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 症例65・魚の目(ウオノメ)
 <若い人は多壮灸で治し、老人は削ってしのぐ>
魚の目には多壮灸
鍼灸学校で魚の目は多壮灸で治療すると教わりました。
皮膚の奥に小さな傷(アカギレみたいな?)ができます。傷を守ろうとして皮膚が増殖し、ますます奥に埋もれてしまいます。足裏の角質が盛り上がって硬くなると、足をつくたびに傷を圧迫して痛みが出るそうです。
お灸で血流を促して傷を治します。奥深くにある傷に熱が透るまで、灰を払って多壮灸をしなくてはなりません。

魚の目のために鍼灸院を訪れる患者さんはいないので、「ついでに」ということになります。
はじめて治療したのは、めまいが主訴で来院した20歳の大学生です。配送の仕事で歩き回らなくてはならないのに、足をつくと痛みが出るのだそうです。
彼はベッドの上で両手で自分の足を押さえながら、熱さに耐えていました。1回の多壮灸で、歩くときの痛みが消えたと報告してくれました。

いつもの透熱灸は灰の上にお灸を重ねます。小さなもぐさからはじめ、灰の大きさに合わせてちょっとずつもぐさを大きくしていきます。深部に熱が到達するまでは気持ちがいいし、めったに痕も残りません。
魚の目にする多壮灸は、灰を払って行うので、とてもとても熱いのです。
軍隊で外反母趾、偏平足で魚の目に
60代後半からメンテナンスに来ていた患者さんが、70代の半ばに「魚の目が痛くて足をつけない」と言うので、足の裏の多壮灸を追加しました。
大正14年生まれで、1年間満州にいたそうです。軍隊では足に合わせて靴を支給してくれるのではなく、「靴に合わせろ」と言われたそうです。足に合わない靴を履いて何時間も行軍させられたために外反母趾になったそうです。

外反母趾のせいで足が変形して偏平足になり、母指球ではなくで、中央に体重がかかります。同じ部位に圧がかかるので、角質が盛り上がって、まるでコルクを貼りつけたようでした。
灰を払って多壮灸をしましたが、いつまでたっても治る気配がありません。「男は我慢」の世代です。奥さんがこっそり、「熱いからイヤだ」と言ったと教えてくれました。
ゾーリンゲンの角質削りを使ってみたそうです。ピーラーのように簡単に削ることができるそうで、傷への圧が激減して、普通に歩けるようになったのです。
老人は手足の末端まで気血が巡りにくい
2008年に五十肩で来院したNさんが、70代半ばに「魚の目が痛くて足をつけない」と訴えました。彼女の魚の目も角質が盛り上がって、コルクのようになっていました。(主訴は腰痛です)
灰を払って多壮灸をしたのですが、もぐさを大きくしても、やってもやっても熱さを感じてくれないのです。上述の患者さんの話をして、ゾーリンゲンで角質を削ることをすすめました。
「削ってきたから」と、薄くなった皮膚に多壮灸を試みたこともあります。すぐに熱さを感じてくれるのですが、「完治」とはいえない状況でした。でもコルクが薄くなると、歩くときの痛みがなくなるそうです。

60代後半になって、指が変形したり、爪が変色したりする人を多く見かけます。年を取るにつれて、気血が手足の末端まで届きにくくなるのでしょう。
感覚神経が鈍感になって、知覚鈍麻や感覚異常が起こるようになります。痛覚神経も鈍感になって、深部の小さな傷の存在に気づきません。傷を守るために角質が増殖していきます。角質が盛り上がって大きなコルクのようになってから、やっと足をつくときの痛みを感じるようになるのでしょう。
末端の毛細血管がつぶれて細部への血流が悪くなります。お灸で温めても、傷を治すほどの血流を促すことができないようなのです。
でも魚の目のコルクを削ると、痛みがなく歩けます。お年寄りは「削ってしのぐしかない」らしいのです。
やっぱり、若い人は多壮灸ですぐに治る
2019年2月から背骨の矯正をしている脊柱側弯症のEさんは現在も隔週で治療をしています。中学生からお友達だった腰痛とは無縁になって、たまに肩こりを感じる程度を維持しています。身体を回さずに歩けるようになって、体幹が安定し、年々姿勢が良くなっているのです。
2023年2月に魚の目ができました。皮膚の盛り上がりも薄く、言われなければ分からない程度でした。お灸の熱も数回で透ります。2回の治療であっさり治ってくれました。

70代への多壮灸で効果が出なかったので、治療師としては「ホントに効くのかな?」と半信半疑で多壮灸をしたのでした。
筋肉の硬直ならば、治療効果がその場でわかります。「ここが変」と治療して、「治った」という手ごたえを感じることができます。魚の目への多壮灸は、その場で「治った」とはいきません。次の来院時に結果をきくまで分からないので、治療師としては心もとないのです。
でも、若い人にはたしかに効果があるのです。
老人は削ってしのぐのが一番
2015年に来院したKさん(当時74歳、女性)は、10年前に右を痛めたあと、8年前に股関節も痛みはじめ、3年前から杖をついて歩くようになったそうです。すでに膝関節も足関節もいちじるしく変形していました。
来院時には後ろ向きにしか進めませんでした。家事一切をひとりでこなす働き者で、しかも「せっかち」なのです。スススッと後に移動したほうが速いからと、がんばっているうちに前に歩けなくなってしまったのです。
「何かにつかまりながら、ゆっくりと足を前に出して動くように」とアドバイスして、だんだん前に歩けるようになりました。外では両手に杖を持ち、散歩に買い物、病院通いなどをこなしているそうです。
だいたい月に1回強、娘さんと一緒に来院しています。歪んだ身体で動き回るので、あちこちの変形は年々進行していますが、多くは望めません。お年寄りは動いて動いて動きまくって、「使える身体を維持する」ことが大事なのです。

来院歴10年の今年(2024年)5月に、病院で魚の目があると言われ、スピール膏を貼ってくれたそうです。
絆創膏が剥がれないようにと、足にテーピングを巻かれたために、歩きにくいそうなのです。足先までパンパンにむくんでいました。

変形した足で歩き回るために、地面に当たるでっぱりに魚の目ができたのです。靴に当たるととくに痛いそうです。
外反母趾の裏側にも薄くて広い魚の目ができていました。そっちは痛くないそうですが、中央のへこみを指でグイっと押すと痛みが出ます。

多壮灸を試してみましたが、やはり治りそうな気配はありません。
大昔に自分のいぼにスピール膏を貼ってみたことがあるのですが、いぼがグチャグチャになっただけで、ちっとも効果がありませんでした。Kさんの角質のコルクもグチャグチャになっていました。これでは削ることはできません。
歪んだ身体でやっと歩いている83歳なのです。「歩く」こと、「動く」ことをしなくなったら、あっという間に寝たきりになってしまいます。
テーピングを外し、ついでにスピール膏も外し、コルクを乾かして硬くして、ゾーリンゲンの角質削りを買うように勧めました。

今年は猛暑で外出を控えたために、筋力が落ちてしまいました。年寄りに安静はご法度なのです。私は心配でジリジリです。
8月にゾーリンゲンを買ったけど、娘さんは怖くて使えないそうです。本人は身体が曲げられないので、自分では魚の目を見ることすらできません。
11月の来院時に持参してもらい、私が初挑戦しました。自分の腕に滑らせてみたら何のひっかりもありませんが、ピーラーみたいに角質が削れていきました。簡単で安全なことが実証されました。
削ったあとは「足をついても痛くない」と喜んでくれました。痛覚神経が鈍っているので、その程度でも痛みを感じずに歩けるのです。
老人の魚の目は「削ってしのぐ」のが一番なのです。
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Updated: 2024/12/18