症例34・バレエ;膝痛→お尻から太ももに波及
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<ひざ痛から、足を引きずるようになった人>
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坐骨神経痛のような歩き方
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Tさん(当時54歳、女性)は、2006年6月に来院しました。Tさんは、フルタイムの仕事をしながら、趣味はクラシック・バレエという、素敵な女性です。それなのに、びっこをひきひき、足を引きずって歩いていました。
1年ぐらい前から、右足に力が入らなくなったそうです。右のお尻から太もものうしろ側に痛みがあって、毎日、痛い場所が変る、ということでした。
あちこち病院に行ったそうですが、原因不明で、どこへ行っても治らなかったそうです。
坐骨神経痛の人に特有の歩き方でしたので、バレエの話なんか聞きながら、自信たっぷりに治療をはじめました。 |
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まず、粗ごりを取る
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最初は、ベッドに仰向けになっての経絡治療。カチンカチンになっていた両腿の筋肉と、痛みのある右ひざを中心に、簡単にハリと灸をしました。
次にうつ伏せになってもらい、坐骨神経痛の治療を、と思ったのですが、ハリを打つべきツボが、あまりないのです。
「あれ、おかしいな?」と思いながら、一応、ざっとの治療を終わって、Mさんに立ってもらいました。症状がどう変化したのかを確認し、追加の治療をするためです。
長い間、具合の悪い状態がつづくと、そこをかばって、あちこちの筋肉が緊張するので、どこがメインか分かりにくくなります。
とりあえず、全体のこり(私は「粗ごり」と呼んでます)を取ってから、根深く残っているポイントを探すというのが、私のやり方です。 |
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つま先立ちができない
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Tさんは、壁に手をついて、爪先立ちをしようとしました。バレエの美しいポーズです。でも、右のかかとが全く上がりません。ピクリともしないのです。
よく話を聞いてみたら、最初に右のひざが痛くなって、それから右の太ももに力が入らなくなって、それから右のお尻から腿のうしろにかけての痛みがはじまり、歩くのが困難になった、ということが判明しました。
私も一緒になって、かかとを上げるのに、どういう筋肉の使い方をするのか、試してみました。(Tさんとは似ても似つかぬ、かっこわるいポーズでした)
爪先立ちになるためには、ひざの辺り、大腿四頭筋の筋力が、相当必要でした。 |
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「ちょっと」でも、それが重要
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もういちどTさんにベッドに仰向けになってもらい、右ひざと腿の筋肉に、灸点紙をしいての透熱灸を、たっぷりとしました。
お灸のあと、もう一度、つま先立ちになってもらったら、今度は、少しだけですが、かかとを上げることができました。
そこがメイン・ポイントだったのです。
膝のまわりの筋肉に、キネシオでテーピングをしました。すると、またもう少し、かかとが上げられるようになりました。
次は、子午流注による反対側療法です。Tさんの場合は、左腕の少海(心経)に銀粒を貼ると、またもう少し、かかとの上がり方がよくなりました。
治療してすぐに、「ちょっとでも、かかとが上げられた」のは、いい兆候です。神経ではなく、筋肉のトラブルだということ。この先、どんどん良くなるであろう、という予測ができます。 |
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自分でやってもらったこと
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鍼灸治療で痛みを取ったあとは、筋力をつけることが必要です。痛みで使えなくなっていた間に、すっかり筋力が落ちてしまっているからです。
Tさんの場合、最初の治療効果は、2・3日しかつづきませんでした。弱った筋肉で無理をするので、また痛みが出るし、筋疲労も激しいからです。
自分で、大腿四頭筋の筋トレをするようにアドバイスしました。
キネシオは、伸縮性のあるテープのことです。筋肉に沿って伸ばして貼ります。筋肉は縮むことで動くので、テープの縮もうとする働きが、筋肉の収縮を助けます。筋肉を使いながら治すので、筋力がつきます。動くことで、血液の巡りもよくなるので、治りが早くなります。
「やりながら治す」のが私のやり方です。休むと筋力が落ちるので、治ったつもりになっても、そのあとが大変です。筋力をつけながら治すことで、復帰がスムーズにできます。
Tさんにも貼り方を覚えてもらって、レッスンの前に、自分で貼ってもらうようにしました。 |
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発表会に間に合った
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6月から治療をはじめたTさんは、9月に発表会を控えていました。3ヶ月しかありません。治療は週に1回。Tさんは必死で筋トレをしました。
1ヵ月後には、右足でつま先立ちができるようになり、1ヵ月半後には、トゥ・シューズで立てるようになり、2ヵ月後には、右足1本でトゥで立てるようになりました。
ふくらはぎが痛いとか、足首が痛いとか、あちこちに時々痛みが出たのですが、そのつど治療をしました。
3ヵ月後の発表会では、みなさんと一緒に舞台で踊れたそうです。
Tさんの場合、来院までの1年間、足を引きずってでも、なんとかバレエに食らいついて、レッスンを続けていたことが、早い治癒につながったのだと思います。
現在、Tさんは58歳になりましたが、今もバレエをつづけています。毎年9月には発表会があるのですが、すべてクリアーしています。
鍼灸でのメンテナンスがなければ、アクティブな人生は難しいね、と2人で話しています。 |
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