FAQ
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<Q25 コロナ対策:風邪治療マニュアル> |
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ウィルスは滞った古い血が好き
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患者さんたちはみなさん、「鍼灸をするようになったら、風邪を引かなくなった」と言います。免疫システムの発動を促す効果です。
(→FAQ23:鍼灸治療が効く理由)
鍼灸治療の効果はそれだけではありません。筋肉がこると内部の血管が圧迫され、血流が悪くなります。どうやらウィルスは滞った古い血の中を好むらしく、そこを足がかりに人体に侵入していきます。筋肉がほぐれて新鮮な血液が送り込まれると、ウィルスは居心地のいい場所を失います。
「風邪を引く」は、英語で"catch cold"、スペイン語で"resfriado (=coger frío)"と、どちらの言語も「冷え」と「風邪」を同じ単語で言い表しています。漢方では「寒」ではなく「風」の邪なのですが、中国の気候風土との関連でしょう。
滞った血液は「冷え」ます。局所的な「冷え」を取りのぞくと、ウィルスの入り口を封じることができますし、コロニーを作りにくくさせることもできます。
何百回も風邪を引き、何十年も自分や患者さんの風邪の治療をしてきました。私にとって、風邪はすぐ隣に住む「お友だち」でもあり、行く手を阻む「ライバル」でもありました。新型コロナが到来したので、昔さんざん活用した風邪治療の小技などをイラスト入りで解説しました。 |
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ウィルスとの戦いの進行は?
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「冷え」を感じたり、喉や鼻がムズムズしたりしても、まだ「感冒」で、「風邪」ではありません。着るものと、運動、温かい食べ物で体温を上げ、ウィルスに侵入の隙を与えないようにしましょう。 |
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喉や鼻の奥がガサガサしたり、身体のどこかが「冷え」たり、筋肉が重いと感じたり、皮膚がピリピリ過敏になったり・・・は、ウィルスが侵入しはじめた証拠です。水際で撃退しましょう。 |
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ウィルスが侵入して増殖すると、免疫システムが本格的に発動します。「悪寒」は「発熱」の前兆。体温を上げてウィルスを退治します。ウィルスの死骸や老廃物を「発汗」で排泄しましょう。 |
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ウィルスの勢いが強いと、熱がどんどん上がり、節々の痛み、咳、喉の痛み、鼻水、鼻詰まりなど、完全に風邪症状に苦しめられるでしょう。ウィルス戦に集中するため、できれば寝込んで戦いましょう。 |
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苦しんでる最中に、ずーっと自分を観察してると、「あ、今、どん底から浮き上がったな」と感じる瞬間があります。免疫力がウィルスに勝った折り返し地点です。どんどん快方に向かっていきます。 |
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風邪治療の小技で用いるツボ
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A |
大椎 |
A’ |
陶道&身柱 |
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B |
合谷 |
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C |
商陽 |
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D |
飛陽 |
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E |
のど |
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F |
天突+郄門 |
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督脈という経絡が背面の中央を流れています。
背骨を構成している椎骨には、後方に棘突起というでっぱりがあります。でっぱりとでっぱりの間の、へこんだところにツボがあります。
「大椎=A(ダイツイ)」というツボは、頚椎と胸椎の間にあります。
首を左右に回して動くのが頚椎、動かないのが胸椎です。へこみを指で押さえながら首を動かしてみて、境目にある大椎を見つけましょう。 |
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大椎は「風邪=ふうじゃ」の入り口と言われ、風邪の引きはじめに多壮灸をすると効果的と言われています。
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自分で多壮灸をするのは不可能なので、試しに金粒を貼ってみました。風邪を引きそうなときに貼ると、引かずにすむことを発見しました。
11月の寒い日に、赤城山にツーリングに出かけたことがあります。
風邪を引いて、38度以上の熱があった22歳の男性がいました。主催者なので無理して来たそうです。 |
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大椎に金粒を貼ったら、山頂に着くころに治ってしまいました。
帰り道、別の22歳が「うつったみたい」とのことで、大椎に金粒を貼ったら、そのまま治ってしまいました。 |
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当時は病院でリハビリをやっていました。その話をしたら、入院中のお年寄りたちが「自分もずっと風邪を引いている」と大騒ぎになったので、みなさんに貼ってあげました。でも効果はゼロでした。年齢と関係がありそうです。
私の感覚としては、ウィルスの入り口を金粒で塞ぐ、という感じです。温める効果もありそうで、ステージ1と2で有効です。大椎の下にあるツボ、「A’=陶道、身柱」などのへこみも利用して、いつも3ヶ所に金粒を貼っています。
首や肩がこっていると冷え、ウィルスの入り口( )になります。肺に関係する(●)風門や肺兪なども近くにあり、このあたりを温めるのも風邪予防の秘訣のひとつです。 |
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親指と人差指の間には、大腸経の「合谷=B(ゴウコク)」というツボがあります。真ん中あたりを人差指に向かってグイッと押すと、奥にゴロリとした塊があって、かなり痛いのですぐに見つけられます。
合谷には深くて大きな気のプールがあります。押して痛いのは、気が滞って澱んでいるからです。邪気が流れ去ると痛みがなくなります。 |
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B:合谷に多壮灸 |
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合谷に灸点紙をしいて、その上にもぐさをのせて火をつけます。小さく細くひねったもぐさからはじめ、灰の上にお灸を重ねていきます。灰の量にあわせて、少しずつもぐさを大きくしていきます。熱が深部に到達するとものすご~く熱いので、「熱い!」と感じたところで終わりです。ステージ3と4で有効です。
38度以上の熱があって、喉が腫れて苦しくて、風邪の勢い真っ盛りのときに、合谷に多壮灸をしました。熱さを感じるまで50壮ぐらいお灸を重ねたら、顔面の重みが軽くなりました。右の合谷のお灸のあとは、左わきの下の体温が4分下がり、左の合谷では右わきの下の体温が4分下がった、という効果もありました。
手や腕の要穴への多壮灸は、顔面の炎症を引っぱる効果があります。歯痛のときの合谷への(鍼や)多壮灸、口内炎のときの手の三里への多壮灸なども有名です。
もぐさの煙は呼吸器に効果的です。ゆっくり吸い込んで、喉や鼻に行き渡らせます。はじめは匂いがわからなくとも、だんだん嗅覚が戻っていきます。 |
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「商陽(C=ショウヨウ)」は大腸経の井穴で、人差指の母指側、爪際のすぐ近くにあります。井穴は、名前の通り「井戸」のようなツボで、経絡(十二正経)の発着点になっています。
大腸経に風邪が入り込んだ瞬間に、商陽から邪気を抜くと、引かずにすむという、古来から伝わる有名な治療法です。 |
大腸経は「陽」で「陰」の肺経と対をなす経絡です。「病は陽から入って陰に留まる」ので、風邪が入り込んですぐは、まず大腸経に変動が起こります。
経絡に邪気が入ると、気の流れが滞ります。さらさら流れる小川は澄んでいますが、障害物が滞留すると流れが悪くなります。流れが悪くなると澱んでしまい、ますます流れが悪くなるという悪循環が起こります。
「気」が血液を運んでいます。邪気がたまると血液が滞り、どろどろに固まってしまいます。指には動脈も静脈も1本ずつしか通っていないので、どろどろを溶かして静脈に導入するのに時間がかかります。
溜まった邪気を取り除くと、経絡全体に大量の気が流れます。さ~っと風が吹く感じで、経絡の大掃除ができるのです。ステージ1と2で即効性がありますが、そのあとでも風邪の重さが軽くなるという効果はあります。 |
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飛陽(D=ヒヨウ)は膀胱経のツボです。はじめて飛陽の効果を知ったのは鍼学校の1年生のときでした。
風邪のあと鼻づまりがつづいていたとき、中国の古典に「鼻塞がるときは飛陽に」という記述があると授業で教わりました。
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後から |
前から |
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皮内鍼を貼ってみたら、しばらくしたらスーッ鼻が通りました。驚くほどの効果でした。
3日後、車の運転中に、『もういいだろう』と皮内鍼をはがしたら、いきなり鼻がつまって息苦しくなってしまいました。
家に帰って貼ったら、また鼻が通ったのでした。 |
銀粒に出会ってからは、皮内鍼をやめました。効果は同じです。知らないうちに剥れて床に落ちたりしても、銀粒なら踏んでも安心です。
風邪の鼻づまりだけでなく、花粉症の鼻づまりや蓄膿症にも効きます。子どもの頃から鼻炎持ちだった私ですが、飛陽を知ったおかげで鼻づまりとは無縁になりました。
自分でやるときは、横坐りでツボを取りましょう。私の「飛陽」は膀胱経よりも胆経に近く、足の外側面のほぼ中央に位置しています。
下腿を眺めて、縦からみても、横からみても、ちょうど真ん中あたりです。
そのあたりを人差指で軽く押して、鼻だけでスースー息をしてみます。ちょっとでも鼻の通りがいい部位を見つけたら、爪楊枝のお尻を使ってピンポイントのツボを探し、そこに銀粒を貼ります。
剥れたら次は右に、また剥れたら次は左と、交互に貼りましょう。 |
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遠隔治療はバランス療法です。銀粒は必ず1ヶ所だけにして、他の部位には貼らないようにしましょう。2ヶ所以上同時に貼ると、効果が相殺されてしまいます。 |
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風邪の引きはじめに、喉のあちこちにコロン、コロンと塊が出現することがあります。
喉にはたくさんのリンパ節があります。ウィルスや細菌などの病原菌が体内に侵入するのを、水際で防ぐ門番のような存在です。
コロンの上に金粒を貼ると、腫れが引いていきます。 |
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2・3日もすると、絆創膏がはがれてしまうのですが、その頃には腫れも引いています。金粒が「魔を潟す」のか「温める」のか、理由はわかりませんが、効果はあります。
局所治療で使う金粒は何個貼ってもOKです。指で押してコロンを探し、てっぺんに貼りまくりましょう。
鍼灸ではありませんが、「駆風解毒湯」という漢方薬を愛用していたことがあります。効能は扁桃炎(のみ)で、扁桃腺の腫れに即効性があります。
腫れはじめに効くだけでなく、声も出せないほどに腫れたときに、数時間で腫れが引いていったという経験をしたこともあります。 |
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咳が出るのは、毒素を体外に排泄するための免疫反応です。喉や気管支や肺に入った異物を押し出すためなので、やたらに止めるのは考え物です。
とはいえ空咳(カラセキ)はとても苦しい。ある日、テレビで映画を見ているとき、ひっきりなしに咳が出て、呼吸する間もないぐらいになってしまいました。咳を止めるツボはないかと、あちこちに鍼を打ってみました。
肺経ではなく心包経の郄門に打ってみたら、なんと空咳が止まったのです。寸3の一番鍼、つまりとても細い鍼を0.5ミリほど浅く刺しただけです。
置鍼している間は咳が止まるのですが、抜いてしまうとまたはじまります。郄門に銀粒を貼り、ついでに天突に金粒を貼ってみたら、そのまま空咳の苦痛から免れることができました。
「空咳」は文字通り「空しい咳」で、刺激に対する過剰反応です。苦しいだけでなく、体力も消耗します。でも、必要な「咳」もあります。
F(天突+郄門)をセットで使うと、ウィルスの死骸や老廃物を「痰」にくるんで排泄するという、「咳」本来の目的を助けることができます。
1999年、父の食道癌が肺に転移したとき、痰の排泄を促すことができ、末期の苦痛を緩和する一助になりました。(もうひとつは古方あん摩です)
●=セットで使う |
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銀粒→郄門(心包経) |
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心包経は中指~手の平~手首~前腕~肘~と、内側の中央を流れています。
手首と肘の間、中央からすこし肘寄りに郄門があります。皮膚の上を軽くなでて、少しくぼんだ所にあります |
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金粒→天突(任脈) |
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左右の鎖骨の間、胸骨の上方、喉の下方のくぼみにあります |
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局所的な冷えをお灸で取り除く
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上述したように、「風邪」と「冷え」は密接な関係があります。人によって、環境によって、冷えやすい部位が異なります。自分の身体を観察して、冷えやすい部位を見つけましょう。
ステージ1や2で、「あ、風邪を引くかも・・・」というときに、衣服や食べ物で暖まるだけでなく、カマヤミニなどのお灸で冷えを取り除くと即効性があります。
鍼灸治療をするようになって、下半身の冷え症から解放されたものの、次に悩まされたのが腕の冷えでした。
右の図は、腕から風邪を引きそうになったときに、私がやったカマヤミニの一例です。
とくに経絡とは関係なく、冷えているところに片っ端からお灸をのせました。
タイミングを逃すと、風邪に入り込まれてしまいますので、気がついたらすぐにやりましょう。
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カマヤミニ(弱) |
使われてるもぐさは、葉や茎が混入した粗悪もぐさです。間接灸用なので、中身を取り出して肌に直接のせるのはNGです。 |
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体温を上げてウィルスを阻止する
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新型コロナは、若い人が軽症ですみ、老人が重症化するタイプです。
母が肺炎で入院したとき、付き添ってきてくれたホームの看護師さんが、「お年寄りって、風邪を引いても肺炎になっても、熱も出なければ咳も出ない。気づいたときは肺が真っ白になっていて、すでに手遅れということがよくあるんですよ」と教えてくれました。
老人と若者は免疫力の強さだけでなく、「体温」にも違いがあります。昔から「体温の高い人は病気になりにくい」と言われています。
若い人ほどよく動きます。お年寄りに、「そのイスから、こっちのイスに移動してください」と言うと、最低限の動作で目標に向かいます。
子どもはひと時もじっとしていません。座っている間にも、足をぶらぶらさせたり、身体をくねくねさせたりします。移動の途中も、ぐるぐる走り回ったり、ジャンプしてみたりと、無駄な動きをたくさんします。
この「無駄な動き」が若さの秘訣です。動けば体温が上昇します。省エネの活動は、棺おけ街道一直線なのです。
運動をする、大声でおしゃべりをする、笑う、歌う、大騒ぎをする・・・など、動いて、動いて、動きまくって、体温を上げて免疫力を高めましょう。
体温を上げるために、食べ物の力を借りましょう。
地の気をくみ上げて育った野菜には癒しのパワーがあります。旬の野菜でスープを作って、熱々を食べます。
時間のないときは、インスタントネギ味噌スープ(→)がおすすめです。お椀に刻んだネギをたっぷり入れて、味噌と花かつおをのせ、熱湯を注ぎます。半生のネギの芳香が鼻をすっきりとさせるという効果もあります。
無農薬野菜が手に入ればベストです。 |
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体力があるうちにウィルスと戦うべし
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20代後半に葛根湯に出会いました。風邪の引きはじめに用いる漢方薬で、「発汗を促して、毒素を体外に排泄する」効果があるそうです。「引きそう」というタイミングで飲むと、引かずにすむのです。でも、ウィルスを殺すわけではありません。
ウィルスは体内にとどまって、宿主の免疫力が下がるときを狙ってます。1週間、2週間と持ちこたえても、コロナが勢力を拡大するときがやってきます。コロナとの駆け引きがつづいたために、私自身が消耗しています。体力が落ちてしまって、かえって風邪が長引いてしまうという結果になりました。
ウィルスとの戦いは、体力があるうちにやるのが一番です。水際で侵入を阻止できなかったら覚悟を決めましょう。体内のウィルスと徹底抗戦です。
鍼灸治療は「どうやったら治せるか?」を身体に教えるのが仕事です。戦いが楽になるので、紹介した小技を活用してみましょう。 |
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「発熱」でウィルスを殺し、「発汗」で排泄する |
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ゾクゾク寒気を感じるのは、脳の体温中枢が『体温が低すぎる』と判断して、『寒いぞ』と身体に伝達し、体温を上げる命令を出すためです。
「発熱」は体温を上げて病原菌を退治しようとする免疫反応です。病原菌は生き物なので、熱に弱いのです。
解熱剤を使って体温を下げると、せっかくの免疫反応を阻害してしまいます。熱が上がったり下がったりをくり返すと、体力も消耗します。ぐずぐず長引かせるよりは、一気に熱を上げて、さっさと退治に取りかかるほうが早道です。
昔ながらの風邪の治療法、「温かくして体温を上げ、発汗して病邪を体外に追い出す」のが、一番理にかなっているのです。
私のお気に入りの戦い方を紹介します。ウィルスの増殖に気づいたら、熱いお風呂に入ってじっくりとあたたまります。寒気がしているときは、ちっとも温かさを感じないのですが、それでもがんばります。そのあと私は大好きな冷たいビールを飲むのですが、美味しいだけじゃなく、発酵食品の効果にもちょっと期待してます。
そのまま寝床に入ります。おふとんにしっかりくるまって、湯たんぽを入れて、どんどん汗をかいて眠ります。対ウィルス戦に集中するのです。
ウィルスの死骸や壊れたリンパ球など、毒素が混じっているときはネトネトした汗が出ます。背中に乾いたタオルを入れたり、首に巻きつけたりするのもいいです。毒素で濡れた衣類はマメに脱ぎ捨て、乾いた綿製品に汗を吸い取ってもらいましょう。 |
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苦労して勝ち取った免疫が真の戦友になる
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20代の前半まで、毎月40度の熱を出しました。上の2人の男の子たちも同じで、3人そろって毎月寝込んでいたのです。転機は無農薬野菜でした。「ウィルスに効く薬はない」と教わったので、薬は一切使いませんでした。自然治癒力で治る、という経験を積み重ねることで自信がつきます。風邪を引くのは年に2回になりました。
次の転機は鍼灸治療でした。風邪を引くのは年に1回に減りましたが、それでもしょっちゅう「あ、引きそう」という状態をくり返しました。そのたびに新たな小技を発見してきたのです。
でも、炎天下でテニスをするようになってから、1回も風邪を引いていません。それどころか、「引きそう」になることすらなくなりました。
昔から「日に焼けると風邪を引かない」と言われているそうです。紫外線の効能なのかもしれませんし、運動して汗を流す効果かもしれませんし、自律神経が鍛えられて、体温調節機能が向上したおかげかもしれません。それとも、何百種類もあるコロナウィルスのすべてに感染して、それぞれの抗体を手に入れたのでしょうか。
ワクチンを使ったり、薬で症状を抑えると、中途半端な免疫しか得られません。
心も身体も原理は同じです。つらい思いをして勝ち取った経験は真に自分のものになります。でも、現実から逃げたり、自分をごまかしたりして、中途半端な体験で終わると、何度も同じ目にあうことになってしまいます。
薬を使わずに、自力で勝ち取った免疫は強いのです。苦しい思いをしてウィルスと戦ったあとは、勝利の栄冠がその後の自分を助けてくれるはずです。 |
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RNA型ウィルスは変異のスピードが速い
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コロナだけでなく、インフルエンザウィルスも「風邪」を引き起こします。最近はどのウィルスに感染しているのか検査できるそうですが、タイミングを逃すと識別は難しく、ほとんど区別ができないようです。どちらもRNA型のウィルスです。
生物はDNAとRNAの両方を持っています。2本が協力して、自分を複製して子孫を残します。でもウィルスは半生物で、どちらか片方しか持っていません。取り憑いた宿主の細胞成分を借用して増殖するのです。
DNAは堅牢で優秀で、めったに間違うことなく正確に自分をコピーします。RNAは小さくて脆くて、ミスコピーを連発します。
コロナもインフルエンザも、RNAしか持っていないRNA型のウィルスなので、コピーするたびに変異を生み出します。人類の1万年分を1日で進化してしまうそうです。
ウィルスや細菌は原始的な存在で、出会った者同士で遺伝子交換をするそうです。誰かがある薬に対する耐性を手に入れると、「お前いいもの持ってるな」と、みんなが同じ耐性を分け合うことができるのです。
これまでのコロナウィルスは肺に巣を作れませんでした。風邪のときにお医者さんが抗生物質を処方するのは、体力が落ちているときに、肺炎球菌などの細菌がもしかしたら元気づいて、肺炎を起こすかもしれない・・・という用心のためです。
ウィルス自体の変異のスピードがとてつもなく速いのですが、それに加えて、新型コロナの「肺に巣を作る」能力を、他のコロナたちが遺伝子交換で手に入れる可能性もあるのです。 |
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インフルエンザ・ワクチンの現実
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コロナのワクチンはまだ開発途上なので、同じくRNA型で変異のスピードが速いインフルエンザウィルスのワクチンの状況から類推してみましょう。
昔ブログで紹介した(→2008/10/26)母里啓子さんの「インフルエンザ・ワクチンは打たないで!」(双葉社)を読んでみてください。
インフルエンザに自然に感染して得る抗体の寿命は5年です。流行時に人中に出て、大量のウィルスにさらされると、「バースト現象」が起こります。感染しても無症状(不顕性感染)で、そこからさらに5年、抗体の寿命が更新されるのです。
ゲットできた獲得免疫の抗体は喉や鼻の粘膜にもできるので、入り口でウィルスを察知して撃退、体内への侵入を阻止することができます。
ワクチンは注射なので、血液中にしか抗体ができません。ワクチンを打っても感染するのは、ウィルスがノーチェックで体内に侵入できるからです。
ワクチンは数ヶ月先に流行しそうなタイプを予測して作られますが、一日で一万年も進化するウィルスです。予測は現実的に不可能です。
ワクチンでできる抗体は応用力が低く、型が異なるウィルスには対応できません。得た抗体は数ヶ月で消滅するので、数カ月おきにワクチンを接種する羽目になります。
自力で獲得した抗体は寿命が長いだけではなく、「交差免疫」といって、型の異なるウィルスに対しても対応力があります。まったく別種の病原菌にも対応できる力があるらしいという説もあるんですよ。 |
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「ワクチン接種済み」がパスポートになる日が怖い |
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政治家やマスコミは「ワクチンさえできれば大丈夫」と、さかんに喧伝をしています。普通の薬は病人にしか使えませんが、ワクチンは健康な人に接種します。なので市場が大きく、製薬会社や投資家にとってはとても魅力的なのだそうです。
でも、副作用の危険は避けられません。新型インフルエンザのワクチンでは全国で800人も副作用で亡くなったそうです。
病気で死ぬかもしれない人に対してなら、副作用のリスクと天秤にかけて、薬を試してみることもありえます。でも、その病気にかかるかどうか分からない健康な人に打つワクチンは、安全性が何よりも優先されます。
日本では一般人がインフルエンザのワクチンを接種しています。受けるかどうかは自由意志のはずですが、周囲の思惑から接種せざるを得ない人がたくさんいます。
介護の現場では職員に強制的に接種されています。うちの母が向精神薬の副作用で植物人間寸前になったあと、6年半リハビリに通いました。病院と老健ではワクチンをしない自由が許されましたが、特養では「やらないと入所できない」と言われました。
「自粛警察」という、お互い同士を監視しあう日本人の特性を考えると、今後のことがとても心配です。
「ワクチン接種済み」の証明書がないと出入りを拒否される、そういう時代が来たらどうしよう・・・、と今から戦々恐々としています。
変異のスピードの速いウィルスに、ワクチンは不可能で、見果てぬ夢なのです。副作用のリスクを選ぶか、自然に感染するリスクを選ぶか、自分で選択ができる世界であってほしいと願っています。 |
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「人事を尽くして天命を待つ」の心
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1918年のスペイン風邪では、世界中で4000万人が、日本でも38万人が亡くなったそうです。死亡率は20%だったのですが、ほとんどが若い人たちでした。免疫力の強い人が、免疫反応の激しさで亡くなったのでした。
今回の新型コロナは、若い人は軽症ですみ、お年寄りが重症化するタイプです。免疫力の強い人ほど生き延びる確率が高いというのは、自然淘汰の理にかなっているので、根絶は難しいと思います。
コロナウィルスは何百もの種類があります。冬だけでなく夏風邪もあります。「今度の風邪は鼻にくる」とか、「お腹にくる」「咳が出る」「熱が出る」とか、みなさんが当たり前のように言い交わしてきました。その時々でいろいろなタイプの風邪が流行るのは、コロナウィルスの種類によって症状が異なるからなのです。
彼らは「自分」が生き延びることは一切考えていません。増殖しては死に、生き残りがまた増殖し、死骸の山をものともせずに、種の存続だけにひたすら邁進します。全員が特攻精神の持ち主なのです。
つくづくと思うのは、さすが霊長類。あらゆる生物の頂点に立つホモサピエンス=人間の免疫能力の高さです。スペイン風邪がどんなに恐ろしくても、80%の人間が生き延びて、まだまだ繁栄をつづけています。
新型コロナが私のところに来るとき、どんなタイプに変異しているのかはまだ未知数です。生涯を通して準備をつづけた私ですが、コロナに負けるかもしれません。
でも(ウィルスたちを見習って)、自分が倒れても、若い人たちが生き延びてくれれば、それも本望と思っています。 |
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