症例13・坐骨神経痛・改1
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<電話の声でどのぐらいで治るか予言できる>
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重症はうつになるほどの激しい痛み
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坐骨神経痛を訴える患者さんからの、初めての問い合わせの電話の声を聞いただけで、重症かどうかがだいたい分かってしまいます。
電話の声がけっこう明るく、気軽に問い合わせてきた人は、たいてい2・3回の治療で治ってしまいます。
重症の坐骨神経痛の人は、あまりの痛みを長い間抱えているので、うつ状態になっていて、地獄の底から電話がきたのかと思うほど声が暗く、重く沈んでいます。病院で何度調べてもらっても「骨には異常がない」以外のことがわからず、原因不明の痛みにつらい思いをしていた人もいました。
あっさり治ってしまう人がほとんどなのですが、重症例もいくつかありました。頚椎症で来院して、メンテナンスの途中で坐骨神経痛を発症した患者さんも数人いました。
いろいろな症例を、順に更新していこうと思っています。 |
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まぎらわしいものを除外して・・・
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坐骨神経痛で来院した人は数え切れないほどいましたが、本物ではなかった患者さんも少なくありませんでした。医者が病名を乱発してるんじゃないか?と疑ってしまったほどでした。
痛みの範囲が坐骨神経痛と似ていて、痺れのないものは、たいてい筋肉の障害です。間違えやすい症例を別のページでまとめましたので、参照してください。
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坐骨神経痛の見分け方
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脳細胞から出た神経線維が、脊髄の中を走行します。(ここまでは中枢神経)
腰椎の4番~仙骨3番(L1~S3)=○で分岐し、ここから末梢神経の坐骨神経と呼ばれます。
知覚神経と運動神経が束になっていて、ペン軸ほどの太さで、長さが1m以上もあります。全身の末梢神経の中で最大の神経だそうです。
坐骨神経も末端にいくにつれて分岐していきます。それらの神経の支配領域(■)に痛みや痺れが起こったら、坐骨神経痛を疑います。
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■坐骨神経の出発点 |
■症状がおこる部位 |
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患者さんは、腰、お尻、太ももの横とうしろ、ひざの裏、ふくらはぎ、すね、足などの、全部ないし一部の痛みと痺れを訴えます。
その、痛みとしびれの経路の、どの部分で神経が障害されたかを推測します。
末梢神経は、脊髄から出るときに左右に分かれますので、末梢性障害は必ず左右のどちらか片側にだけ症状が出ます。
鍼灸で劇的に治るのは、末梢性障害の場合です。両側にでた場合は、中枢性障害など、他の病気の可能性を疑います。
たまたま両側にでた、という場合もあるのですが、そういうときでも、完全に左右対称ではなく、微妙に痛みやしびれの程度や範囲が異なります。 |
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症状の出ている場所と障害の場所が違う
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基本的には、痛みとしびれが「片側」で、坐骨神経の経路に沿ってのみ起こっている場合に、坐骨神経痛を疑います。坐骨神経痛の治療で難しいのは、どこで障害が発生しているかを見極めることです。
神経の経路を京王線にたとえると、新宿から出て、調布で橋本方面と八王子方面に枝分かれします。北野でまた、八王子方面と高尾山方面に枝分かれします。
調布~高幡不動の間で、痛みや痺れが起こっているとしても、神経が傷害された場所は、調布から新宿までの間、もしくは山手線、という可能性があるのです。
鍼灸では、実際に坐骨神経の症状(痛みとしびれ)のでている場所と、障害の原因となっている場所の、両方を治療します。
手足の末端には「要穴」という重要なツボがたくさんあります。経絡の流れに沿って末端を治療しますが、それが体幹部の治癒にもつながる、というのが東洋医学的アプローチです。 |
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患者さんの説明を聞いて、痛みがそれほどでもなさそう・・・と感じる場合は、たいてい梨状筋症候群です。ほとんどが1回で、長くても数回の治療で治ります。
坐骨神経がお尻の中を抜けるとき、梨状筋の下を通ります。梨状筋が硬くなっていると、神経が絞扼(圧迫、刺激)され、でん部や下肢に痺れや痛みなどが起こるのです。深いところにある筋ですが、治療は簡単です。
全身治療の他、お尻の梨状筋に直接ハリを刺します。深い深いところにあるので、長い中国鍼を使って筋肉をほぐします。灸頭鍼をする場合もあります。
あとは、痛みの出ている坐骨神経に沿って簡単な鍼灸をすれば、すぐに症状が消えることが多いようです。
症状が軽い場合は、梨状筋に直接ハリを刺入しなくても、梨状筋をめがけて少し深めに打つだけでも効果があります。お灸を併用することもあります。
お尻の筋肉は複雑で、いくつもの筋肉が深いところにあるので、触診が難しいのですが、きちんとツボを取れば大丈夫です。
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股関節の外旋&(股関節屈曲時)外転&関節頭の保持 |
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もし、根性坐骨神経痛だったら?
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脊髄の近くで、神経根を絞扼(圧迫、刺激)されておこる場合を、根性(こんせい)坐骨神経痛といいます。簡単に治らないこともあるのですが、根性でも症状が軽減される可能性はあります。
椎間板ヘルニアの場合は、一時的には痛みが軽減されるのですが、3時間ぐらいで痛みが復活します。ヘルニアが消失するまでは痛みが継続します。
鍼灸の場合、治療をしてみての治り具合から、単純な坐骨神経痛なのか、それとも、他の病気の可能性もあるのかを推測することができます。
まず、鍼灸治療を受けてみて、てこずるようなら病院に行ってみる、という患者さんもけっこういます。 |
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坐骨神経痛はツボ(反応点)探しが命
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他の病気でも、もちろんそうなのですが、坐骨神経痛は、丁寧に患部を調べ、きちんと取穴をすることが、いい治療の必須条件です。
痛みや痺れの出ている部位がどこなのかを、患者さんに聞きながら、触診で反応点を探していきます。反応点=ツボ=治療点です。
痛みの出ている坐骨神経の周囲の筋肉は硬くなっています。反応の出ている筋肉と神経の走行が一致しています。治療をしていると、まるで「痛んだ神経がまわりに酸のような物質を放出しているのではないか?」という感じがするほどです。筋肉が柔らかくなるのと、痛みが和らぐのが、同時進行で起こるからです。
初心者の頃は、痛みに苦しむ患者さんに「ここは?」「ここは?」とたずねながら、そこら中を押しまくりました。ツボを取るだけで何十分もかかったものです。
(でも、10年過ぎたら・・・あれあれ?・・・「ここでしょ」「ここでしょ」と、ツボが見えるようになり、自分で自分に驚きました)
とにかく、坐骨神経痛の治療は「ツボ探しが命」です。きちんと触診してくれる鍼灸師を見つけましょう。 |
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Updated: 2007/6/5 <初版 2003/1/24> |
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