症例20・胃炎&胃潰瘍
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<自分で玉を貼って治療できる>
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考えすぎると胃を破る
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漢方の五行では、「考え(智)すぎると胃を破る」と言われています。怒りすぎると肝を破り、恐れすぎると腎を破り、喜びすぎると心を破り、悲しみすぎると肺を破る、という風に感情と臓器が関連づけられています。
悪い人にいじめられても胃は痛くなりません。「こいつはバカ」だから、とか、「やな奴」だから、という風に納得でき、自分から切り離すことができます。いやな奴が一人で、仲間同士で連帯できれば、自分一人で悩まずにすむのでけっこう大丈夫です。
相手が「いい人」だったり、自分が孤立していたりすると、「何故、自分だけいじめられるのだろう?」とか、「自分に非があるのだろうか?」とか、「どうしたらいいのだろう?」とか、あれこれ思い悩むので、考えすぎて胃を破り、潰瘍などができてしまうのです。 |
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胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎
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空腹時に痛みが起こり、食べると痛みが治まるのが特徴です。胃の中が空っぽだと、胃液が胃壁を自己消化してしまうのです。食後、2時間たって痛みが起こるのが胃潰瘍、3時間後に痛むと十二指腸潰瘍を疑います。
食道と胃の間の括約筋(LES)が緩むと、胃液が食道に逆流しやすくなり、食道の粘膜がやられます。お酒を飲むと、ちりちりと食道に沿って痛みが起こったりします。
食後すぐに痛みが起こる場合は、逆流性食道炎が疑われます。LES圧が低下する原因には酒、タバコ、コーヒーなどがあるそうです。拒食症などで嘔吐を繰り返しても、食道潰瘍の原因になります。
動いているときには何ともないけれど、ゆっくり休んで横になっているときに腰がじんじん痛くなるのは内臓性腰痛かもしれません。胃潰瘍が原因で、腰痛が起こることもあります。 |
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腹部の治療の留意点
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西洋医学の薬は、胃液が出すぎるときと、胃液の出が悪くて胃がもたれるときには別の薬を処方します。鍼灸は体にとって一番いいことを体自身に選択させるのです。だから内関・公孫も、胃潰瘍にも胃のもたれにもどちらにも効果があるのです。
鍼灸では経絡のバランスを整えながら全身治療をします。「押して痛いところ」がツボです。指でグイッと押して、胃のあたりや背中には特にたくさんお灸をします。カマヤミニをたくさんするのも効果的です。それでも取れないときは、透熱灸をすることもあります。
痛みのひどい場合は、お腹の押して痛いところにハリを深く刺して腹膜に直接当てます。グリグリと少し痛いのですが、終わった後は痛みが消えて楽になります。
腹部の病のほとんどは冷えが原因で、温めることが治療になりますが、要注意は「筋性防御」です。
お腹を押せない、ちょっと触っただけで激しい痛みが出る場合は、盲腸などが疑われるので、炎症を抑えるために逆に冷やさなければなりません。すぐに病院に行きましょう。 |
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胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎には奇経治療が効果的です。
奇経とは、十二正経とは異なる気の流れの道筋です。正経が電車の路線とすると、それを別ルートで繋ぐバス路線のようなものです。4種類の奇経があり、2つずつセットで使います。
内関(心包経)と公孫(脾経)は上腹部の病に、列缺(肺経)と照海(腎経)は下腹部の病に、外関(三焦経)と臨泣(胆経)は側脇部の病に、後谿(心経)と申脈(膀胱経)は後部の病に効果があります。
胃の痛みや吐き気、車酔いの予防のときには、内関・公孫に銀が効くようです。肩こりには外関・臨泣に銀、後頭部痛には後谿・申脈に銀、下痢には列缺・照海に銀など、私自身が試したり、患者さんが試したりしたことです。
グァテマラでひどい下痢をしたとき、内関・公孫と列缺・照海の両方に銀粒を貼りつづけていました。どっちか取ると、やっぱり調子が悪いのです。何とか持ちこたえられたのは、鍼灸と銀粒のおかげと思います。
みなさんも自分で試してみてください。 |
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金粒・銀粒の使い方
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片手と片足をセットにして、一度に2つずつ使い、1週間ぐらいしたら反対側に貼るのがいいと思います。かぶれる、という理由もありますが、同じ場所にずーっと同じ刺激を受けていると、身体が慣れてしまい効き目が薄れるからです。
奇経治療が効果的なのは、ポイントを絞るからです。欲張って他の場所にもいろいろ貼ったりすると、効果が相殺されてしまいます。せいぜい一ヶ所か二ヶ所。あえて歪みを作り出すことで、体全体がひとつのポイントに注目するように仕向けるのです。
患者さんにも、自分で内関・公孫に銀粒を貼ってもらうようにしています。毎日患者さんに付いて回るわけにはいかないので、自分でやるのが一番です。お腹に金粒を貼ることもあります。理由はわからないのですが経験から、遠隔治療には銀、局所治療には金を基本にしています。 |
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リカちゃんのホッペに貼り付けてみました。
小さな粒が大きな効果をもたらします。
ツボのダイナミズムです。 |
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内関・公孫の即効性
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バリに一緒に行った友達は、出発の数週間前から胃の不調で悩んでいました。せっかく旅行に行くのに美味しいものが食べられないといやですよね。
内関・公孫に銀粒を貼ってあげると、「あっ、痛くない」。お風呂に入って、いきなり痛くなったので腕を見たら玉が取れていたそうで、また貼ったら、「あっ、痛くなくなった!」という調子でした。
バリでは、私が風邪を引いて<→風邪・2>、自分に金粒を張っていたので、玉が取れた彼女に間違えて金粒を貼りました。「ね、痛み、取れたでしょ?」と言う私に、彼女は「う~ん・・・?でも、そのうち取れるよね?」と不思議そうな顔。
1時間後に間違えたことに気づき、銀に貼り変えた途端、「うん、治った!」とニッコリ。
そのぐらい、即効性があるのです。
結局彼女は、だんなと大喧嘩をしたら、胃のあたりの塊が取れて、完治はその瞬間だったそうです。
内関(ナイカン) |
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前腕の内側中央。手首から指3本が目安だが、その上下、押して効きそうなところがツボ。 |
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公孫(コウソン) |
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足底内側、エッジの真ん中へん。ぐーっと押して痛いところがツボ。 |
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< セルフケア・ナビの「内関&公孫の使い方」をご覧ください> |
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胃潰瘍のおかげで開業できた私
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病院で働いていたとき、とても「いい人」の上司ともめて、生まれてはじめて胃の痛みを経験しました。潰瘍になると、常に胃が痛いだけではなく、何かいやなことや心配事がある度に胃がきりきりと痛み出すのです。そういう時、内関・公孫に銀粒を貼ると、その瞬間に痛みが半減しました。
治療しながらも、ストレスをストレスにならないようにする現実的努力が必要です。私はストレスの起こる場所からなるべく早く退散する準備をすることを選びました。辞めた後も、完全に潰瘍の症状起こらなくなるまでは1年ぐらいかかったでしょうか。自分が組織に向かないことをはっきり気づかせてもらったおかげで開業できたのだから、かえってよかったのかもしれません。
終わり良ければすべて良し、です。治療法も発見できたし。 |
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