症例45・(筋肉の)つり
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<硬くなった筋肉をほぐすと、つらなくなる>
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筋肉に稲妻が走る
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私のカンジでは、「つり」は、筋肉の雷です。大量の雲がモクモクと出てきて、空が真っ黒になる。エネルギーが重積されて、バリバリッと放電。稲妻が走る現象と似ています。
筋肉は電気刺激で動きます。脳からの指令が、インパルスという電気刺激となって神経線維を伝わり、筋肉を収縮させるのです。
筋肉は縮むことで働きます。筋疲労を回復させないまま、筋肉を使いつづけると、筋肉は固まったまま、どんどん縮んでいきます。中を通っている血管が圧迫されて血流が悪くなり、溜まった疲労物質の代謝が悪くなります。ますます筋肉が固まっていくという悪循環に陥ります。
筋肉の重積は入道雲のようなものです。意志とは無関係に、突然、大量の電気が放出され、キュキュキューと一気に筋肉の収縮をおこします。
それが、筋肉のつりであると私は考えています。 |
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つるのは筋繊維の一部
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自分で自分にハリを打っていたときのことです。変な格好をして、右ひざを立てていたら、右のふくらはぎがつりはじめました。腓腹筋の一部が、メリメリと縮んで行き、深い溝ができたようになりました。
筋肉全体がつったのではなく、幾筋かの筋繊維が縮んでいったのです。それ以上縮ませないように、筋肉を伸ばしてがんばっていたら、そのままおさまりました。
面白い現象でしたが、つりがおさまって良かったです。
昔、好奇心に駆られて、最後までつらせてみたら、すごい痛みで卒倒しそうになりました。そのあと、硬くなった筋肉を治療するのが大変でした。
収縮は最小限に抑えていたほうがいいですね。目覚めているときはまだしも、眠っているときに突然おこる「つり」は、相当つらいようです。 |
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鍼灸治療は即効性がある
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筋肉は全身にあります。手や足の指ですら、つることがあります。軽度の場合は、カマヤミニ程度のお灸で簡単に治ります。自分でもできます。
一番多いのがふくらはぎのつりです。大人の場合は、全身の疲労を回復させなければならないので、経絡治療をします。
局所治療のためには、まず、つる筋肉の中で、とくに硬くなっている箇所を探さなければなりません。その筋繊維を目がけて、いくつかのツボを取り、ハリを深く打って、しばらく置鍼します。
そのあと、カマヤミニなどでお灸をします。重症の場合は、ハリに電極をつないで、パルス治療を行います。
筋肉がほぐれれば、もうつらなくなります。適度な運動も大切です。いったん治っても、またつりそうになることもあるので、筋肉を柔らかく弾力のある状態にしておくことが大切です。 |
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重症のつり
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2011年2月に来院したM君(当時16歳、男性)は、1年前から、両足のふくらはぎのつりで悩んでいました。
高校1年生の剣道部員だったのですが、歩いているときに、突然に、両ふくらはぎがつって、「ころげまわってしまう」そうです。彼を連れてきた友人が、「体育館で急にころんじゃうんですよ。のたっているのを見ると、かわいそうだけど、笑っちゃうんですよ」と、気の毒がっていました。
何度もつりをくり返すと、どんどん筋繊維が硬くなります。そこをかばって、他の筋肉も無理をしてしまうことになります。
M君の両方のふくらはぎは、カチンカチンになってしまっていました。 |
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ふくらはぎに集中治療
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M君は高校生なので、ふくらはぎだけを治療しました。うつぶせになってもらい、まず、両足の腓腹筋にパルスをかけました。次に、横方向から、ヒラメ筋にパルス、次に、腓腹筋の中央のラインにパルスをかけました。
まだ、筋繊維の硬いスジが残っています。右を上にして横になってもらい、左足の内側と、右足の外側に、ずらりと深いハリを打ちました。左上になってもらい、同じことをしました。
足がパンパンになってしまったので、ふくらはぎ全体にカマヤミニをし、足の末端方向に糸状灸などをして、気を流しました。 |
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溜まっている邪気を流す
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ハリとお灸の合間に、手技を使います。筋肉を手でほぐしながら、硬いところを探し、そこに追加の治療をします。私の手技は、古方按摩とスポーツマッサージを組み合わせたものです。経絡の流れにそって、遠心性に気を流します。
こりの重積しているところに、ハリやお灸をするだけでは、溜まった邪気がそのまま残ってしまいます。出口を作ってあげて、邪気を流す必要があります。
M君は、「自分はチキンで、すごい怖がり」と言っていたのですが、「治るのなら」と、ハードな治療に耐えました。徹底的な治療が効いて、1回で治り、それ以来、つらなくなったそうです。 |
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< 症例52「ふくらはぎ(腓腹筋とヒラメ筋)」、症例54「ふくらはぎ(後脛骨筋)を参照してください> |
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