dosei みづ鍼灸室 by 未津良子(症例集)
症例9・風邪2 (2003)
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症例10・風邪2 (2003)
私たちは病原菌との戦いの生き残りの子孫
無農薬野菜の効果
昔、私は1年中風邪を引いてるような状態で、上の二人の男の子が小さかったときは毎月3人で40度近い熱を出して寝込んでいました。
今はほとんど誰も風邪を引かないし、たまに誰か引いても「ウツル」という事もなく、薬も飲みません。

その転機は無農薬野菜を食べたことから始まりました。
特に小寺ときさん(みんなの牛乳)のグループ農場に参加して、自給自足の無農薬の米や野菜を食べるようになってからは、風邪を引かなくなったばかりでなく、3日ぐらいの徹夜も平気で駆けずり回れるようになったほど体力がついて元気になりました。

昔から「はしかをすると丈夫になる」と言われてるように、二人の男の子が見違えるほど丈夫になったのははしか(麻疹)を乗り越えたおかげもあったのでしょうか?

このページは、昔聞きかじったことや、読んだ本の中から私なりに考えたこと、思いつきや風説が入り混じってるので、間違いもあるかもしれませんので、よろしく。
薬に頼らず風邪を治す
八王子中央診療所の山田真先生がその頃、
「ウィルスに効く薬はありません。自然治癒力で治ったということを実感するためには、薬を飲まないでがんばってみて、治った、という経験をつむことで自信をつけるのがいいでしょう」
というようなことをおっしゃって、なるほど、と思って実行したのが始まりでした。

山田先生の
「40度の熱でも3日ぐらいは持ちこたえられます。熱があって顔が赤ければ、それは普通の風邪による症状です。
熱があるのに顔が青いようなら、肺炎を起こしている可能性があるのですぐ病院に行きましょう」

という言葉にもなるほどと思い、真っ赤な顔をしてふうふういってる子供の、かっかと燃える石炭のように熱い身体を抱きしめて、心配で気も狂いそうになりながら体温計とにらめっこをして3日間がんばったこともありました。

腕白し放題の健康体であれば、たいていのウィルスには自力で勝ち続けることができるものです。
免疫
「風邪のウィルスは何百種類もあって、全部のウィルスに免疫がつくと風邪を引かなくなる」とか、
「風邪のウィルスをやっつけようとして、発熱したり、体中の白血球とかリンパ球とかが総動員されると、そのおかげでガンのウィルスなども一緒に退治されるので、よく風邪を引く人はガンにならない」とかいう話も聞きました。
その頃には、私自身あまり風邪を引かなくなっていたのでちょっぴり残念でした。

抗体はその種類によって、体内に留まる期間が違います。はしかは、ワクチンや薬を使わずに自然にかかると、作られた抗体が強力で、一生ものの免疫がつく、と言われています。

インフルエンザの抗体はは5年ぐらい。ワクチンの場合はウィルスの型が違うと効果がないけれど、自力で取得した免疫は、多少の違いを乗り越えて効果を発揮するそうです。
毎年、予防接種をしても、毎年インフルエンザに罹る人もいます。
うちでは、各自5年に一回ぐらいしか風邪を引かないのは、自然に罹って自力で治し、しっかり抗体を産生してるからなのだな、と思いました。
風邪の民間療法
一番効くのが野菜スープでした。
季節の野菜を何種類も、塩味、醤油味、味噌味、牛乳味(シチュー)と、毎回バリエーションをつけて、おっきなどんぶり一杯、それを3日ぐらい続けると、引きかかった風邪も退散します。

最近凝ってるのは、インスタント味噌汁。
お椀に刻んだネギをたっぷりと味噌と鰹節を入れお湯を注ぎます。すごく身体が温まるし、しかも簡単です。

昔はよく、大根を蜂蜜に浸して出た汁を咳の出ている子供に飲ませたり、焼いたネギをガーゼにくるんで首からぶら下げたりしました。
喘息の発作にどくだみ茶も効果がありました。どくだみは無農薬なので安心です。
熱を下げるのは地竜(ミミズの干したもの)、喉(扁桃腺)の脹れには駆風解毒散、お腹に来る風邪には、梅干、梅酒、乳酸菌、納豆菌が効果がありました。

多少の熱があっても、熱い風呂に入って、熱いものを食べ、暖かくして汗を出す、というのが普通の体力を持った人には一番効果的です。
熱を出して、いかにも毒素が出たなという感じのねっとりした汗をかいて、ウィルスをさっさと殺し外に出してしまうと、風邪が治ったあとは身体がすっきりして気持ちのいいものです。
インフルエンザ
ピート・デイヴィスの書いた「四千万人を殺したインフルエンザ」(文藝春秋)という本を読みました。

1997年に香港で起こった事件(鳥インフルエンザが人間に感染したらしいという情報を得て、鶏たちをすべて焼却処分にした)から始まって、1918年に起こったスペイン風邪のことなど、人間がインフルエンザを追って格闘している様子が詳しく分かりやすくかかれていました。

これからの人類にとって一番の脅威になる病原体はインフルエンザであろうと言われています。、
空気を媒体に感染するので、感染経路を断つことが事実上不可能。
ウィルスの型がどんどん変化するのでワクチンが間に合わない。
しかも、人間、鳥、豚など、それぞれにインフルエンザの型が違うのですが、香港の事件のように、万が一、ヒトとトリのインフルエンザウィルスが遺伝子交換をしたら、人類がまったく免疫のない新種のインフルエンザが出現し、人類絶滅の危機になる、と恐れられているのです。

その本を読んでの私の結論は、結局、日頃から体力と自然治癒力をつけておき、後は運を天にまかせるのが一番だな、と思いました。
大量死するような怖いウィルスでも、助かった人もいるのですから。
年中風邪を引いてる人
治ったと思うまもなく、また風邪を引き、と、1年中風邪を引いてる人がいます。昔の私がそんな状態でした。
スローウィルス感染の一種であるとも言われています。

スローウィルス感染とは、たとえば、水疱瘡が治った後、生き残ったウィルスが神経線維に住みつき、体力が落ちたときに、帯状疱疹や、肋間神経痛や三叉神経痛などの症状を起こすことです。(水疱瘡のウィルスは神経線維が大好きなんですって!)

慢性疲労症候群のひとつ、という説もあります。
重大な病気(たとえば結核とか)が隠されている場合は別として、いずれにしても、ウィルスが少し弱った程度で、完全に退治されてないまま体内のどこかに住みつき、宿主の体調が悪くなったのを見計らって暴れだす、ということだと思います。
漢方の風邪の概念
風邪は漢方では「ふうじゃ」と読み、その名の通り「風」の邪気が体に入って起こると考えられています。
英語で catch cold スペイン語で resfriado と、西洋で「冷え」が原因とされているのと違うのが面白いですね。

ちなみに、寝違えぎっくり腰ぎっくり背中は、経筋(経絡と関連した筋肉のつながり)に寒邪が入って起こるという説があります。
私も理屈がよく分からないのだけど、それに基づいて治療すると治る、というのが理論より臨床を重視して発展してきた東洋医学の不思議なところでしょう。
先天の気・後天の気(天の気と地の気)
無農薬の野菜を食べると風邪を引きにくくなるのは何故でしょう?
漢方では気を、先天の気後天の気に分類しています。
先天の気
は親からもらったもので腎に宿り、それが寿命になります。

後天の気天の気地の気の二種類。
呼吸によって天の気を吸い込み、地の気を吸って育った野菜を食べることで身体に取り込み、それが生体を動かすエネルギーになります。

鳥が飛び、虫が住む自然の農場は地の気がたっぷり。その地の気を吸って育った米や野菜を食べることで、豊かな地の気を吸収し、免疫力が高まり、活動エネルギー量がアップするのです。
もしかしたら、地の気を吸った野菜を食べた動物の死体を食べるより、野菜をそのまま食べた方がエネルギー量がアップするかもしれませんね。
もぐさの効用
もぐさはヨモギの葉っぱに裏に生えているにこ毛を集めたものです。
葉や茎の混入しているものは緑色をしていて、ヨモギらしいいい匂いがしますが、粗悪もぐさと呼ばれ間接灸に使われます。
粗悪もぐさから柔毛だけを丹念に選り分けたものは、きれいな黄色をしていて良質もぐさと呼ばれ、直接灸に使われます。

昔は、喘息の発作を起こすと、枕もとでもぐさを焚いて煙を吸わせて発作を抑えたそうです。
子供が悪いことをすると「お灸をすえられた」ものですが、罰するようでいながら、ついでに身体も治すわけだから、これこそ真の教育ですよね。

「お灸をすえる」という言葉には、相手のために叱る、相手を正しい方向に導いてやる、という意味が込められている!
昔の人ってすごいと思いません?
大昔にヨモギが身体にいいということを誰かが発見し、そのうえ、また誰かがにこ毛だけを選り抜くことを思いつき、何千年に渡って人類が伝承してきたのです。

良質もぐさは燃焼温度が低く(45℃から80℃ぐらいらしい)、直接身体にすえても火傷しにくいという利点があるだけでなく、ひねり具合やすえ方を変えることで、様々の違った効果を生むことができます。
誰かにお灸をして煙を吸い込むと、自分の治療にもなってお得です。
風邪の鍼灸治療
首の後ろ、頚椎と胸椎の間に大椎というつぼがあります。
そこから風邪(ふうじゃ)が入り込むといわれています。
そこを中心にお灸をしたり、金粒を貼ったりします。

首や肩が凝って硬くなっていると、古い血液が滞留し、その筋肉の中がウィルスの格好の住処になる、という感じがします。
新鮮な血液を送り込んでウィルスの居心地を悪くします。

なんと言っても、冷えると風邪を引きそうになります。
人によって冷える場所(風邪の侵入する経路)が違います。
私は今は腕から風邪を引きそうになるのですが、昔は大椎からでした。
頭からの人、足からの人、背中からくるという人、いろいろな人がいます。
風邪を引きそうなときに、そこを冷やさないようにして暖めると風邪が入り込めません。

もちろん肺経も治療しますが、人差し指の先、商陽というつぼから邪気を抜くと、喉の重みが減り、すっと楽になります。
商陽は大腸経のつぼ、陰の肺経と、陰陽でセットになっているからです。
病は陽から入って陰に留まる」の原理です。特に風邪の引き始めに効果的です。

鼻詰まりには飛陽に銀粒を貼ります。
カラ咳には天突に金粒、郄門に銀粒を貼ると、痰の排出が促進されます。
まめに鍼灸治療を受けていると、本当に風邪を引きにくくなりますよ。

セルフケア・ナビ「風邪」を参照してください>
風邪のウィルスとの戦い方
ステージ1=まだ風邪じゃない
頭や背中、後頚部の付け根、腕などが冷えたのを感じたときは、感冒の前兆。
首にスカーフを巻くなり、暖かい上着を着るなりして、冷えを追い払い、風邪の入り口を塞ぎます。

ステージ2
=風邪を引きかかってる
それでも、喉や鼻の奥に違和感を感じたり、顔面や首のあたりが重いなと感じたら、冷えてる部位に間接灸して暖めます。
大椎に金粒を貼ったり、商陽から邪気を抜いたりするのは、この時期には即効性があります。

ステージ3=風邪に捕えられたがまだ五分五分の争い
寒気がし始めたら、熱が上がり始める前兆。
脳の視床下部の体温調節中枢が、平熱なのに「体温が低すぎる」と勘違いして、悪寒、震えなどで、体温を上げるシステムが作動したのです。
暖かいものを食べ、温かい格好をして、布団を山のようにかけ、身体の内と外からガンガン暖めます。とにかく、暖かいと感じるようになるまで。
寝巻きの下、首から背中に乾いたタオルを背負って汗を吸い取るといいですよ。
ねとねとした汗が出つづけてる間は、ウィルスの死体を汗と一緒に排泄している状態です。

ステージ4=風邪の勢いの方が優勢な状態
風邪の勢いが強いと、熱がどんどん上がり、節々が痛くなり、咳、喉の痛み、鼻水、鼻詰まりなど、完全に風邪症状に苦しめられるでしょう。
こうなったら2・3日は続く覚悟をして、しっかり寝込んで戦いましょう。
仕事を休めない場合は、家へ帰ってから寝込みましょう。

ステージ5=ウィルスに勝ち始める
苦しんでる最中に、ずーっと自分を観察してると、「あ、今、どん底から浮き上がったな」と感じる瞬間があります。
免疫力がウィルスに勝ち始める折り返し地点の戦いを終えたのです。
そこを過ぎると、どんどん快方に向かいます。
あとは、風邪がぶり返さないように用心して、完全に風邪が抜き切るのを待ちます。
これであなたは、このウィルスに対する抗体をゲット。ついでに身体の大掃除もできてラッキーでした。
3ページ目へつづく
Updated: 2003/1/16