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 症例37・便秘
 <習慣性便秘の改善法>
たいていの便秘は鍼灸治療で改善される
便秘が主訴で鍼灸治療を受けに来る人は、ほとんどいません。肩こり腰痛など、ほかの治療のついで、という感じになります。
ここで取り上げているのは、私の治療記録のなかの習慣性の便秘です。ほかの疾患が原因になっている場合は含まれていません。
過敏性大腸症候群で、便秘と下痢をくり返す場合は、自律神経失調症の治療をします。
すべての登場人物が、野菜などの繊維質の多い食べ物や、糠漬けやヨーグルトなどの乳酸菌が豊富な食品を取るなどの工夫をしているということが前提です。
10代や20代の便秘の治療は簡単でした。特別な治療をしなくても、1・2回の治療で治ってしまいます。
50代を過ぎての長年の便秘症は手ごわい
開業当時から治療に来ていた患者さんの中で、便秘に悩んでいた女性が二人いました。1993年ごろのことです。
Mさん(当時50歳)と、Tさん(当時51歳)は、二人とも、さまざまな愁訴があって、毎週、あれこれいろんなところを治療していました。
ついでに、という感じで便秘の治療も心がけていたのですが、何十年も続いているという便秘は、かなり頑固でした。そのうち私もあきらめて、「便秘はどう?」と聞かなくなりました。
二人には、毎回、頭のお灸をしていました。耳の聞こえが悪いことに悩んでいたTさんには、通天など、耳に関係するつぼに。Mさんは、痔があったので、百会のお灸です。
便秘が主訴で来院した人
1997年に来院したYさん(当時30歳の女性)は、高校生のころから、便秘に悩んでいました。ずっと薬を使っていたのですが、とうとう薬が効かなくなったそうです。
MさんとTさんに手こずっていたので、電話での問い合わせのとき、「10年以上もつづいた頑固な便秘症は、治すのに1年ぐらいかかるかもしれませんよ」と答えたのですが、逆に、それが信用されての来院でした。
Yさんは便秘のほか、下半身の冷えにも悩まされていました。週に1回、10回をめどに治療を開始しました。
すると、想像に反して、1回の治療で便秘が少し良くなりはじめ、7回目の治療のあと、驚くほどよくなって、毎日、決まった時間に出るようになりました。10回目には冷え性もよくなっていました。
百会のお灸も効果あり?
Yさんには、特別なことはしていません。いつもの経絡治療、お腹のハリと灸、(便秘の定番の)大腸兪の治療ぐらいです。首・肩・背中がガチガチだったのをほぐして、冷え性の治療もしました。
Yさんの来院をきっかけに、久しぶりに便秘のことを聞いてみたら、Mさんは「2日に1回だけど、きちんと出ているわよ」との答え。Tさんの便秘は、相変わらず一進一退でした。4年ぐらいたったある日のことです。
二人の違いは、頭のお灸のつぼの違いです。百会は、有名な痔の特効穴です。もしかして、頭のてっぺんにある百会のつぼは、直腸のあたりを刺激する働きがあって、痔だけではなく便秘にも効果があるのかもしれないと思いました。
それからは、便秘の人には、百会のお灸も試すことにしています。
便意を無視して便秘症になった人
Rさんはそれまで便秘とは無縁の人でした。39歳のある日、英語で自伝を書きはじめ、夢中になってのめりこんでしまいました。パソコンに向かったまま、時間を忘れ、飲まず食わずで夜中まで、という毎日が続きました。途中で便意を感じても、「もうちょっと」と後回しにしました。
50ページ以上の英文のレポートを仕上げたあと、自分が便秘症になってしまったことに気がつきました。便意をもようしても、それを無視することをくり返した結果です。
それ以来、便通のことが忘れられなくなりました。「この前は、いつ出たのかな?」「便秘してから今日で○日かな?」「次はいつ便意がくるだろう?」「トイレでゆっくりできるのは何時ごろかな?」という状態です。
頭の中には、常に、あの形がこびりつき、それを出すタイミングを見計らうという、便通との二人三脚、という苦悩の日々がはじまりました。
便秘症がまた便秘を生む
便秘症じゃないときの排便は簡単です。便意があって、トイレに駆け込み、スルリと出す。大も小もあまり変わらぬ時間ですむので、いつでも気軽にトイレタイムが可能です。
ところが、便秘症になるとそうはいきません。便意があっても、うまく排便に結びつかないのです。腹圧が上手にかけられないので、スムーズに排便ができません。毎日出さないと、便も硬くなります。
いったん始めたら、いつ終わるのか見当もつかないので、たっぷり時間があるときにしか、トイレに座れなくなります。「今は時間がないから」と後回しにします。そうすると、ますます便が硬くなって、ますます出にくくなるという悪循環が生まれるのです。
この悪循環を、断ち切らなくてはなりません。
便通の習慣をつける
ある患者さんが聞いた話です。そのお医者さんが言うには、口から肛門までずっと、食べた物がつながっているそうなんです。あたらしく口から入れると、肛門から押し出される、というパターンなのだそうです。下剤を使って腸の中をカラにすると、口から直腸まで食べた物がつながるまで、何日かかかってしまう。それでまた便秘になってしまうそうです。
薬を使っていると、だんだん効きが悪くなってきます。Yさんの場合も、薬を使うと、おなかが痛くなってしまったそうです。
便秘症を治すためには、毎日、決まった時間に排便をする習慣をつけるのが大切です。朝食後の排便が一番おすすめです。一晩かけてカラになった胃腸に、食べ物を送りこむことで、消化器が刺激され、便意が起こりやすいからです。
朝食後が難しければ、昼食後や夕食後に排便タイムをつくるなど、自分に合ったパターンを決めるといいでしょう。
便意~排便システムが居眠りしてる?
直腸に便がたまると、「便意」として脳に伝わり、排便するように腸に命令がいきます。腹圧をかけて、便を排泄しなくてはならないのですが、便秘症の人は、直腸に思うように力がかけられません。
腹筋までは力がかけられても、そこから直腸までのどこかで、どうやら、神経が居眠りしてしまっているようです。直腸の筋肉の反応もにぶくなってしまい、筋肉をうまく収縮させることができません。
「気持ちは排便をしたい、でも、ふんばっても力がかけられない」のは、脳~神経~筋肉というシステムが、うまく機能しなくなったからだと思います。
便意君が、しょっちゅう無視されているうちにバカバカしくなってしまったように、括約筋に働きかける運動神経にも、命令されて収縮するはずの筋肉にも、サボリ癖がついてしまったようです。
直腸~脳~神経~括約筋ルートの再活性化
便秘症の人の便通パターンは、イソップ物語の狼少年のエピソードのようです。「狼が来たぞ!」と何度もウソをついていたら、本当に狼が来たときに、村人に無視されて、とうとう狼に食べられちゃった、というお話です。
便通システムが再活性化されるのは、けっこう長い道のりです。さんざんウソをついてきたのですから、信じてもらえるようになるには、時間がかかるのです。
居眠りしている神経を、目覚めさせるためには、努力が必要です。いつのまにか筋力も落ちてしまっているので、筋トレも必要です。
若い人の便秘症が治りが早いのは、「筋力」がしっかりしている、というのが理由のひとつでしょう。だから、簡単な刺激で、再活性するのだと思います。
再活性化への取り組み
習慣 排便タイムを習慣づけよう。
知覚神経(直腸~脳) 「便意」のサインが出たら、すぐにトイレにかけこもう。神経にやりがいを感じさせよう。
運動神経(脳~直腸) 神経の命令を筋肉に伝える。便意→ふんばる、便意→ふんばる、を毎日繰り返す。
筋肉(直腸) がんばってふんばることで、筋力を取り戻す。あきらめないことが重要。
筋肉(括約筋) 肛門括約筋を鍛える。直腸に続く筋肉を出口のほうから筋トレしよう。
便通のことを忘れられた日
Rさんは、50歳になって、本格的に便秘症を治す決心をしました。鍼灸や百会のお灸に頼るだけではなく、昔のようにスルスルと、何の苦もなく排便できる状態をめざしたのです。
朝に排便タイムを決め、便意と結びつけるために、朝食をしっかり取り、すかさずトイレへ。寝坊などで、1回、便意を逃すと、そのまま次の日も便秘になってしまうのですが、3日目には何とか出てくれます。
排便の習慣がきちんとつくと、朝以外は、便通のことを忘れていられるようになります。頭にこびりついた「あの形」とさよならできて、本当に幸せ、とのことです。
まだ、腹圧をきちんとかけられる日と、かけられない日とのバラつきがあるそうなので、今は、筋力を取り戻すことをがんばっています。
追記:Rさんの便秘は完治。いつでも好きなタイミングでの排便が可能になりました
最近の症例
全員が、別の目的で治療に来た人です。ざっと、並べてみました。
14歳の女の子は、最初の治療のあと、便秘症が治りました。たまに出ないときは、トイレの途中で、お母さんにお腹にカマヤミニをしてもらったそうです。おへそを中心に十文字、4つのツボを使うのですが、お灸をするとすぐに出るそうです。
43歳の女性は、腸が長いそうで、1週間に1回出ればいいほう、という状態でした。お腹も硬くふくれていたので、ちょっとハードな治療をしましたが、今では、3日に1回は出るそうです。彼女としては「快挙」だそうで、お腹も少しすっきりしてきました。
92歳の女性は、ぎっくり腰の治療に来ていたのですが、ある日、「最近、便秘が治って、2日に1回は出るようになったのよ」との報告してくれました。
高齢者の場合は、筋力が低下しているので、便秘じゃない人を探すほうが難しいくらいです。便秘の話もしなかったので、百会のお灸もしていません。元気によく動く人だったから、簡単な治療で治ったのでしょう。
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Updated: 2008/8/26