすすんでいきます。 |
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関節の可動域を広げる |
鍼灸治療は、痛んでいる関節と、まわりを取り巻く筋肉の両方を治療します。
筋肉のこりを直接取り、血流を促して、自然治癒力を呼びおこします。
でも、患者さん本人の努力も不可欠です。
いつの間にか使わずに来てしまった筋肉を使って歩き、自分で筋力をアップさせなければなりません。
筋肉が収縮をくり返すと、筋ポンプ作用で、内部の血流がよくなります。
疲労物質の代謝がよくなるので、柔軟性が増します。
筋肉が柔軟だと怪我をしにくくなります。
「正しく」歩くこと、正座やうんこ坐りなどの日常動作を普通にこなす努力で、ゆっくりとですが、歪みを矯正できる可能性があります。
ストレッチも重要なので、自分でやっていただくようお願いしています。
可動域が広がっていけば、それまで眠っていた、さまざまの筋肉をフルに使えるようになります。
神様の設計図に従って、想定した通りに使うことができれば、「かなわぬ願いはなし」ということになるかもしれなせん。 |
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Updated: 2017/6/25 |
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