症例47・ねんざ(足首) 4 第三腓骨筋
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<ねんざと、第三腓骨筋の肉離れを併発>
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すごい音とともに足首をひねる
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これは私の症例です。2014年11月のことでした。
テニスのゲーム中、頭を越えるボールを追いかけて、後ろに下がりながら身を反転させた瞬間、左足首をひねりました。バキ、ポキ、バキ、パキとすごい音がしました。パートナーにも聞こえたそうです。
どうせいつもの古傷の捻挫だろうと思いました。靭帯が伸びているので、ちょっとしたことで「パキパキパキ」と、簡単に捻挫をしてしまうのです。
ゲームが始まったばかりでした。自分としても続けたかったし、私が抜けると3人になってしまいます。
テーピングをして、そのまま続行、3セットもやってしまいました。
だんだん痛みが強まっていき、左足が踏ん張れないので、右足だけで走りました。帰る頃には、激しい痛みで、歩くのも困難になりました。 |
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なかなか腫れが引かない
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家に帰ってすぐに治療をしました。外果を中心に足首全体がかなり腫れています。ゲームを抜ければ、ここまで腫れずにすんだとは思いますが、治る日数は同じです。
熱も持っていたので、糸状灸からはじめましたが、思うように腫れが引いてくれません。夜中には、足がまったくつけないほどの痛みになりました。
朝には足がつけるようになったので、治療をしたあと、テーピングをして、ビッコを引きながら仕事に出かけました。
前回の魔物のような捻挫のときだって、翌朝には普通に歩けました。それよりも軽いねんざだったはずです。
患部は胆経なのですが、肺経の列缺がいちばん楽に歩けたので、反対側治療として、そこに銀粒を貼りました。
仕事のあと、経絡治療も含めて、患部に徹底的に治療をしました。
<テーピングの例は「ねんざ・1」で紹介しています> |
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3日目:肉離れを併発していたと気づく
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3日目の朝、内出血がおりてきました。まだ患部に熱を持っていました。ありえないことです。患部の腫れもひどいものでした。
まず、熱を引かせる治療をしなければならないな・・・と思いながらも、時間がなかったので、患部に深いハリと透熱灸をしました。やはり、痛みが増悪、ビッコを引き引き出かけました。
足をかばいながら仕事をしていたら、夕方には痛みが消えました。熱を持っているときに、患部を直撃するのはリスクがありますが、気血を動かせば、数時間後には沈静化することは経験上わかっています。
不思議に思って、本を調べ、第三腓骨筋の肉離れと判明。発症時のすごい音は、ねんざのP(°)と、肉離れのB(¨)が混ざった音だったのです。
反対側の銀粒は、歩くのには肺経がいいようだけど、患部の痛みには心経が効くことを発見しました。状況に応じて使い分けました。 |
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8日目:肉離れは快方に向かいはじめた
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第三腓骨筋は、外果の横上方から、外果の前を通り、外果と小指の間につく筋肉です。
<起始=腓骨の下方と隣接する筋間中膜、停止=第5中足骨底の背足面>
足首の外反(外側に動かす)と、背屈(爪先を持ち上げる)働きをします。
足指伸筋の第5の腱とも言われているそうです。
肉離れは、筋繊維の断裂で、その筋はしばらく使用不能になります。脳が「動け」と命令しても、ピクリとも動かない、それが診断の決め手でした。 |
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1週間たって、やっと第三腓骨筋を動かせるようになりました。
肉離れは、「1週間で小走り、2週間で練習復帰、3週間で試合復帰」が、うちの法則です。
もう普通に歩けてもいい段階ですが、ねんざをかばえば、肉離れが悪化、肉離れをかばえば、ねんざが悪化で、やっかいなことになりました。」 |
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10日目:長距離を歩いて治す
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朝は透熱灸のあと、テーピングして仕事。夜はハリを打ってからテーピングして眠る。そんなパターンを毎日つづけました。
K先生にも治療に来てもらい、自分でも全身治療もしました。部分治療だけのときより、効果は抜群で、しばらくは足を痛めたことも忘れるぐらいスタスタ歩けます。
ずっとびっこを引いていると、あらゆる筋肉と関節が、それに見合う形でシフトされていきます。身体がどんどん歪んでいきます。
鍼灸治療で歪みを取るのですが、それだけでは完治しません。全身の筋肉、靭帯を、「正しく」使うことで、自然に矯正ができます。
パルコと西友に買い物に行き、かなりの長距離を歩きました。ずっとビッコを引いていると、いつの間にか、普通に歩くやり方を忘れてしまいます。
痛みをがまんして、「正しく」歩く努力をしているうちに、患部の痛みが減少していきました。 |
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15日目:テニスの練習会に参加
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2週間たったので、そろそろテニスを再開する時期です。怖くてたまらなかったのだけど、患者さんに「動け」とうるさく言っている手前、やらないわけにはいきません。サークルの練習会に参加しました。
バイクを停めた場所からコートまで、けっこうな距離があります。脳に障害がインプットされていたので、どうしても軽くビッコを引いてしまいます。
はじめは恐る恐るだったのですが、走れることがわかりました。テニスのあとは、かえって良くなり、帰り道はビッコを引かずに歩けました。
家に帰って治療をしたのですが、カマヤミニだけでOKでした。 |
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19日目:ダブルスのゲームに参加
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練習のあと、ゲームにも入れてもらいました。コートの中を、ほぼ普通に走ることができましたが、頭を越されるロブだけは追えませんでした。
身体を右に反転させ、うしろに下がるときには、左足で地面を蹴らなければなりません。第三腓骨筋は、地面を蹴るときに使う筋肉だったのです。ボールを見上げた瞬間に、「無理」と身体がフリーズし、ピクリとも動けませんでした。
サーブはちょっとフォームを変更しました。左足に右足を引き寄せて、前方に軽くジャンプするその瞬間に、左足の第三腓骨筋に、全体重がかかることに気づいたからです。
筋肉を使えない理由は2つあります。「使える」のに、怖くて使えない場合。「使ってはいけない」から、自然に身体が患部をかばう場合。前者なら「使って」治す、後者なら「大事にする」と、見極めが大切です。
22日目、テニスのゲームでは完全復活、思い通りに動くことができました。本来なら、先に治るはずの軽いねんざが、肉離れをかばったために、長引いてしまいました。そのあとも数週間は、ねんざの予防のために、テニスのときはテーピングをしました。 |
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<外果の後を通る短腓骨筋は、第三腓骨筋とは逆に、足関節の底屈(爪先を伸ばす)を行います。詳細は3ページ目「(ねんざ(足首)3 短腓骨筋」を参照してください> |
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