9/16(日) |
ぎっくり腰の治療:Tゾーンと腸腰筋 |
動けなくなって1週間寝込んだけれど、焦燥感は不思議になくて、かえってホッとした感じ。
えんえんと眠りこけていた。
週5で仕事、週5でテニス、ティラの世話、家事に買い物と、あまりに忙し過ぎたんだね。
腰にはたくさんの筋肉が通っている。
背中から腰、お腹から腰、腰から臀部、臀部から足へ・・・
それらの筋肉たちが、主の暴走につきあわされた。
疲労困憊し、カチンカチンにこり固まったまま、なんとかバランスを保っていたのだろう。
バキッと1本、どこかが壊れたせいで、筋肉バランスが崩れて、不具合の連鎖反応が起こった。
我慢に我慢を重ねてきた筋肉たちが、次から次へと悲鳴を上げたのである。
はじめの症状は、足が上げにくくなったこと。反対側のお尻にズシンと痛みが来る。
片足を上げるときに、反対側の骨盤を固定するのは中殿筋なので、そこにカマヤミニをしてみた。
でも、どんどん悪化していって、ついにはまったく足を上げられなくなった。
鍼灸は臨床医学である。まず、なんとかして患者を治す。
その経験を踏まえて、「なぜ治るのか?」を考察し、理論体系化していくのである。
昔は、治療をしてくれるSさんにお任せしていたのだが、そうも行かなくなった。
自分で原因を究明し、「ここに打ってみて」とお願いしなくちゃならない。
本を広げて、いろいろな筋肉を細かく調べた。
去年の秋の腰痛は、メインが梨状筋だった。
激しく不快な鈍痛が、波状攻撃のようやってきた。毒素を噴出す間欠泉のような感じだった。
今回のはまったく違う。
硬いハンマーで殴られているような「こわばり」で、ちょっとの身動きすら難しい。
身体を前に傾けられなくなった → ピクとも振り向けなくなった → 物が持てなくなった → しゃがめなくなった → 立ち上がれなくなった → ついには身動きもままならなくなった。
ある程度動けるようになってからも、前傾姿勢は困難なままだった。
坐っていても立っていても、自分の体重が支えられない。
上体が腰に乗っかると、ズシンと圧がかかる。時間が立つほど骨盤にめり込んでいく。
最後に残ったのは、最初の「しこり」と、そこにつながる部位だった。
「Tゾーン」と名づけた。
自分では絶対にハリを打てない場所である。 |
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は腰椎で、いろいろな筋肉で支えられている。 |
は「しこり」の部位。腰椎と骨盤(仙骨)の付着部で、一番「圧」がかかる。
腰痛の患者さんの必須治療部位である。 |
健全な腰椎は自然に前弯している。
脊柱にかかる「圧」を逃がすために、前後にS字カーブをしているのだ。
腰にお灸をしているとき、鏡で見る自分の腰は、背中からお尻まで、スパ-ンと見事にまっすぐだ。
メンテナンス治療に来ている患者さんと同じである。
「Tゾーン」がまっすぐだと、腰痛を起こしやすいのだ。
うちの治療室では、置鍼のあと、単刺で深い部分のこりを取る。
Tゾーンの治療をしながら、自分が打っているのは何筋なのだろうと、いつも疑問に思っていた。
もしかしたら、脊柱の内側にくっつく大腰筋の付着部だったのかもしれない・・・と思った。
脊柱の内側~大腿骨に付着している大腰筋と、骨盤の内側~大腿骨に付着している腸骨筋をあわせて「腸腰筋」という。
太ももを持ち上げるとき、上体を前に傾けるときに使われる。
冷えから来る女性のぎっくり腰には、腹部の透熱灸が効くんだけど、もしかしたら、腸腰筋に効果があったのかもしれない。 |
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これは腸骨筋で、骨盤の内側にあって、大腿骨の内側にくっついている。 |
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これは大腰筋で、腰椎の内側からはじまって、大腿骨の内側にくっついている。
下は、腸骨筋と大腰筋を重ねてみた図である。(=腸腰筋) |
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縦に並んだ○と、 (しこりの部位)で「Tゾーン」を形作っている。
骨盤の内側を腸骨筋、外側は中殿筋で、骨盤を裏表で支えている。
腸骨筋が疲労する。弱ってくるから、中殿筋が無理してがんばる・・・その可能性もある。
ハードなテニスや重労働で腰が曲がるのは、この筋肉の縮みが元凶かもしれない。 |
この半年間、誰にもハリを打ってもらわずに来た。
手の届くところに自分でハリを打ち、あとはストレッチでどこまで治療できるのか?それを試してみたかった。
結果は、やっぱり腰にはちゃんとハリを打ってもらわないとダメだった、ということだった。
昔はハリじゃなく、透熱灸で深部の治療をしたので、患者さんに「Tゾ-ン」に透熱灸をしてもらった。背部全体にカマヤミニもしてもらった。
そのおかげか、なんとか前傾姿勢が取れるようになったので、昨日の土曜日から、同時に2人を治療できるようになった。
ずっと痛かったのは左の腰だったんだけど、今日になって、右の坐骨結節と股関節からつながる筋肉のほうに違和感を感じるようになった。
今年の2月のぎっくり腰で、治してもらえなかった部位である。
鍼灸でほぐしてから、ストレッチで維持する・・・それしかなかったね。
私の最大の長所でもあり欠点でもある「好奇心」が大いにあおられ、今回の「ぎっくり腰」はほんとうに勉強になった。
まだ完治ではないけれど、展望が見えてきたね~~(笑) |