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 症例30・後縦靭帯骨化症・改2
 <発症から治療開始までの期間が命運を分けた>
コンピューターと骨化症
前述のSさんの症例を最初に更新したのは、2005年9月10日です。そのあと来院したKさん(当時61歳、男性)は、職業がSさんと同じ。建設関係で、一日中パソコンに向かって、キャドなど使う仕事です。50代前半までは、スポーツ万能で、肩こりなど感じたことはなかったそうです。
Sさんとの共通項は、「パソコンを使う仕事」です。不思議に、見た目も似ています。2人とも、初診のときに、自分の病気に関しての資料を持ってきてくれ、後縦靭帯骨化症について、ものすごく詳しく調べていました。
本人いわく、プライベートでは大らかで大ざっぱ、でも、仕事に関しては、真面目にとことんやり抜く、という共通項もあります。(私から見ると、ふたりとも、けっこう細やかでやさしい人です)
「西洋人には肩こりがない」と言われていたのですが、近年、西欧諸国でも鍼灸が必要とされ出したのは、コンピューター社会になったからなのかもしれません。
骨化症の原因は?
骨化症の原因は不明です。西洋医学的な考察についてはよくわかりませんが、私なりにあれこれ仮説を立ててみました。
鍼灸によって血行を改善し、筋肉が柔らかくなると、運動障害が改善されるという臨床経験から、血行不良と筋肉や靭帯の骨化には、関連性があるように思えます。
筋肉の中を通っている血管が、凝りによって圧迫され、血行が悪くなり、老廃物の処理がうまく行かなくなり、ますます凝り固まってしまい、そのせいで、もっと血行が悪くなるという悪循環が起こります。
長年の筋肉のこりを、放っておいていいことはなさそうです。筋肉が石灰化するのはよくあることのようです。ひどい首・肩こりを放っておいて、頚椎症を発症したり、肩の筋肉にカルシウムの塊ができた人もいます。劇症タイプの五十肩は、肩関節の一部が石灰化して起こります。腱鞘炎で前腕にカルシウムの塊ができた人もいました。
 FAQ11筋肉の石灰化の原因は?
手術で、進行は止まったけれど・・・
二人目の症例のKさんは、初診のときは、全身が硬直し、木彫りの人形のようでした。まわりの人たちにも、「ロボットのような動き」と言われていたそうです。
「首が回せない」「首と肩が重い」「左半身にしびれがあって、感覚が鈍い」「足が上がらない」「階段をスムーズに下りられない」などの症状がありました。
Kさんの最初の症状は、左肩甲骨の内側の激痛でした。焼け火箸を突っ込まれたような痛みで、ひどいときには肘まであったそうです。近所の整形外科でレントゲンを撮って、後縦靭帯骨化症と診断されました。首の牽引などしていましたが、半年後にまた激痛。治るという気配もないまま通っていたのですが、ある日、右足が上がらなくなりました。しびれは両足にあったそうです。
あわてて大学病院に行ったら、「即、手術」と言われて、驚いたそうです。術後、右半身のしびれは良くなったのですが、左半身のしびれと知覚鈍磨はそのまま続いたそうです。
手術をして、症状の進行はストップしたようなのですが、体がだんだん重くなり、動くのに不自由になって、苦しくなっていきました。
鍼灸治療も受けたことがあるのですが、まったく効果が感じられずに、やめてしまったそうです。
ロボットのような身体に血が通い始める
発症が6年前ですし、手術(頚椎椎弓形成術)をしてから3年もたっていました。ホームページを見て来院したのですが、私に治せるのか、半信半疑でした。
「私、ピカピカ治ったなんて、書いてませんでしたよね?」と聞いたら、Kさんは「大丈夫ですよ。治るとは思っていません。今より少しでも楽になればいいと思ってるんです」と言ってくれました。
初回は、奥さんにも来てもらって、お灸の仕方を覚えてもらい、自宅で毎日お灸をしてもらいました。
はじめの2ヶ月間は週2回、その後は週1回の治療を行いました。
初回の治療では、ほとんど効果が感じられなかったのですが、2回目に来たときは、少し、皮膚の血色がよくなって、人間らしくなっていました。治療が進むごとに、ちょっとづつ、首の可動域が広がっていきました。
まず、首の可動域が広がりはじめる
Kさんは、3回目の治療のあと、帰り道で「久しぶりに肩が下がった」感じで気分がよかったそうですが、1時間ほどで元に戻っってしまいました。
どんな病気にもいえるのですが、重症の人の場合、治療をはじめたばかりの頃は、いったん良くなっても、数時間で元に戻ることがあります。だんだん長持ちするようになって、それから定着していきます。
少しづつ少しづつ、首の動きがよくなっていきました。娘さんが、壁に分度器の表を作って、毎日のように首の可動域を測ってくれたそうです。
治療開始から1ヶ月目には、立ったままで天井が見えるようになりました。首を後ろに傾けてもらった瞬間に、「あっ、天井が見える!この景色は久しぶりだなあ!」と嬉しそうでした。
テーマを決めて順番に治療
首が動かせるようになると、話をするときに、顔が動くようになります。ロボットのような動きだったのが、自然な話し方になります。それが筋肉の血行をよくし、ますます動きがよくなる、という相乗効果を生みます。
「手術で首にチタン合金を埋め込んであるので、首はこれ以上、後ろに曲がらないと思いますよ」とKさんに言われたと思っていたのですが、実は、首を壊されるのが心配だったのだそうです。鍼灸は物理的圧力をかけない治療法ですが、首の治療は難しいので、かなりの注意力が必要です。
首・肩こりが一段落したあとは、重点目標を変えていきました。
あれもこれもと、ただ漠然と治療をするより、的を絞ったほうが効果があがります。一番に治したいところを「ひいき」にしたほうが、結果的に早く治るのです。もちろん、必ず経絡治療をしますし、元凶の首の治療も忘れず、全身のほとんどにハリと灸を施すのですが。
足が前に出るようになる
頭部の動きがよくなると、今度は胴体の硬直が気になりだしました。
4ヶ月目からは、体幹の動きをよくすることをテーマにしました。振り向いたりの動作をスムーズにするためです。大胸筋、肋間筋、広背筋など、体幹の筋肉にあれこれお灸をしました。
6ヶ月目には、今度は右足の上がりが悪いことが気になりだしました。
悪い方は左足なのですが、歩くとき、左足は上がるけど、右足が上がりにくいそうなのです。右の股関節~大腿~下腿の治療中心にしたのですが、もしかしたら左のお尻の安定が悪いために、右足を上げにくい可能性もあります。腰と左臀部、左股関節にも重点をおきました。
11ヶ月目には、右足がスムーズに上がるようになりました。
手術の傷跡のまわりは手ごわい
Kさんの治療は2年目に突入しました。ちょうど寒くなっていく季節だったので、なんどもぶり返しがありました。
この頃から、左の肩甲骨のまわりの筋肉のコリが気になりだしました。こぶしを入れたように重くてつらいそうです。肩井・膏肓・天宗など、肩甲骨の周囲(だいたい6・7ヶ所)に透熱灸を繰り返しました。
27ヶ月目からは、首の後屈に的を絞りました。首に念入りにハリを打ったあと、透熱灸です。
3年目のある日、「お腹に自分でお灸をしたら?」と話したら、「自分のへそが見られないんですよ」と言うので、現在は、首の前傾に挑戦しています。椅子に坐った状態で、首を前傾してもらい、引っかかっているところに透熱灸をしています。やはり、手術の傷跡の皮膚の引きつれと、カチカチになった筋肉は手ごわいようです。
鍼と磁石で脊柱の矯正
鍼灸で脊柱の矯正をします。脊柱は小さな椎骨が集合して「柱」を構成しています。硬直している筋肉をほぐし、ゆるんでいる筋肉に力をつけてあげれば、脊柱はだんだん正しい形に変化していきます。
うつ伏せでは、脊柱の中央のひずみの強いポイントを選び、数か所に鍼を深く刺します。両サイドの筋肉の硬直部位にもずらりと鍼を打ちます。

最後は磁石です。脊柱の一番ひずんでいるポイントを探し、その両側、一方にS極、他方にN極を貼ります。背骨の矯正効果が持続します。
私はFT(フィンガー・テスト)でつぼを取るのですが、どういう風に磁石を貼るかは、患者さん自身の感覚です。Kさんの場合は、「首が動かしやすい」が目安です。
そのときに筋肉の動きを観察するのですが、3ヶ月ぐらいで肩甲骨の上の筋肉まで、2年ぐらいで肩甲骨の下の筋肉まで、動くようになりました。

*脊柱の矯正は→「腰痛・2」を、磁石の貼り方は→「ぎっくり腰」を参照してください。
義足のようだった左足が使えるように
Kさんは、1990年に左のアキレス腱を切ったことがあるそうです。その後の1999年に後縦靭帯骨化症を発症しました。
いつの間にか、左足のアキレス腱が固まってしまい、足首が曲げられなくなっていました。左のふくらはぎにパルスをかける治療はずっと続けて、ふくらはぎの筋肉が太くなってきたので、Kさんに欲がでました。足首を動かせるようになりたいと、Kさんが希望しました。
26ヶ月目からは、足首にもハリを刺してパルスをかけるようにしました。Kさんも、ストレッチや筋トレをしたり、足首に注意を払って歩くなどの努力をつづけました。
28ヶ月目には、「左ふくらはぎの筋肉が使えるようになった」とのこと。現在では足首も動かせるようになって、力強く歩くことができます。
初診時には、棒のように細くて、義足のようにしか使えなかった左足ですが、今では筋肉がつき、見た目はほとんど右足と変わりません。
次なる目標は、ゴルフができるようになることです。左足に重心をかけてふんばらなければならないので、無理とあきらめていたのですが、ちょっと希望が見えてきました。
100%完治は望めなかったけど
現在、Kさんは、段差のあるところや階段の昇り降りが難しいという、共同運動障害が残っていますが、平らなところでは、かなりの早足で歩くことができます。寒い日は、筋肉が固まったり、首や背中が重くなったり、足が前に出ない、右足を上げにくい、などの症状がでたりします。
週に1回の鍼灸で、まだ進化は現在進行形。最近では、寒さにもだいぶ強くなりました。レントゲン上では変化は見られないのですが、症状はかなり改善され、難病認定もとかれてしまいました。
Sさんは、近県の建設現場で単身赴任です。キャドなども難なく使え、仕事にはまったく支障がないそうです。急に寒くなったりすると、手がむくんだり、お札を数えるなどの細かい動作がしにくくなったり、尿の切れが悪くなったりすることもありますが、鍼灸治療ですぐに改善されます。その後、仕事もプライベートもほぼ「完治」と言える状態になりました。
Kさんの場合は、発症から治療開始までが長かったので、このまま不具合が残ってしいそうです。だいたい、週に1回のペースで症状は安定しています。
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Updated: 2008/4/15