8/1(土) |
2年ぶりのぎっくり腰:決め手は腹筋だった |
ブログの更新が遅れたのは、症例39「脊柱管狭窄症・1改」を書き直していたからなの。
はじめての患者さんの症例だけだったので、ずっと気になっていたんだけど、イラストなどを加えて、11年ぶりに改訂した。
脊柱管狭窄症は老化と密接な関係があるので、「脊柱管狭窄症・2」では、その後の患者さんたちを年齢順に紹介した。
読んでくれれば、どんだけ時間がかかったか理解してもらえると思うよ。(笑)
コロナ自粛で2ヶ月テニスができなかった間に、筋肉がとことん落ちてしまった。
再開してすぐ、ちょっとハードに走っただけで、腸腰筋を痛めてしまい、股関節が固まってしまったことはすでにお話した。
(→2020/6/17)
うちの患者さんが昔テレビで見て、「腸腰筋は疲労しやすく、しかも疲労が回復しにくい筋肉なんですってね」と教えてくれたことがある。 |
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大腰筋と腸骨筋をあわせて、腸腰筋という。
後側には骨盤があって、表側には腹膜につつまれた内臓がある。
筋肉の端っこにしか鍼を打てないし、指圧の指も届かない。
いったん壊すと治すのが大変なのである。
今回の腰痛の特徴は、骨盤の「上前腸骨棘」あたりに、ピンポイントの痛み(●)があることだった。 |
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左右の骨盤の角に、尖ったもので刺されるような、キーンと甲高い痛みである。 立っているときのいろんな動作でおこるので、腰でん部のいろんな筋肉の硬直が、●に集約されるのだろうと思う。
手当たり次第に治療をしたけど、どうしても消えてくれなかった。(今でもまだちょっと残っているんだよ)
テニスにもとくに支障はない程度の不具合だった。
コロナ自粛のあとでリハビリを意識していたし、雨で思うようにできなかったおかげもある。
腰でん部が固まっていることには気づいていたけど、普通のテニスはできていた。
立ったままで靴下をはくときに、だんだん足があげにくくなっていった。
痛いというより、固まっていて、太ももがきっちり持ち上げられない感じだった。
リョコちゃんストレッチのムーブメント#11が難しくなっていった。 |
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仰向けで、膝を曲げて、足を両手でつかんで身体に引き寄せる。 |
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太ももとお腹の間にクッションでもはさまっているみたいで、くっつけようとすると、太ももの付け根の上下のあちこちに痛みが出る。
ちなみにムーブメント#12は、膝を伸ばして引き寄せるストレッチである。
これでは痛みは出ない。「より難しいのに痛みが出ない」ことが不思議だった。 |
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でん部(坐骨結節)~膝下まで走行している、大腿後面のハムストリングスは二関節筋なので、そこで制限され、どっしにしろお腹にピタリとくっつけられない。 |
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次に気づいたのは、ムーブメント#21が難しくなっていったこと。
両足をそろえての前屈である。 |
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真向法を教えてくれた患者さんには、「開脚のほうが簡単で、こっちのほうが時間がかかる」と聞いていた。 |
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私にとってはこれが一番難しいストレッチなんだけど、それにしてもどんどん苦痛になっていった。
この姿勢で坐っていることすら苦痛になったけど、「痛みが出る角度を発見したら、そこでがんばる」のがコツなので、痛みをこらえてやりつづけた。
だんだんお腹の調子が悪くなっていった。
梅雨時は雑菌にとっては快適な気温と湿度なので、食べ物の中でどんどん繁殖してしまう。
そのうえ、冷たいビールとエアコンで、内と外から身体を冷やしてしまう。
胃腸に魔物が住み着きやすい季節なのだ。
このままだと、ビールが飲めない胃腸になってしまう・・・と思い、早めにお腹にお灸をしておこう・・・、と思った。
仕事の合間にベッドに横たわって、お腹にカマヤミニでお灸をした。
胃腸の調子がよくなって、すっかり楽になったと喜んだのもつかの間だった。
家に帰ってから、「あれ、腰が痛い?」と驚いた。
中途半端にカマヤミニをやったおかげで、「寝た子」を起こしてしまったらしい。
翌朝にはぎっくり腰がはじまっていた。
ちょっとずつ進行し、仕事で前傾姿勢が取りにくくなった。
ベッドを真ん中に移動して、マンツーマン治療でしのいだ。
左右両方から鍼を打てるから、中腰の時間を減らせるのである。
カマヤミニの前日、久しぶりにハードにテニスをやった。
Cさんに、スピンの回転量を上げるためには、右足軸足1本で、しっかり腰の回転を使って打つようにとアドバイスをしてもらった。
シングルスを1セットにダブルスを2セット半。
「腰の回転」を意識してストロ-クを打って、だんだん以前の感触を取り戻していったけど・・・
日常生活では絶対に使わない筋肉を酷使したのも引き金だった。
ぎっくり腰になってからは、Tゾーンの硬直と痛みが悪化していった。 |
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Tゾーン=腰椎と骨盤の付着部 |
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=腰椎
(男性はここに負荷がかかる) |
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=骨盤
(女性はここに負荷がかかる) |
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Tゾーンとでん部には鍼を打ちまくり、もう打つところがないぐらいにほぐれたというのに、それでも腰痛は治りそうな気配がない。
腰の回転に必要な筋肉のうち、後面はすでにほぐれているから、腹部の筋肉(外腹斜筋とか、内腹斜筋とか)を重点に治療をしようと思った。 |
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お腹に鍼を打つときは、腹痛の激しいとき。内臓をつつんでいる腹膜に鍼を当てると、調子が良くなる。
でも、今回の目的は筋肉である。
深部を温めて治そうと、透熱灸を何回か試してみたけど、すぐに熱くなっちゃって、多壮灸にならない。
それで、お腹に鍼を打つことにしたのである。
鍼の響きが内臓痛のときとは違う。
不思議に思いながら、圧痛点に次から次へと深い鍼を打ちまくった。
そのあと立ち上がってみたら、腰の痛みがびっくりするほどやわらいでいた。
「峠を越える」という言葉がある。
病がどんどん深くなっていくときは、ものすごく苦しいのだけど、やがてターニングポイントが訪れる。
「あ、治っていく!」と気づく瞬間で、そこからみるみる回復に向かいだすのである。
腹筋への鍼が、今回の私のぎっくり腰のターニングポイントだった。
翌日には前傾姿勢での痛みがなくなったんだよ。
ムーブメント#11(膝を曲げて、足をお腹にくっつける)とき、痛みが起こるクッション(■)にも、次から次へと鍼を打った。
このあたりの筋肉が硬直していたから、ストレッチで痛みが出たんだね。 |
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鍼のあとはすっかり痛みが消えて、スムーズに曲げられるようになったんだよ。
ムーブメント#21(両足をそろえての前屈)で、以前の角度まで、普通に曲げられることが判明した。
ストレッチをやっていると、自分の身体のどこに不具合があるか、すぐに発見できるという利点があるんだよ。
ちょうど1週間テニスを休んだ。
ズシンと来る痛みはなくなったけど、Tゾーン(■)の硬直は残ったままである。
自分で鍼を打つのも限界なので、動いて治そうと思った。
テニスクラブに出かけたら、2人で練習しているグループがあったので、グッドタイミングだった。
1時間ぐらい練習をして、じっくりフォームの調整をした。
そのあとのダブルスで、1セット目は腰の塊のせいで、イマイチ動きが悪かった。
2セット目の途中で、T(■)の塊がほぐれたのを感じた。
同時に(心地よい)痛みがはじまった。
固まっていると痛みが眠る。痛みが出たのは、ほぐれた証拠である。
ここで無理をすると、また悪化するかもしれないので、そこで終わりにした。
「壊して、治して」、そんでやっと原因がわかるというのは悲しいけど、これが自己治療の限界なのである。
でも、「壊して、治した」おかげで、自分の腰でん部(+腹部)が、ぎっくり腰の前よりもほぐれているのを感じる。
スピンの回転量も上がって、ストロークはほぼコロナ前のレベルに戻った。
今日は、テニスのレベルは上がっていたけど、走りに走って強打をつづけたから、腰のあちこちにまた痛みが起こってしまった。
自分の目指すテニスに見合うだけの体力と筋力を取り戻すのは、もうちょっと先のことになりそうである。
相変わらずの私の、細かいぎっくり腰の報告にうんざりしている人もいそうだね。
すべてをきっちり一覧表にして、ぎっくり腰のページを書き直したいものである。
もうちょっと待っててね。すべきことが山積みなんだもの。。。 |