症例40・冷え症
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<冷えの治療は、鍼灸治療の基本>
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冷え症はつらい
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鍼灸治療は、冷え性を治すのが得意です。今まで、独立したページを書かなかったのは、あまりに当たり前すぎて、思いつかなかったからです。
「冷え」はつらいものです。足の冷え性に悩まされていた頃は、骨の代わりに凍った鉄の棒が入っているんじゃないの?という感じがしていました。お風呂やこたつで、さんざん温めても、ふとんに入るとスーッと冷える。いったん冷えたら、もうどうしようもない。また暖めるのは至難の業です。
ハリやお灸をすると、血行がよくなります。新鮮な血液は温かいので、つねに血のめぐりがいい状態であれば、冷え性とはさよならできます。
基本は経絡治療ですが、以下、いろいろなタイプの冷え性と、それを治療する小技を紹介します。 |
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下半身の冷え
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若い女性に多いのがこのタイプです。男性に比べて、女性に冷え性が多いのは、体の構造からくるようです。心臓から出た大動脈は、おなかのあたりで腹大動脈となり、そこから左右に分かれて、足への血液を運ぶ大腿動脈になります。
女性に下半身の冷え性が多いのは、動脈の分岐点に女性特有の臓器があって、そこで動脈を圧迫し、下半身への血流が悪くなるからだそうです。
女性の骨盤の中は、子宮や卵巣などがあって、男性より、複雑に入り組んでいます。「お尻がこる」のも、女性特有です。
腹部や臀部へのお灸、足のハリや灸が効果的です。冷えのポイントを探しましょう。 |
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「気」の流れる道筋を「経絡」といいます。気は、1日に50回全身を巡ると言われています。気が血液の流れを促すのです。
頭を使うと、気が頭に集まります。それがつづくと、頭のほうで気が滞ります。実して(腐敗して)、熱を持ち、邪気になって固まります。重積した気は、下におりなくなり、下半身の気が不足して、虚してしまいます。ますます気の巡りが悪くなります。
頭頚部の邪気を抜き、首や肩のこりを取ります。身体のあちこちの、詰まっているところを掃除しながら、手足のほうに、気を引っぱります。
肉体的疲労に比べて、精神的疲労がまさったときになりやすいです。
自律神経失調症では、上実下虚の状態になりやすく、手のひらや、足の裏に冷や汗をかいたりします。鍼灸治療は、どうやったらバランスが取れるのかを、身体に教えてあげることができます。 |
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風邪は冷えから
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風邪を引くときに、頭から、首筋から、背中から、などなど、人はさまざまです。冷えやすい場所が異なれば、風邪が入り込む場所も異なります。
英語でも、風邪は、catch cold、スペイン語では、resfriadoで、どちらも「冷える」ことと関連づけられています。
風邪を引きそうになったらすぐに、冷えているところを集中的に暖めることで、風邪を予防できます。カマヤミニなどの間接灸が、簡単で効果的です。
東洋医学的には、大椎という首の後ろにあるツボから、風邪(ふうじゃ)が入り込むと言われています。多壮灸もいいのですが、もっと手軽に、大椎に金粒を貼っても風邪の予防ができます。 |
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全身冷え性
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ときどき、全身冷え性の患者さんがやってきます。極度の寒がりで、けっこう暖かい日でも、「暖房を入れて」と頼まれます。そういう人は、風邪も引きやすいようです。
リウマチ体質の人は、結合織が肥厚して、血管を圧迫して、血液の流れが悪くなっています。結合織をほぐす必要があります。
原因はいろいろなのですが、全身冷え性の人は、体質改善が必要です。寒さに強くなって、風邪を引きにくくなるまで、何年もかかります。週1か隔週の治療で、3年とか5年とか、かかる場合もあります。 |
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腕が冷える
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中年女性には、「腕が冷える」という人がたくさんいます。夏でも長袖が手放せないそうです。腕を使いすぎて、こっていることも原因のひとつです。
私自身も、鍼灸治療を受けるようになってから、足の冷え性はすぐに治ったのですが、腕の冷えには本当に苦労しました。
足の場合は、靴下をはくとか、湯たんぽを入れるとか、まだ対策ができます。でも、腕は、使うためには出しておかなければなりません。朝、目が覚めると、布団から出て、カチンカチンに冷えている、ということもよくありました。
腕が冷えると、腕から風邪を引くようになります。腕のこりをほぐしましょう。「冷えたな」と思ったら、腕にカマヤミニをたくさんします。すぐなら、風邪を引かずにすみます。 |
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具合が悪い部分が冷える
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「雨の日は古傷がうずく」とか、「気圧の下がるときは、前の日から痛む」とか、聞いたことがあるでしょう。具合が悪いところをきちんと治さずに、慢性化すると、気血の流れが悪くなるのです。
どんな病気でも、患部は冷えます。筋肉が硬くなって縮み、患部を圧迫します。炎症による浸出液、よどんだ古い血も滞っています。
不具合のあるところは、ゴミだらけ。様々の理由で、狭まっているのです。そのせいで、血液の流れが悪くなります。
私もテニス肘をこじらせたときは、雨や台風を予言できるようになりました。低気圧の2日前から肘が痛み始め、気圧が下がりきると、その状態に慣れるのか、痛みが落ち着きます。完治するまでは、治療の手を決してゆるめないつもりです。 |
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