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同行の先輩は、大のサッカーファンである。一緒にスペインに行くことになったとき、「サッカーの試合を見に行く?」と聞いたら、「だって、あなた、興味ないんだから、悪いわよ」と遠慮。
サッカーには興味がないけど、いろんな体験をするのは面白い。
事前にネットで調べたら、ちょうどバルセロナの最後の日が日曜日で、その夜に、リーガ・エスパニョーラの第5節、バルサVSマジョルカの試合があることが分った。
私たちって、本当にラッキーだった。
前もって、スタジアムにチケットを買いに行く余裕はないから、ぶっつけで行くしかないね、と言っていたのだけど・・・
ランブラス通りに着いてすぐに、先輩が、「まず、あの店で、ユニフォームを買うわ」と、リセウ駅のすぐそばのお店に入った。
店員はユニフォームを見せて、『これはオリジナル』と何度も主張する。
先輩は、英語もスペイン語もできないのに、いきなり、手まねで『ダウン』、『ダウン』と、値引きを要求。けっこう安く手に入れた。
一見奥様風なのだけど、上野の生まれ。「アメ横のそばで育ったのだから、一応、値切らなくちゃね」と、にっこり。
私も、ジャパン・オープンにやってくるナダルの応援のために、スペイン国旗を買おうと思っていた。ちょうどいいお店に行き当たった!
最初、部屋に飾れるように小さいのにしようと思ったのだけど、待てよ・・・?、席はかなり上のほうと聞いていたので、それじゃあ、ナダルから見えないじゃん。
国旗も、『オリジナル、オリジナル』と何度もアピール。あんまり言われると、かえって怪しい?
(先輩のおかげで私の国旗も負けてもらえ、無事に、ナダルの決勝戦でひらひらさせることができたよ)
「明日、バルサの試合を見に行くって言ってちょうだい」と先輩に言われ、店員に話すと、『チケットは買ったのか?』とノリノリの反応。
『まだ』と答えると、『すぐそこにチケット売り場がある』と、もう1人の店員もやってきて、ふたりがかりで、一生懸命に道を教えてくれた。
『ガイドブックあるでしょ?ガイドブックを出しなさい』と言う。
ガイドブックの地図に印をつけてくれたのだけど、それでも足りないと思ったらしく、『紙、紙、紙はどこだ?』と机の下を探しまわり、地図まで描いてくれた。
歩いて1分、駅の反対側、教会の路地を入ったところに、チケット売り場があって、けっこういい席が手に入った。
ね、私たちって、本当にラッキーでしょ!
次の日、サグラダ・ファミリアを外から見たあと、カタルーニャ音楽堂に戻って、中を見学した。
たっぷり1時間、なんと説明はすべて英語だった。
ガウディのライバルといわれた建築家、ドメネク・イ・モンタネールが建てたものだ。たったの3年で完成したらしい。
一切の照明を使わず、美しいステンドグラスごしに差し込む自然の光で、昼間だけコンサートをやったんだって。
そのあと、ガイドブックを見ながらたらたら歩いていたら、すぐ近くに、クワトロ・ガッツがあった。ピカソが通っていたカフェ&レストランだよ。中には、ピカソの絵や写真がたくさん飾られていた。 |
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ここでは、ピーマン炒め(素揚げ?)とビール。入り口で『食事ですか?』と聞かれ、『ちょっと食事とビール』と答えたら、カフェに案内された。
奥がレストランで、みんなが美味しそうに食べているのを見て、ちょっと後悔した。ピーマン、すごい美味しかったけどね。
そこから、また、たらたら歩いて、王の広間でひと休みしたあと、予定のお店、サンタ・カタリーナ市場のレストランで、お寿司と海老料理を食べた。
日曜日なので市場はお休み。先輩は残念がってた。
そのあと、「ちょっと待っててね」と、先輩はトイレでバルサのユニフォームに着替えた。地下鉄に乗って、一路、カンプ・ノウ・スタジアムへまっしぐら。
近づくにつれ、ユニフォーム姿の人の割合が増えていく。 |
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「けっこう、すいてるね」と思ったらとんでもない。
ぞくぞくと人が増えて、98000人収容のスタジアムが、満員になった。
全館禁煙とのことだったが、みんな、シートでもどこでも、普通にタバコを吸っていた。
スペイン人はおおらかだなあ。 |
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さすが、本場のサッカーはすごい。
ひとつひとつのプレーに、スタジアム全体が、生き物のようにどよめく。
ひそかにマジョルカを応援していた私。
というのは、スペインに行く前に予習をしようと、リーガの試合を録画しておいたんだけど、あまりの忙しさに、マジョルカVSレアルの試合をみるのがやっとで、バルサの試合が見れなかったんだよね。
ここでマジョルカを応援したら殺されかねないと、私はシーンと小さくなっていた。
となりでは、先輩が、スペイン人よりもすごい激しさでバルサの応援をしていた。 |
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この前、ケーブルテレビで、リーガ・エスパニョーラの試合を見たときに、「あれ、ここはカンプ・ノウ?」
見覚えのある風景とともに、あのときの感動が蘇ってきた。日本のために黙祷をしてくれた。
いまや、世界は狭いなあ。行っておいてよかった~。 |
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試合が終わったあとは、もう真っ暗。人波のあとをついて、地下鉄に乗った。先輩は、「みんなが私を見るのよね」と不安がってる。
バルサのユニフォームを着ているのだから、みんなに見られて当然。注目されていれば、スリも近寄りにくいと思う。
バルセロネータまで行って、そこでまた晩ご飯。先輩の胃は疲れを知らない。
カウンターで食べていたら、若い男の子が、先輩の肩をポンポン、と叩いた。
「この人がなんか言ってる」と言うので、『何?』と聞くと、両手の人差し指を立てて、”¿uno y uno?” と言っている。
『えっ?』と戸惑う私に、相手は外国人と悟った彼は、手を振って行ってしまった。
「1,1って、何だろう???」と言う私に、先輩が、「あ~!」とでかい声。
「試合の結果よ! 1対1かと聞かれたんだわ!
惜しかった~。感動を分かち合えたのに~~」と残念がる。
昨日も、思い出して、まだ残念がってたよ。(笑) |
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