症例55・ガングリオン
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<足の裏にできると、痛みで歩けなくなることも>
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ガングリオンの特徴は
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手や足の皮膚の下にコロッとした塊ができることがあります。皮膚には変化がなく、関節の近くにあって、クッションのように弾力があって、指で押しても移動しない塊は、ガングリオンの可能性があります。
内部にあるのはゼリー状の液体です。出来立ては柔らかく弾力がありますが、時間がたつとだんだん濃縮されて硬くなっていきます。
関節を包んでいる関節包の一部が伸びて、固定された風船( )のように、動かずにとどまっているのです。
つい最近まで、ガングリオンが主訴で来る患者さんはいなかったので、いつもついでに治療をしてあげました。自分でお灸して治すことができます。
ガングリオンにはじめて遭遇したのは2000年4月でした。皮膚癌なども熱に弱いとのことなので、変わったものを見つけると、とりあえずお灸を試してみることにしています。 |
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→「足をつくと痛い」に関係するページ |
症例7:モートン病 |
足底痛+痺れ、ぼってりして赤味がある |
症例51:かかとの痛み |
踵をつくと痛い原因が下腿の硬直 or 骨棘のとき |
*症例55:ガングリオン |
足をつくと痛い原因が風船(関節包に液体)のとき |
症例62:足底の痛み |
マラソンランナーの足底痛 |
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出来立ては消えやすいけど、再発もあり
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1995年から、あちこち治療をしている大工さんです。「テニス肘」と「ぎっくり肋間筋」のページに登場しました。
2000年4月、脈診のときに右手首に、コロッとした塊を発見しました。病院で「ガングリオン」と言われたそうです。
鍼や糸状灸などいろいろ試して、 の上のカマヤミニが一番簡単で効果もあることが分かりました。 |
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お灸をするとすぐに消えるのですが、しばらくするとまた出現します。ハードワークとの関連はあきらかでした。
ガングリオンの「芽」のようなものが残っていて、手首を使いすぎるとまた再発してしまうんだろうな・・・と想像しました。 |
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古いガングリオンは時間がかかる
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2人目は保母さんです。「寝違え」と「ひざ痛」のページに登場しました。
彼女は右手首に1個あっただけでなく、足首の外果や内果のまわりに、コロコロと小さな塊がいくつもありました。
太っていましたし、保母さんはハードワークです。歩いたり、走ったり、しゃがんだりと、足首にそうとうな負荷がかかっていたようです。 |
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彼女のガングリオンは古いので、出たり消えたりの急激な変化は見られませんでしたが、カマヤミニをやっているうちにいつの間にか消えてしまいました。数年たって「あれ、ガングリオンがなくなってるね!」と気づいたのでした。 |
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突然足の裏に塊が!はじめは痛みもあった
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私の症例です。10年ぐらい前のことでした。テニスクラブに入りたてでポツンとしていた私に、練習会を主催しているおじさんが声をかけてくれました。朝9時からなので、ゴールデンウィークに早起きをして参加させてもらいました。いいところを見せようとものすごく張り切って、動いて動いて動きまくりました。
夜になって、あれ?足をつくと痛い!と驚きました。ころりとした、小さなまあるいクッションができていて、びっこを引くぐらいの痛さでした。
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とりあえず、 に鍼を打ってみたら、ジンジンして気持ちがよく、しばらく置鍼したあとカマヤミニでお灸をしました。
だんだん痛みが薄れていって、数日で足をつけられるようになり、2ヶ月ぐらいで消失しました。
『何だったんだろう?』という疑問がずっと残っていました。 |
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再発して、ガングリオンだと気づいた
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1年後、また同じところに が出現しました。今回は痛みは出ませんでしたが、鞠に乗るような感じでとても不快です。
再発してはじめて、それがガングリオンであることに気がつきました。
患者さんに話したら、「私も昔小指の付け根にガングリオンが出来たことがあるのよ。会社の人が『ガングリオンは、金槌で叩いて治す』と教えてくれたんだけど、自分ではそんな怖いことはできないでしょ。そしたらある日、ドアにガツンと小指をぶつけて、そしたら治ったのよ」と教えてくれました。「かかとの痛み」に登場した人です。
整骨院で治療してもらった人の話も聞きました。ぎゅうぎゅう押して、中の貯留物をぜんぶ押し出してくれたそうです。
どっちも自分にはできないな・・・やっぱり、お灸をするしかない。鍼は面倒なので思いついたのが「裏表灸」でした。 |
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足裏は、表と裏を同時にお灸すると効果的
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足の裏の皮膚は分厚いので、なかなか深部まで熱が届きません。表と裏と、同時にカマヤミニで火をつけてみたらどうかと思いつきました。
指でコロリとする塊を探し、(位置的にはちょっとずれるのですが)反対側の指の付け根にカマヤミニをのせました。
バツグンの効果があって、1週間ほどで が消失し、それ以来10年たっても再発はありませんでした。 |
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4ヶ月間、歩けないほどの痛みだった
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2019年12月、久しぶりに現れたEさん(当時43歳、女性)の症例です。以下は彼女が事前にくれたメールから引用したものです。
「9月から右足裏の指の付け根に痛みがあって、モートン病(恐らく)らしいです。また人差し指を前に倒すと第1~3関節がとても痛くて困っています。
最初近くの鍼灸院に行っててその時はマシになるのですが、すぐに痛くなってしまいました。次に仕方なく整形外科に行ったら、とりあえず骨に異常はなく適当な処置をされ、こりゃやっぱダメだなと思い。。。
先月から整骨院に通ってます。とても丁寧でイイ整骨院で、アーチが崩れてるのを防いだり正しい歩き方の指導を受けて、足の裏の痛みは多少マシになってました。でも、人差し指を前に倒すと相変わらず痛くて痛くて困ってます。
今週は、足指のトレーニングをしてたら親指を痛めたらしく、歩くたびに痛くて変な歩き方になってしまい、また足裏の痛みがぶり返し、踏んだり蹴ったりな感じです」
という内容でした。 |
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ガングリオンが元凶だった
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Eさんの話を聞いて、私のガングリオンとそっくりと思いました。昔モートン病になった患者さんがいましたが、表現のニュアンスがぜんぜん違います。Eさんは足のアーチもしっかりありましたし、神経痛のような症状もありません。
足の裏から人差し指につながる中足骨を探ったら、大きくはありませんでしたが、ゴロッと硬い塊を発見しました。グイッと押すと、痛い!と悲鳴をあげました。
「これはガングリオンだよ」と、私の経験を話しました。
うつ伏せになって、最初の一発は足裏です。手の平と足の裏は知覚神経が密集しているので、切皮だけでもけっこう痛いのです。
Eさんは怖がりだし、1本ですむので、予告なしで、ガングリオンに直接鍼を刺しました。
「イタッ!」と驚かれましたが、「この1本で終わりだよ」と言うと、安心したようです。痛みがかなり和らいだので、透熱灸をしました。
そのあと彼女に教えながら、裏と表、同時にカマヤミニでお灸をしたら、ガングリオンの痛みはほとんどなくなりました。 |
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人差し指には糸状灸で
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まだ人差指の痛みが残っています。Eさんの送ってくれた写真があります。手の指で足の人差指を深く曲げようとすると、激しい痛みが出るそうです。
こういう痛みには糸状灸が効果があります。細くひねった小さな糸状灸を、人差指の中足骨から指先まで、ずらりと10個以上並べて、寸止めでお灸をしました。すると、中指にも痛みが出たので、そこにも指先までずらりと糸状灸をやりました。
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人差指を深く曲げると痛い |
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ガングリオンの位置 |
● |
点灸の位置 |
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「あ、ぜんぜん痛くない!」とEさんは感動して、涙ぐみました。4ヶ月間も、歩くのもままならなかったので、そうとうつらかったのでしょう。 |
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凧揚げでまた別のが出来た
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大喜びで帰ったEさんですが、2週間後にまた現れました。はじめのガングリオンは自分で裏表灸をやって数日で治ったそうです。でも、お正月に子どもたちと凧揚げをして走り回ったら、また足が痛くなったとのことでした。
足指の付け根に、プニュッと柔らかいガングリオンを触ることができました。出来立てのほやほやです。部位が違うので再発ではありません。
同じように を鍼で直撃し、裏表にカマヤミニをしたらほとんど消えてしまいました。
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<前回> |
中足肢節関節 |
人差指 |
中足骨寄り |
ゴロッと硬い |
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<今回> |
中足肢節関節 |
三指と四指の間 |
指寄り |
プニュッと柔らかい |
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Eさんは超細身の知的な女性で運動は一切やりません。凧揚げで走ったぐらいでガングリオンができるのは、いかに運動不足かの証拠ですね。
昨日メールで聞いたら、痛くなったときだけお灸をしているそうです。数日するとまた痛くなってまたお灸と、それをくり返しているとのことでした。「痛くないときでも毎日お灸をしないと縮まらないよ」と伝えたところです。 |
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長年のガングリオンを自分でカマヤミニ
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2019年4月、テニス愛好家のTさん(当時62歳、女性)が、ふくらはぎの痛みで来院しました。脈診のとき右手首に、直径2センチ以上もある大きなガングリオンがあるのを見つけました。ずいぶん前からあるそうです。
「自分でカマヤミニで治せるよ」と教えてあげました。半年ぐらいはあまり変化を感じなかったのですが、それでもがんばって毎日お灸をつづけたそうです。
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この間、4ヶ月ぶりに来院したのですが、あんなに大きかったガングリオンが、とても小さくなっていました。
古くなると濃縮されて硬くなってしまうので、消失まではもう少しかかりそうです。 |
Tさんは背が高くてスマッシュが得意だそうです。手首を酷使したときに、突然ガングリオンが出来て、そこにちょっとずつ液体が流れ込んで大きくなっていったのでしょう。
テニスをつづけていても、お灸をすれば小さくなっていくという見本ですね。 |
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激しい運動=過負荷が引き金になる
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実は最近、私にもまた(!)足の裏にガングリオンが出来たのです。
胸骨を痛めて6週間もテニスを休みました。再開して1週間後、ハードな壁打ちを1時間以上やったあと、左の足裏にコロリとまあるいクッションが出現しました。
前に出来たときと同じパターンです。
筋力が足りないところに、いきなり激しい運動をして、急激に過負荷がかかったことが原因のようです。<→私のブログ、2020/3/1>
鍼と裏表灸ですぐに消えて、やれやれと安心していたんですけど・・・2週間たって、また があることに気がつきました。10年前と同じあたりです。
崩れた関節包の一部がそのまま残っていたのかもしれません。
<今回> |
<10年前> |
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中足肢節関節 |
中足骨寄り |
床を踏むと感じる |
スプリットステップのせい? |
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中足肢節関節 |
指寄り |
爪先立ちで感じる |
走ると出来る? |
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「膝に水が溜まる」という話を聞きますが、水が溜まるのは関節包の中です。大きな関節の関節包はたぶん厚くて丈夫なのでしょう。
手足の小さな関節をつつんでいる関節包はたぶん薄く、それでガングリオンは手足に出来てしまうのだと思います。 |
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