FAQ
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<Q20 キネシオ・テーピングのやり方 > |
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運動機能力学を利用したテーピング
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スポーツ・テーピングにはいろいろな種類がありますが、私のお気に入りはキネシオ・テーピングです。ここでは、メーカーとは無関係に、「キネシオ」を「伸縮性のあるテープ」という意味で使っています。
キネシオは、キネシオロジー(運動機能力学)からきているそうです。筋肉の収縮を助けて、「動いて治す」のがキネシオ・テーピングです。
運動につかう骨格筋は縮むことで働きます。伸縮性のあるテープを、筋肉にそって伸ばして貼ると、伸ばされたテープは「縮もう、縮もう」とします。少ない力で大きく動かせるので、傷んだ筋肉への負荷を軽くします。筋肉を守りながら、筋力を維持しながら、前向きに治すことができるのです。
筋肉を使いすぎて疲労が蓄積すると、筋肉は硬くなって縮んでしまいます。内部の血管が圧迫され、血流が悪くなります。血液が滞ると筋肉はますます硬くなり、硬くなるとますます血管が圧迫されるという悪循環が生じます。
筋肉が収縮をくり返すと「筋ポンプ作用」で内部の血流が良くなります。新しい血液が送り込まれ、疲労物質を中和し、澱みを押し流して、回復が早まります。
どこに貼ったらいいのかは、障害の部位によって違います。患者さんと一緒に、どこにテーピングすれば楽になるか、あれこれ貼って試してみます。効果的なテーピングを見つけたら、今は便利な写メで撮ります。1人になると、「あれれ?」と忘れてしまうことが多いからです。
自分で自分に貼るときも、貼ってみて、動いてみて、楽に動けるテーピングを見つけましょう。貼り方の参考例をいくつか紹介しましたが、今後もちょっとずつ増やしていこうと思っています。 |
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可動域を維持する
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組織の損傷が激しいときはギブスで固定が必要かもしれません。固めることで筋肉の収縮を止め、安静にして組織が修復されるのを待つのです。
でも固定して筋肉を動かせなくなると、血流が止まります。血液の中の白血球やリンパ球などが組織を修復するので、治癒が遅れます。筋力も低下するし、可動域も狭まってしまいます。
関節の運動にはたくさんの筋肉が関わっています。いろんな部位にくっついて、いろんな方向に走行して、みんなで共同運動をしています。それぞれが別の方向に収縮するおかげで、複雑で微妙な動きが可能になるのです。
障害がおこった筋肉は硬くなって縮みます。筋肉が「ギブス化」して、痛んだ部位を守ろうとするのです。固めて痛みが消えた・・・と思っても、痛みは眠っただけ。神経の「閾値」が上がって鈍感になってしまった結果です。
筋肉が1本でも硬くなると、共同運動をしている他の筋肉もつられて固まってしまいます。可動域が狭まると複雑な動きができなくなり、ついには関節が歪んでしまいます。関節が1つでも歪むと、他の関節にも次々と歪みが波及します。
長い間そのままでいると、ついには筋肉がみんなで癒着してしまいます。(鍼と透熱灸で癒着を治療できますが、たいへんな長丁場になります)
可動域の維持はとても大切です。100以上もある骨格筋がそれぞれ別個に自由に動けるか、それとも固まって同じ方向にしか動けなくなるか・・・、しなやかな身のこなしは関節の可動域に関わっているのです。 |
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貼って、動いて治す
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テーピングをしてじっと安静にしていたら、キネシオの効果は出ません。キネシオ・テープを貼ったら、どんどん動いてください。
スポーツなどをやっている場合は特に、筋力を維持することは重要です。休んでいる間に筋力が落ちると、「さあ、治った」と思っても、運動を再開したときに、弱った筋肉では復活前と同じことはできません。
無理がかかって、また同じところを傷めたり、フォームが崩れたりする心配があります。
筋力をつけながら治せるのがキネシオのいいところです。
また、キネシオを予防の意味で使うこともあります。
56歳でテニスにハマッたときは、それまでインドア人間だった私には筋力がぜんぜんありませんでした。目標とするテニスに見合うだけの筋力がつくまでは、故障の連続でした。テニスのあとはまずお灸、それからビールという毎日がつづきました。
鍼やお灸だけでなく、キネシオ・テーピングのおかげでほんとうに助かりました。「ちょっと痛い」ときにテーピングをして動くと、そのまま治ってしまうこともあるのです。
少しだけ例をあげると・・・
サーブのフォームの改造に取り組んでいたら、ついに腕が上げられなくなった |
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疲れ果てた筋肉にテーピングをして、4日連続の特訓を乗り越えた |
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サーブ&ダッシュの練習のやりすぎで、軸足の左足に負荷がかかった |
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翌朝ハムストリングスに痛みが出ていたけど、テーピングだけで治った |
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ゲーム中にふくらはぎがつりそうになった |
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途中でテーピングしたら、つらなくなった |
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日常生活に支障が出るときは、テニスなどの激しいスポーツはお休みしましょう。障害部位をそのままにして無茶をすると、こじらせてしまい、かえって長引く結果になります。
きれいに治してから再開したほうが将来のためになります。 |
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どの筋肉に貼るのか?
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キネシオ・テーピングには3つの考え方があり、目的に応じて、組み合わせて貼ります。 |
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① |
障害のある筋肉を助ける |
痛めている筋肉に貼るというのが基本です。どう動くと、どこに痛みが出るのかを、よく観察してみましょう。筋肉に沿って、患部を守るラインに貼ります。貼ってみて痛みがでるようなら、すぐにはがして、②を考えましょう。 |
② |
障害のある筋肉を、助けている筋肉を助ける |
筋肉には、大きな筋肉と小さな筋肉があります。大きな筋肉とは、関節を動かすために大きな力を発揮する、主たる筋肉です。
小さな筋肉の障害のとき、そこをメインにテーピングをすると痛みが出る場合があります。大きな筋肉にテーピングをすると、障害のある筋肉が、楽をして動くことができます。 |
③ |
可動域を制限する |
捻挫などの場合は、傷ついた靭帯を保護しなければなりません。そういう場合は、関節の動きを制限する方向にテーピングをします。 |
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テープの太さ
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オーソドックスなのは 5cm 幅のテープですが、私は
2.5cm 幅を愛用しています。
細いほうが扱いが楽です。あれこれ貼ってみて試すので、失敗しても経済的です。
太く使いたいときは、テープを組み合わせればいいのです。強くしたい場合は、少し隙間をあけて並べて貼ります。
テープを重ねるのはリスクがあります。運動の途中ではがれてしまったら、汗をかいた肌に、もうキネシオはくっつきません。テープを離して貼れば、剥れるのは1本ですみます。
ひざ痛によく使われる「大腿四頭筋テープ」は、5cm 幅のテープを Y 字にカットして使うのですが、2.5cm 幅を2枚貼るほうが簡単です。
肩が痛いときによく使う「三角筋テープ」もそうです。太いのをハサミでカットを入れて使うより、前に1本、後に1本、組み合わせるほうが簡単です。
ちなみに肩にはいろいろな筋肉がくっついて共同運動をしているので、障害部位に応じて様々のテーピングを組み合わせましょう。 |
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太くしたいときは・・・ |
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→ |
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5cm |
2.5 X 2 |
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*大腿四頭筋テープ |
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→ |
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5cm |
2.5 X 2 |
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*三角筋テープ |
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→ |
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5cm |
2.5 X 2 |
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テープの長さ
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テープの伸ばし加減には注意しましょう。あまり強く伸ばすと、圧がかかりすぎてしまいます。途中で切れてしまったり、かえって痛みが出てしまうこともあります。ちょっとだけ伸ばすのがコツです。10cm
のテープを 12cm ぐらいに伸ばして貼るのが目安です。
長いテープは難しいので、私はたいてい、 5~13cm
ぐらいの長さに切って使っています。なるべく短くしたほうが、簡単に貼れるし、失敗しても経済的です。
足首の捻挫のときによく使う、②の「歩行を助けるための前脛骨筋テープ」は、かなり長いので、ゆっくりと伸ばしながら、慎重に貼らなければなりません。自信のない人は、半分に切って、上半分と下半分に分けて貼る、という方法もあります。 |
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貼り方のコツ
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テーピングのコツは・・・
① |
角を丸くカットすると、剥れにくくなります。 |
② |
テープの端っこに一番圧がかかります。かぶれないようにするために、両端(●)1、2cmは伸ばさずに、皮膚に「置いて」ください。 |
③ |
中央(●)は伸ばしすぎると痛みが出ます。10cm→12cm
ぐらいに伸ばすのが目安です。 |
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↓ |
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① 角を丸く切り取る |
② ●端っこは「置く」 |
③ ●ちょっとだけ伸ばす |
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テープを貼りっぱなしにして、もしも皮膚がかぶれてしまったら、もうテーピングはできません。貼っている時間をできるだけ短くして、肌を休ませてあげましょう。運動する前に貼って、終わったらすぐはがします。
足首の捻挫は、眠っている間に変な動きをして、朝、痛みが増している場合があります。可動域を制限するテープだけは、寝ている間も貼りましょう。お風呂に入る前にテープをはがし、しばらく肌を休ませてから、就寝前にまた貼るといいです。
長時間、長期にわたってテーピングをしたいときは、
5mm~1cm ぐらいの細いテープを作り、毎回ラインを変えて貼ります。お灸の水ぶくれなどがある場合にも安心です。強い力はありませんが、日常生活では安心です。 |
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テーピングの例 |
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●が患部です。使用するテープ( )は2.5センチ幅です。 |
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足首のねんざ(左足外果の場合) |
①患部(●)を守る |
捻挫のときは、動き( )を制限する方向にテーピング |
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外果の上方 足底 |
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補強するときはもう1本 |
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②患部(●)を守るためにかばって動く筋肉を補強するテーピング |
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酷使する筋肉を補強する |
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*可動域を維持 |
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*動いて治す |
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前脛骨筋と長母指伸筋 |
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足の母指 脛 |
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膝の痛み(右ひざの内側の場合) |
①膝の内側(●)に痛みがあるときは、内転筋を補強する |
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太ももの内側 |
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太ももの内転筋は股関節や鼡径部からはじまって、膝の下に付着している |
↓ |
筋肉が硬直すると付着部を引っぱって痛みが出る |
↓ |
内転筋を補強するテーピングで、患部(●)への圧を減らす |
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内転筋に沿って 膝下 |
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補強するときは
もう1本 |
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②膝を支えている筋肉を補強する |
患部(●)につながる筋肉だけでなく、膝を支えている筋肉全体を補強することで、捻挫、靭帯損傷、半月板損傷など、いろいろな障害に対応することができます。 |
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前面=「大黒柱」を補強 |
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太もも前面の大腿四頭筋
(皿を囲むよう貼り、皿の下で終わる) |
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↓ |
「大黒柱」として働く |
↓ |
膝を支え、動かしている最強の筋肉を助ける |
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大腿四頭筋に沿って 膝下 |
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後面=「裏方」を補強 |
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上方にはハムストリングス、下方には腓腹筋など、多数の筋肉が複雑に交差 |
↓ |
「裏方」として働く |
↓ |
患部を守るために過緊張し、弱ってしまう筋肉を助ける |
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ハムストリングス 膝下 |
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Updated: 2021/6/28 <初版 2010/12/19> |
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