FAQ
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<Q18 痛いハリと、痛くないハリの違いは? > |
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鍼師の技術によるのはもちろんだけど
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「鍼は痛い」と思い込んでいる人がいます。でも、「鍼はそんなに痛くない。気持ちいいよ」と言う人もいます。
なぜ、そういう違いが出るのでしょう?
もちろん、鍼師の腕は重要です。どういう太さの鍼を、どういう風に打っているか、にもよるのですが、それ以上に大きな違いは、鍼を滅菌する前に、きちんと鍼を磨いているかどうか、ということにあると思います。
昔はハリを「舐めて」打ったそうです。当時、弟子の仕事の第一は「ハリ磨き」で、大切な道具を常に検品し、研ぎ澄ませておいたものでした。
でも、ハリによる感染症が懸念されるようになって、ほとんどの治療院がオートクレーブでの高圧滅菌をするようになりました。 |
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汚れたハリ=なまくら刀
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初心者の頃は、プライベートでハリを打つときには、ディスポ(使い捨て)の鍼を使っていました。
病院でリハビリをしていた頃、ときたま患者さんに頼まれることがあって、そのときは、病院の鍼を使いました。ある日、好奇心から、病院の鍼を自分に打ってみたとき、あまりの痛さに涙がちょちょぎれそうになり、本当に驚きました。
単なる切皮(0.5~1ミリ程度、皮膚に浅く刺す)なのに、打つハリ打つハリ、ビシッバシッと、杭を打ち込まれるような痛さなのです。
そのあと、必死で鍼を磨いてみたのですが、結果は同じでした。
高圧滅菌してもらえるのは安心ですが、汚れたままで高温にかけると、針先に目に見えない焦げが付着し、「なまくら刀」になってしまうのです。 |
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たんぱく質の熱変性
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昔、「みんなの牛乳勉強会」に参加していたことがあります。無農薬の農場をやっている小寺ときさんが講師になって、消費者が牛乳の勉強をする会です。パスチャリゼーション(牛乳の殺菌法のひとつ)についてとか、私もずいぶん本を読みました。
そのときに勉強した「たんぱく質の熱変性」のことを思い出し、私なりに納得のいく理由を考えました。
人体に刺したあとのハリには、目には見えなくとも、体液などのたんぱく質が付着しています。それを、そのまま高圧滅菌器(オートクレーブ)にかけ、高温で滅菌すると、たんぱく質が熱変性を起こします。
熱変性には、可逆的変性と不可逆的変性があります。超高温にさらされたたんぱく質は、不可逆的変性を起こします。つまり、焦げつき、鍼に付着するのです。そうなってから、いくら一生懸命に磨いても、もう「焦げ」は取れません。 |
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新品から、鍼の汚れをきれいに落とす
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患者さんに無用な痛みを与えないためには、新品のうちから、滅菌器にかける前に、鍼の汚れをきれいに落とさなければなりません。そうしないと、付着した「焦げ」が積み重なって、ハリ先が鈍くなり、痛みの原因になります。
私の場合は、使用済みの鍼は、エタノールを含ませた脱脂綿で、きれいに磨いて汚れを落とし、それからオートクレーブにかけています。
磨きながら1本1本のハリを検閲し、傷んだハリや曲がったハリなどを取り除くことができるので、事故防止にもなり一石二鳥です。
うちでは個人鍼にしているのですが、感染防止以外にも、患者さんごとに異なる施術の仕方や、使用回数に応じての鍼の管理ができるという利点があります。
ディスポの鍼は、ゴミがたくさん出るので、非常用にしています。 |
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鍼灸の「鍼」と注射の「針」は異次元
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注射の針を連想して、「針」なのだから、痛くてあたりまえ」という印象を持っている人がたくさんいるのだと思いますが、それは根本的に間違っています。
注射「針」は、筋肉や血管を切り裂いて、内部に液を注入するために、先端が鋭利にカットされています。
鍼灸の「鍼」は、髪の毛ぐらいの細さです。しかも、一番細い注射針の、液体の注入口に入るぐらいに細いのです。
「鍼」の先端は松葉の葉っぱのような形で、細胞と細胞の間を分け入るように、奥へ奥へと進んでいきます。だから、ほとんど血も出ないし、痛みも少ないのです。 |
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当たりどころが悪い場合もある
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鍼の管理をきちんとしても、それでも痛いときもあります。
毛穴に入ったときはピリッと痛かったりします。痛点という痛みを感じる細胞を直撃したときは、ツーンと、けっこう痛いです。
1ヶ所でも痛いハリがあると、神経が過敏になってしまい、鍼の痛さをよけい感じることもあります。それでも、痛いハリは10本に1本ぐらいの割合でしょう。
あなたが患者の立場で、もしも痛い鍼があった場合は、無理に我慢しないで、治療師に言って打ち直してもらいましょう。鍼の効果を損なうことがあるからです。 |
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<註: パスチャリゼーションとは?>
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パスツール博士が考案した殺菌法。生乳を63℃で30分間加熱して消毒すると、結核菌やジフテリア菌などの有害な病原菌だけを殺し、酵母や乳酸菌などの有用成分を残します。たんぱく質も熱変性を起こさない(可逆的変性)で、カルシウムなどの栄養面においても生乳とほとんど変わりません。
72℃15秒(HTST)など、他の方法でもパスチャリゼーションは可能です。
日本では、単なる「低温」殺菌牛乳という言葉に訳すことで、「パスチャライズド・ミルク」に要求される、厳しい国際基準から免れているという面もあります。
余談ですけど、牛乳を選ぶときには気をつけましょう。 |
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